畠山理仁『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』を読みました。これは面白い!


開高健ノンフィクション賞受賞のこの本。話題になってました。気になってましたが、なかなか読む機会がなく今になって読みました。

ジャーナリスト、畠山理仁さんのお名前は、震災直後くらいからちょくちょく目にすることがありました。 で、この本も面白そう、と思ったのだけど、なかなか読めなかったのは、実は怖かったからです。

実は私の中学時代のリアルな友人が、この本には出て来ます。私がリアルで知っている彼女は、勉強がとても出来て、クラスでかならず1番か2番の成績を収める物凄い秀才でした。漫画が好きで,読むのも自分で描くのも得意でした。おちょぼ口で早口で、他人が聞いていようとなかろうとマイペースに話すところは確かに子供のころからありました。が、勉強はめっちゃ出来たんですよ。彼女は私たちの学区で一番頭のいい進学校に進み、私は2番目くらいの学校に進んだので、中学の時は比較的仲良かったけど、高校時代以降は、音信が途絶えていたんです。とはいえ、父がたまたま彼女の高校の先生をしていたこともあって、高校時代の彼女の様子はなんとなく父から聞いてはいました。

彼女の政見放送は、あまりのひどさに直視できなかった。そして、この本の中に彼女は出て来るんですが… 畠山さんの優しい視線というか、なんというか、そのおかげで、それほどひどいことにはなっていないのがせめてもの救いでした。いや、この本を読む前までは、こんな風に当選するはずもない選挙に無謀に立候補して「なんて馬鹿なことを」「あんなに優等生だったのにどうしてあんなになっちゃたんだろう」「ご両親はどう思っているんだろう」と正直かなり頭にきていたのも事実です。でも畠山さんが書いた彼女の姿を見て、中学生当時の彼女の、リアルな姿が蘇ってきました。選挙の2日前になってようやく刷り上がったポスター。そのたった1枚貼るのに、20分以上もかかったという描写に、中学時代の彼女の姿が浮かびます。しかし何度も言うようですが、当時の彼女は、勉強すごく出来たんですよ。だから、この本を読むまでは、大事な選挙で、ふざけんじゃないとバッサリ自分の中から彼女のことを切り捨てるつもりでいたのだけれど、ちょっと彼女の話も聞いてみたくなりました。いや、それでもおそらくリアルに会えば「こんなんで当選できるわけがない。ちょっとは冷静になれ」としか言えないかもしれませんが。

ま、そんな個人的な事は、さておき… この本は、そんないわゆる泡沫候補と呼ばれている人たちのリアルな姿を描いたノンフィクションです。特にマック赤坂には、相当な年月をかけて取材をし、ページをさいています。とっても読みやすい本でスイスイ読めちゃいました。「いや、でもこれどう考えても無謀でしょ」「ありえないでしょ、こんなの」「頭がおかしいとしか思えない」と思っていた私も、これだけの候補者の、これだけの情報を見せられると、妙な感慨が自分の中に立ち上がって来るのを感じたのも事実です。そして思ったわけです。私たちはもしかしたら、選挙の一番面白い部分を楽しまずにここまで来てしまっているのではないか、と。

あとこの本読んでて、そういえば…と思いだしたのは家入さんのインターネッ党。あれなんか、ホントによかったのに、結局今や自然消滅。こういうのが、なんか…本当にがっかりさせられるんだよな、と思いました。例えばこのインターネッ党が、現在上手く機能していれば、社会は相当違うものになっていたかもしれないのに。家入さんと彼を応援してた堀江さんの言い訳が聞きたい…よな。というか、他のアナログな…泡沫候補の人たちの執念深さみたいなものと、彼らの頭の良さがうまくマッチしていけば、ホントに世の中を変えれたかもしれないのに。なんかベンチャーな人たちの、悪い意味での「頭の良さ」を見せつけられた感がある。こんな馬鹿なことは辞めよう、という頭のいい人たちの… それを思うと、他の泡沫候補が面白く楽しく思えてくる。

それにしても、この本を読んでいると、こうやって候補者をたて、投票をし、自分たちの代表を選ぶという民主主義っていったいなんだろう、と思ったりするわけです。外国と比べても異様な供託金の存在、そして多大な税金を使って行なわれる選挙。これは非常に面白い本です。是非読むことをお薦めいたします。

そして、畠山さんのこちらのインタビューも必読。これからも頑張ってください!
それにしても、畠山さんというと、東電での会見を夢中になってネットで見ていた、あの頃を思い出す。日隅さんの賞も取ったんだね…
そして新潟ではまた保守の勝利… なんか日本人は大好きだよね、自民党がね…