映画『関心領域』を観ました。なるほど…

 


すごい映画だというのは認めましょう。こんな映画は見たことない。いや、あるな。私はこの映画は「ミッドサマー」とか、あの手の綺麗に作られたホラーのように感じた。

実はすっごい期待していたので、私は公開初日に映画館に行った。が、その日、私は前日深夜遅くまで仕事をしてしまい、超寝不足状態。

実は映画が始まる前に…というか最初画面真っ黒じゃないですか? 20秒くらい。あの間にとっとと寝落ち。気づいたら、映画が始まって、おそらく10分くらいたっていた。だから最初の川辺のシーンは、覚えていない。

その後も、かなりの割合で気持ちよく寝てしまい…というかかなりぐっすり。何も覚えていないというテイタラクぶり。常になっている音がすごいな…という印象はあるものの、まったく内容を覚えておらず。

とはいえ、実際見た方は、なぜ私が寝てしまったかは理解できると思います(笑)

で、これは、まずい。実際結構この映画、評判がいい。私が信頼してる文春の映画評も高得点。あっちからもこっちからも絶賛の声が聞こえてくる。

早くまた見に行かねば…と思っていたら、映画界の大御所:某配給会社の社長と、音楽界の大先輩からのお誘いがあって、一緒に観に行くことになった。音楽界を引退されたもう一人の優しいおじさんのも一緒だ。このメンバーの映画感想戦が、いつもすごいんだ。

なので、皆さんとのアポ日が来るまでは、我慢、我慢。2週間くらい我慢しただろうか。

そしてやっと観に行った。感想戦は激しく、久しぶりに午前様してしまったくらいなのだが。ただこの映画を好きだと言った人はいなかった。ほぼ全員がかなり憤りを感じ、実際かなり怒っていた。

私も、この映画が好きか嫌いかと言われれば「嫌い」。というのも妙にアートだから。人間を生生しく描いていないから… いや、こういった姿もまた、人間の姿なのかもしれないが。

ある人があの女の無神経な足が嫌いと言った。この感想は私のツボにはまりまくった。あのふくらはぎも足首もない、無神経な太い足。あぁいう足で無神経にたってられるとほんとにイライラする。

ちょっと「ミッドサマー」に通じるホラーなのよ。あの手のホラー「みたいな」映画、実は私は苦手。ちなみに、私はサイコホラーは大好きで『羊たちの沈黙』や『レッド・ドラゴン』『オーメン』とかは大好きなのだが。あぁいう妙に芸術性の高い、人間を描いているようで描いていない、そういう映画は好みではないのだ。

…という私は古い人間なのかもしれない。

しかしこれだけ憎たらしい女を演じるザンドラ・ヒューラーすごすぎる。なんか得体の知れない女を演じさせたら、おそらく彼女の右に出る者はいない。『落下の解剖学』もすごかった。

そして最後のアウシュビッツの記念館を掃除するスタッフの姿も、これまたある意味不気味だ。確かにアウシュビッツのあのすごい光景を見るたびに感情移入してたら、仕事にならない。

彼女たちの「関心領域」にも、アウシュビッツの悲劇は入っていないということなのかもしれない。というか、入れていたら身体がもたない。

が、たとえば、病院に勤めていても人間の死に慣れてはいけないように、とにかく人間性を保ちたい。

でもよく考えてみて。たとえば、あなたも人間性を失っている場面があるのではないか? たとえば満員電車になんの疑問もなくぎゅうぎゅう詰めにされて揺られている時、学校や社内でのイジメや差別を見て見ぬフリする時、あなたの人間性は?

そう、私だって自分の関心領域しか見ていないとは思う。が、少なくとも広い視野を持つように、世界をなるべく公平な目で見るように努力はしているほうだとも思う。そういう人にとっては、この映画は怒り沸騰ものなのかもしれない。

少なくともこの感想戦に参加したメンバーは、それぞれの領域で目一杯頑張っている。だから頭にくるのかもしれない。

根本にあるのは、あんたにそういうことをわざわざ言われたくないよ、ということかも。だって私たちは必死で人間性を失わないように日々戦ったいるわけだから。そんなこと映画に指摘されるまでもないよ、と。

というわけで、そんな私たちも感想戦で午前様してしまったわけだから、やっぱりすごい映画なのかもしれない。というか、映像、音響、俳優全てをとっても完璧なまでにすごい映画だ。

すごい映画なのは間違いない。芸術性は高い。なんたって、ジャミロクワイのMVの監督だものね。そしてアウシュビッツをいうのをこういう形で表現したのは、確かに斬新。この映画が好きな方(というか、そういう人がほとんどだろうけど)すみません。



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