人がすごく良い本だったと教えてくれたので、とても気になり購入。読んでみた。
そしたらすごかったよー すごかったよー すごかったよー すごい本だった。ここ半年、いや2年読んだノンフィクションの中でもピカイチだったかも。すごい本を読んでしまった。
ここでは精神を病んだ次男に自殺されてしまった父親の、そらまでの回想や、脳死にいたるまでのあれこれや、そのほぼすべてが詰まった一冊の本。
まさに書かずにはいられなかった感がすごくって、この世に生まれるべくして生まれたものすごい一冊だと思った。これは、大変おすすめです。
と言うか、この本、出た当時は相当話題になってたらしい。読んでないのはわたしくらいかもしれない。
それにしても亡くなった次男のあれこれがつらい。父親は間違いなく次男に寄り添っていた。結果だけ見ると、まるで父親にも次男の死の責任があるように見られるかもしれないけれど、たとえばわたしなんかよりもよっぽどあったかい親子関係は間違いなく存在していたのだと思う。
だから自死を選んだ次男を父親は責めることは決してない。いや、攻めている部分もあるのかもしれない。「なんで死んだんだ」と。しかしそのことはこの本には書かれていない。あくまで押さえて、客観的に読み物として昇華しようとしている。
いや、昇華しようとしているのかな。とにかく書かなければ収まらない。そういう気持ちがあったのだというのがヒシヒシとわかる。
そしてこうやって最後が自殺(と言っても突発的な事故のようなものではないかと想像する)という終わり方をしたとしても、家族が彼自身の生き方を肯定し、このように理解してくれているというのは、素晴らしいとさえ思えた。
奥さんはすっかり参ってしまったせいか、あまりここには登場していない(また著者は、しばらくするとこの奥さんと別れて作家のいせひでこさんと一緒になっている)長男の存在も頼もしくもあり、かつ繊細でもあり。
でもまずは脳死ってこういう感じなんだ、ということを改めて知った。こんなふうになるんだ、と。脳死認定の段取りまで書いてある。それは、まったく自分が想像していたのと違っていた。
確かにこんな感じであるのならば、遺族が相当踏み込んでくれないと臓器提供など、いくら本人の意思があっても潰されてしまうだろうと想像した。これは、本当にハードルが高いと思った。ましてやその臓器が人の役にたつのかということも含めて。
そしてそれでも決意して、脳死の後のあれこれを進める残された人たち。すごい。
そして、この本には息子が書いた文章も掲載されている。
それも…もちろんあまりよくない作品は載せていないのだろうから、良いものに決まっているのだが… それらを読むにつけ、彼が死後の世界で、ゆっくりと幸せにしてくれていることを願わずにはいれないのだ。これが死後の安らぎというものなのか。死んだら、すべて安らかになれるのか?
人の死なんて、いつおこってもおかしくないことなのに、誰も納得していない。納得するためには時間も必要だし、強い意志も必要だ。
亡くなった次男に、生きている間に文章を書く事で自分のことを昇華できるような道が探れていれば、とも思わないではないが、それは「たられば」の世界以上のことは何もない。
とまぁ、この本を読んでからのぐるぐるした思考が止まらない。ということは、この本はすごい本だということになる。
というわけで、柳田邦男マイブームになってしまった。本屋で数冊注文。原発の本とかじっくり読んでみたい。
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