天然記念物をプロモーションしていることについて

自分はTV見ない見ないと普段言ってるけど、結構見てるかも。TV自体は持ってないので、いつもiMacのワンセグで、画面の隅っこに小さい画面を出してるだけなんだが。

で、普段はテレ朝とNHKにしかチャンネルをあわせない(死語)私ですが、昨晩のうちに通訳の染やんが出るという情報をつかんだので、久々に朝早く起きて4km走って、戻ってきて日テレにチャンネルをあわせてみた。この番組を見るのは…プランクトンがやっているエミ・マイヤーさんが出て以来か。

で、出てたのがこちらのアーティストさん。ワーナーのエド・シーランさん。ググったら、アイルランドでやったこんなライブ映像も発見。ちょっと赤毛でアイリッシュっぽいね、彼。リズム感がよくてギターがものすごく上手いんだけど、その弾いてるギターがチープな感じで、すごくいい。



で、彼のギター見てたら、この人のギター思い出した。



でもウォリスの場合、本人がちっちゃいから、あんまギターのチープ度が分からないね。(そういやウォリスは日本盤が出たみたいだけど売れたんだろうか…)

しかし朝早くから偉いなぁ、と。全米NO1だか、全英No1だか知らないけど、そういう人が朝6時入りだそうですよ。ホント偉いよね。いや、偉い、偉いって仕事なんだからしょうがないんだけどさ。あのとっちらかった日本のバラエティなんて日本人ミュージシャンだって難しいのに、ほんと偉いと思う。音楽のうんぬんよりも、あぁいう場ではとにかく短時間で好印象を強く残さないといけない。お寿司が好きだとか、天ぷらを昨日食べた、とか東急ハンズ行ったとか…サービストークしまくりのエドさん。テリーさんが最後「ギター上手いねぇ!」なんて言ってくれてたけど… もちろん演奏もすごく良かったよね。チャンスをしっかりと自分の物に出来る人は成功する。こういう大きなレコード会社の派手な宣伝を見ると、すごいなぁ、と思うよ、ホント。

でも、ついつい考えてしまうのは、例えばウチのミュージシャンは、あぁいう感じには売れないわけで、そもそも私にはあぁいう視聴率の高い番組にブッキングする力もないわけで、そういうやるべきこともやってないのに、ウチみたいな音楽が売れるわけがない、とか思ってしまったりするわけですよ。やるべきことをやってる人はやっぱり売れているんだ、と。

でも分かるんだ。いつだったかウチの商店街でジョニ・ミッチェルが流れた時、新宿の高島屋のエレベーターでヴァン・モリソンが流れた時、思ったんだ。この場所でいい音楽が流れても、まったく意味ないんだよ、と。ましてやウチの音楽おや。今、地球上に存在する中で、一番素晴らしいとされるジョニだろうが、ヴァンだろうが、そこにいる人たちが音楽リスナーとしての耳を持っていなければ、何も起こらない。そういうことだ。

ワールド系の場合、時々ニュース番組に出るチャンスが得られることもある。となると、ある程度、意味のある文化として、もう少し丁寧に紹介される事もあるかもしれないが… これがまた微妙なところで、そこから本当にチケットを買ってくれたり、CDを買ってくれるような本当のファンに発展していくかは本当に未知数なのだ。

だいたいTVで知った人は次にTVに出るものに、ラジオで知った人は次にラジオでかかるものに流れていってしまうから、何かがあったとしても瞬間風速で終わることが多いように思う。で、反対にあまりヘンな宣伝の仕方をしてしまうと、今いる数少ないお客さんからも総スカンをくらいかねない。などなど…効率だけ考えるとホントに宣伝なんてやってられないわけで……

で、どうしたらいいかというと、こういう音楽はリスナーの方が「自分で見つけないと」だめなんだよね。じゃあ、どうしたらリスナー側から発見してもらえるか…というと、これがやっぱり不特定多数に向けてとにかくひたすら発信する… これにつきるわけですよ。となると、やっぱり多くの人がみるTVに出す、部数の多い新聞に載せる、ってのは正しい答えとなるわけ。で、どういう形であっても、リスナーに「自分が発見しました」って印象を持ってもらわないといけない。

しかし誰もがミュージシャンやアーティストになりたい、この厳しい時代に、いったいワールド系のミュージシャンが、どうやったら生き残っていけるというのか。ただでさえ商業音楽としてのレベルは非常に低いワールドミュージック市場。でも、だいたいパターンは決まっている。まず出来るのは共演だ。共演をやって、誰々と演奏した、誰々のレコーディングに参加した、といってはプロフィールに書けることを1つでも増やしていく。で、10年もやってりゃ賞の一つでももらえるだろう。それもキャリアの1つになる。あと有名フェスティバルの、下の方でもいいからすべりこんで、あそこにも出た、ここにも出た、という実績を作ることだ。そして少しずつフェスティバルのポスターの上の方に喰い込んでいく。そして運がよければ映画関係者の耳にとまり、映画で使ってもらえる。あとは普段から今やネットワークの時代なので、SNSなり、頑張って自分のコミュニティを作って行く。

ところが! ところがですよ。ウチの巨匠たち(JPP)と来たら、なーんにもやってないんだもの。普通バンド30年もやってりゃ、共演経験もあるでしょう。でもそれをきちんとまとめてプロモーションに使おう、という意志がまるでない。生活は北欧の場合、ミュージシャンだって奨学金がいっぱいあるから保障されている。もちろん北欧に住んでいる他の人同様、老後の心配は何もない。そんな社会の中で、ガツガツすることは美徳とされない、という習慣もある。CDを出したといえばサポートしてもらえる、新しいバンドが出来たといってはサポートしてもらえる。だから北欧の伝統音楽シーンは、み〜んなかけもちバンドで溢れている。(それは良いことだと私は決して思わない)

コンサートだって、充分サポートされているから…なんというか必死感がない。だから当の巨匠たちときたら、コンサートのインフォも下手すりゃ1週間前まで掲載されないこともある。

これは厳しい事言っちゃうけど、自分で道を切り開いてないバンドの悲しいところだ。どんなに音楽がよくても、いや音楽がよいからこそ、そして文化的価値が高いからこそ何もしなくてもどっかから美味しいフェスの話や、買い公演の話がふってくる。それが来たら、それを受ける。それだけ。自分でチケット売ってないから、必死になることはないよね。生活がかかってないからね。

そういう巨匠たちの態度は…正直イライラすることがある。どうしてちゃんとホームページをきちんとメンテしないのか、せめて公演情報だけでも、もっと敏速に、正確にやれよ、とついつい思ってしまう。

ミュージシャンが大きいとか小さいとか、それはあんまり感じない。それよりもメジャーな人ほど今や頑張る時代になってきているよね。そういう時、やる気のある頑張り屋のミュージシャンと一緒にやっているスタッフの人たちが本当にうらやましくなる。

でも私に何が言えるのだろうか。彼らは朝6時にTV局に行く生活よりも、地元のジジババ子供のために、そして何より自分の楽しみのために音楽を演奏することを選んだのだもの。それについて、私が何を文句を言う権利があるというのか。

あぁ、天然記念物よ…(笑) 私はそんなおじさんたちが好きだし、そんなおじさんたちを応援している。この音楽がすごく豊かなのも、そういう競争社会から外れてたところに存在しているからかもしれないんだし。

人は人、自分は自分… しかしこの天然記念物のおっさんたちをどう売っていくか… ほんとに大きな課題だ。これは、こういう音楽を愛してしまった自分にかせられた大きな大きな課題なのだ。

なんだかんだ言いながら、幸せではある、わたしは…(笑)




JPPがゲスト出演するヴェーセンのコンサートはこちら