「江東区公開講座 現代によみがえる #小泉八雲 とセツ」#小泉凡 先生の講座を見学しました



先週の金曜日は、こちらの講座へ潜入してまいりました。そして12/10開催の「朗読のしらべ」のチラシをちゃっかりと配布させていただいている、わたくすは、プロモーションに熱心なイベント主催者(笑)。江東区の皆さん、小泉凡先生、ありがとうございます。

それはともかく講座、とても面白かった。休憩を挟んだ2時間だったのですが、今回は連続講座オープニングのスペシャル・ヴァージョン。小泉八雲のひ孫、凡先生の講座は、何度も聞いたり参加したりしているのに、毎回新しい発見があり、今回も改めて素晴らしいなと思いました。

っていうか、まさに今、現代だからこそ全世界が八雲を必要としているんだな、という気持ちを強くしました。公演に向けての気合いも入ります。

以下、内容をちょっとだけレポートさせていただきます。こちらは私が聞いて、録音もせずメモったものなので、理解が間違ってたらすみません。あくまで文責:野崎でお願いいたします。

凡先生の講座は、ハーンのバイオグラフィーや歴史上、実際に起こったことなどだけではなく、現代に続くハーンの精神まで広がっていきます。そこが素晴らしい。とにかく凡先生のお話は深くて面白いんです。そう、ハーンの精神は、現代社会と常に現在進行形で呼応している!

まずはハーンの「オープン・マインド」「五感力」「SDGs」「戦後80年」などのキーワードから。

八雲のすべてに通底しているテーマ。それが「オープン・マインド」ですが、それはギリシャのハーン愛好家のタキス・エフスタシウさんによって最初に提唱されたのだそうです。

これがまさにハーンの人生や価値観をひとことで表現している言葉なんですね。2009年のことですが、ハーンのこの精神を表現するユニークな美術展がアテネで開催され、これが少しずつ世界へ広がっていきます。

では「オープン・マインド」とは?

 ◎他者への公平なまなざし

 ◎西洋中心でも人間中心でもないまなざしで、五感を研ぎ澄ませて対象をみつめる

 ◎多様性(diversity)の尊重 → 分断・自国中心主義とは対極にあるもの

それが、ハーンの「オープン・マインド」なんです。

凡先生によるとハーンがその精神を醸成していった要因としては、生まれの複雑さ、両親の離婚で母に生き別れたり(最後までとうとう再会することはなかったそうです)、16歳での失明(だからハーンの写真はいつも横顔)、そして渡ったアメリカでの赤貧の暮らし、そしてニューオリンズでのクレオール文化との出会いなどが考えられます。

*ちなみにこのクレオール文化に接したのは、ゴーギャンとかと一緒の時期だったようですが、二人が交流したという記録は残っていないそうです。

また最初の結婚の破綻(奥さんになった人が黒人とのハーフで、それは当時では違法だったとのこと、それによってハーンは職も解雇されます)や数度の感染症(本当に死にかけたそうです)なども大きく影響している。

家族を作り結果亡くなるまで定住することになる日本に辿りつくまで、本当にハーンは大変な人生を送ってきました。

そして日本に渡り、最初に滞在した松江では、ハーンはその五感を大いに働かせて松江の町に溶け込んでいきます。

言葉もわからない異国の地で、しかも目が見えないことにその理由があったようですね。凡先生によると、失明した目もそうですが、見える方の目もほとんど見えなかったようです。だからすべての感覚をするどく研ぎ澄ませていくしかなかった。

そして、将来は政治戦争ではなく経済戦争が起こるだろうことや、中国を中心に世界がまわるだろう、ということもハーンは当時から予言しているわけです。なんだろう、やっぱりちょっと霊感というか、すごくいろんなことが見えている人だったのかな、と思います。

あと講座では、今話題の「朝ドラ」の秘話も。

「ばけばけ」に出てくる主人公の松野トキ(このモデルがハーンの奥さん、小泉セツにあたります)というのは、日本語が上手ではなかったハーンの言葉で「スタシオン ニ タクサン マツ ノ トキ」(At Station there are lots of waiting timeということ)から来ているんだって。

そして、だいたい朝ドラのヒロインは、たいへんなオーディションを経て(ちなみに今回も3,000人がオーディションに来られたそうです)、そこから10人に絞り、最後はケンケンガクガクの大騒ぎの最終審査になるそうなのですが、なんと今回、主人公のトキを演じている高石あかりさんは最終審査の4次審査で、30分くらいで、あっという間にほぼ満場一致で決定したのだそうです。すごいね。

そして凡先生によると八雲役のトミー・バストウさんも、とても真面目な方で、役作りにものすごく熱心なんだそうです。本はハーンが書いたものや評伝など、一般的なものはもちろん、凡先生が知らないようなマニアックな新聞記事なども読みこんでいるとのこと。

またNHKの橋爪國臣プロデューサーのご紹介もあり、へぇーそんなに若い方なのか、とちょっとびっくり。(まぁ、私がぼーーっと歳取ってる間に、若いすぐれた方が活躍されてる、ってことですかね。すごいなぁ)

あと今年2025年は戦後80年の年ってことだったわけですが、実はハーンは戦後日本にも大きくかかわっているんです。

マッカーサーの側近で戦後、天皇制を維持するために貢献されたボナー・フェラーズはハーンの熱心な愛読者として知られ、ハーンを読んでいる彼の理解があったからこそ、戦後日本の象徴天皇制が維持できたと言われているんですよ。ご存知でしたか?

つまりハーンの精神が戦後の日本の精神の礎となった言っていいと思うんですよね。

(なんとのちに発見された小泉家からフェラーズに送れた手紙で、凡先生のファーストネームはフェラーズさんのお名前から取ったものだということが分かったそうです。感動!)

あとびっくりしたのは、ハーンをいわゆる観光資源の一つとして盛り上がる島根県。松江はもちろん隠岐島の話も。ハーンとセツがよく訪れたという隠岐島にはハーンとセツの銅像ができたそうで、ハーンの銅像はたくさんあるものの、ご夫婦そろっての銅像はこちらだけなんだそう。

そして、隠岐島にはハーンという地域通貨もあるとか! びっくり! そして電子決済はハーンPAYって言うんですって!! 驚愕。これには会場も大いに受けておりました(笑)

なんだろ、こうなんていうか、観光というのは、今や日本中が力をいれている分野だと思うんですが、それには、やっぱり多くの人の気持ちをまとめる精神的支柱が必要なんだと思うんですよね。

「オープン・マインド」のハーンだからこそ、そんな精神的支柱になれたのかもしれません。

そしてそれは松江を超えて、日本を超えて、世界中に広がっていきます。

ハーンの怪談は今やイヌイット語など少数民族の言葉にすら翻訳されているわけですが、それ以外にも「オープン・マインド」をテーマとするアート展がアテネ、松江、ニューヨーク、ニューオリンズ、ダブリンなどで開催されています。

そして松江出身の佐野史郎さんと山本恭司さんの「朗読のゆうべ」は2007年から国内、海外80回を超える数開催されている。(まさに北とぴあでも12月10日に行われます。チケット残り少なし。  このページへ急げ!)

そしてニューオリンズのマルディグラ・カーニバルにも凡先生は呼ばれたそうで(こちらにその楽しそうな御夫婦の様子も)、カリフォルニア大学サンタバーバラ校「Animisum Today」でもハーンの考え方が取り上げられるなど注目が集まっている。

アイルランドでのハーン庭園や、Open Mindの精神、そして全てが繋がっている。繋がることが大事だ、とハーンは私たちに今でも教えてくれているんですね。

東洋と西洋、そして人と自然、生きている人と過去に生きた人、すべてが繋がるアミニズムの精神など、まさに今、世界がハーンの作品を活かそうとしていると、凡先生は語ります。(ちなみにこれは同時にケルトの精神でもある)

本当に八雲とセツが紡いだ怪談の意義を未来にも届けていきたいものです、と凡先生は締め括っておられました。うん、私もこの講座を聞いて公演に対する気持ちを改めて強くしたのでした。

と言うわけで、あっという間の2時間。

この凡先生の講座のあと、この八雲シリーズ、毎週金曜日、川澄亜岐子先生が担当されます。川澄先生、がんばってください!(えっ、そんな講座あるの? 参加したい!と思った方、すみません。既に講座は定員いっぱいです)

講座が終わったあとは、元気に月島もんじゃへゴー! 豊洲に来たら、市場よりは一駅有楽町線に乗って、これだよね!




人気店によく入れたな…。ちなみに「もんじゃなら任せて」と先輩ぶる私でしたが、隣のテーブルのお兄さんたち(私の1/3くらいの年齢だろうか…)は、ラムネを飲みながら、すごく上手に手慣れた様子で、もんじゃ焼いてた。すごいな。

思わずジロジロ見ちゃった。私も、もっと「もんじゃ」修行しないと!!


私たちは開店と同時に入ったからこの人気店に入れたけど、私たちのあとは満席で入れない金曜日の夜だった…。本当においしかった。そして安かった。ご馳走様でした。

こちらは松江お土産〜。雪女のおやつ。あまりに美味しくて帰宅したら一気に完食してしまった。やばい糖分アラート。砂糖は控えていたのに…

本当に凡先生の講座でもお話を聞いたように、八雲は松江の観光にも貢献している。素晴らしいと思う。ヘルン先生の魂は、ずっと松江で生きている。


なんて綺麗なお菓子。本当はこういうの北とぴあでも売りたいな〜。調べてみたけど、生菓子だから結構難しいかもなぁ。でもすでにほぼ満員のお客様だし、20個とか、売れるかしら。卸値でおろしてもらえるかしら。


さてさて、凡先生、八雲のひ孫という以上に、すごい鉄道オタクだってご存知でしたか? ちなみに先生が小学校高学年から大好きだった鉄道旅ひとり旅の話はこちらへ。ここに載っている子供のころに書いた手帳、すごいクオリティ!! イラストもすごいお上手!!!




で、ちょっと前にネットで話題になったこちらの動画、凡先生に話題を振ってみたら当然同じ鉄道オタク(笑)の凡先生もご覧になったそうなんですが…


なんと凡先生、首相になる前の石破さんと電車(しかも食堂車!)で、一緒に乗り鉄&呑み鉄したのだそうです。きゃーー どうやら関西のテレビの企画だったらしいのですが、それどっかで見れないのかなーーー!!? 誰かーーーっっ。

それにしても石破さんもハーンと同じこと言っている。繋がっていることが大事。それが鉄道、それがオープン・マインド。


と言うわけで、ハーンのオープン・マインドを体験したい方は、今度の北とぴあ「音楽と本祭」へ。第2回のテーマは、佐野史郎さんと山本恭司さんの小泉八雲の朗読公演です。12月10日。

特設サイトはここです。もうチケットは残り少なし。売り切れてから「知らなかった」とか「買うつもりだったのに」とか言われるのは嫌です(笑)。ぜひみなさん、お早めに。



ポール・ブレイディが12月にケルティック・クリスマスで来日します。チケットは予定枚数終了。当日券は未定。

◎そのポールが出演するマシュー・バーニーの傑作「クレマスター3」。ポールの来日にあわせて急遽上映が決まりました。よかったら、ぜひお越しくだっさい。詳細はここ。こちらも早くも残席少なし。



◎野崎は、現在作曲家:日向敏文さんのマネジメントおよび宣伝をお手伝いしております。


◎同じくこちらのショパンコンクールのドキュメンタリー映画『ピアノフォルテ』のPRのお手伝いしております。みんな見てね! 公式サイトはここ