優しいダブリンの街への讃歌 映画『ONCE ダブリンの街角で』がリバイバル上映中

 


なんとふとした偶然で、リバイバル上映されることを知った!

とはいえ、昨今のリバイバルブームには考えることが多いよね。古い作品を愛でるなら、新しい頑張っている作品たちに上映のチャンスを与えるべきじゃないのか。映画も音楽もレトロスペクティブに走りすぎている…

…ということは抜きににしても、これは大好きな音楽映画です。音楽映画BEST3を選ぶとしたら、私はこれと『コミットメンツ』、『あの頃ペニー・レインと』あたりかしら。

2000年代のダブリンをよく描いている。よく「実らなかった男女の愛」みたいなレビューを見かけるけど、私はそれは違うと思うね。

これは本当に素敵な男女の友情の物語だ。いや、人に対する恋愛感情などとっくに卒業してしまった枯れた自分だからそう思うのか?(笑)でも男女の友情ってあると思うし、愛情は発展すればそれは友情になると思うよ、私はね。

そしてダブリンの街の優しさ。この映画が描きたかったのはそれだ。当時のダブリンは移民が急激に増えて、いろいろ複雑だった。EU唯一の英語圏、ケルティック・タイガーと呼ばれる好景気、そしてそのあとのバブル崩壊。

でもアイルランドは、常に不思議な力を持ち続けていたと思う。アイルランドに移民してくると、みんなアイルランド人みたいな性格になっちゃうのよ。なんでだろうね…と、誰かが書いていた。

日本もそうありたいよね。本当に外国に行くとわかるのだけど、街の優しさは本当に何ものにも変え難い。自分が個人的に海外から呼んだゲストのために、ベストを尽くしても、街の優しさはどうにも修復できないものだから。そして、街の優しさは、一度壊れてしまうと修復するのはとても難しい。

最近の日本は余裕がなくなっているから…という意見もあるけれど、いや、アイルランドの人たちは余裕がない時も優しかった。自分たちも辛い時代をいたいほど経験したから。

そうやってダブリンの街の優しさはずっと変わらない。この映画はそれを言っている。日本もそうありたい。東京もそうありたいね。

移民女子が売り物のピアノを弾くのを黙って見逃してやる楽器屋の親父。急にお金を借りに来た無名のミュージシャンに「自分も音楽が好きなんだ」と作った歌を歌い出す銀行員。音楽に魅了されサボろうと思っていたのに妙にエンジンがかかってしまうスタジオのエンジニア。

そして息子を行かせてやる父親。(あの「やるなぁ!」には泣いた。いい訳だ。今度の字幕もあれは残してほしい)

「周辺の親父の優しさが良い」と書いたのは、週刊文春だったが、あれは誰のコメントだったか。週刊文春の映画評は自分の好みと一致することが多く好きだ。でも本当にそうだと思った。

そしてエンド・ロールになって気づく。この二人に名前がないことに…。やるなぁ!!

本当に宝物みたいな映画。いろいろ意見はあるけど、私はジョン・カーニーの作品は、これが一番好き。彼はこの作品のヒットで次の作品のための莫大な予算を得たけど、結局まだこれ以上の作品を作れてない。

このブログを読んでいる人で、まだこの映画を見てない人はいないと思うけど、私ももう一度行っちゃおうかなと思うくらい、大好きな映画です。皆さんも、ぜひ。


THE MUSIC PLANT、次の主催公演はこちらです。

Caoimhín Ó Raghallaigh クイヴィーン・オ・ライラwith 黒木千波留

7月24日(木)南青山曼荼羅19:00開演 
¥6,000(+ドリンクオーダー) 
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6月25日に新作「the Dark Night Rhapsodies」がリリース。こちらが特設ページ(Sony Music Labels)。アナログ盤と、ピアノ小品集の楽譜は日向さんのサイトで通販中

 

民音さん主催でゴサードシスターズの来日ツアーもあります。詳細は特設ページへ。


ポール・ブレイディが12月にケルティック・クリスマスで来日します。詳細はこちらへ。


2年前にレコーディングした無印良品BGM29 スコットランド編がやっと公開になりました。良かったら、聞いてください。プロデュースはLAUのエイダン・オルークにやってもらいました。現在無印良品の店頭で聞くことができます。