ブックレビューがたまっています。
ネタバレしないように感想を書くのは難しいが、とにかく最初からすごくぎゅっと内容が詰まっていて、読みながら、えっっ、えっっ、ええええっっっーっ感じで、話は進む。
すごかった。なんというか、JA(いわゆる農協ですね)の深い闇。それを聞いただけで、もうこのテのノン・フィクションが好物な読者は期待マックスだと思うが…。とにかくいくらでも期待して大丈夫。これはそういう本だ。
圧倒的な営業成績を収めていた西山という男。西山は最終的に、車で海に突っ込み自死を遂げるわけだ。しかしこの呆れるような犯行は、対馬という土地を抜きに語れない。そして、おそらく西山一人を罰していただけでは、この風土は変わらない。
そして最後は、妙にしんみりというか、しっとりとこの本は終わる。この辺の著者の筆の力は、圧巻だ。ここまで来ると、もう最後まで一気読みだった。すごかった。
著者は決して、この事件というか、この状況をひとつの視点で捉えようとはしていない。そこがすごい。そんな筆者に導かれながら、読者はこの男を酷い奴だと思い、可哀想な奴だと思い、同情したり、呆れたり、ノン・フィクションながらも、心を寄せてしまう。
そうやって、めちゃくちゃ気持ちが揺さぶられるのだと思う。
そう、西山は極悪人であると同時に、可哀想な犠牲者でもあった。登場人物の中で、真っ当な考えを貫き、西山に左遷させられながらも彼には同情心を寄せ、癌で亡くなってしまった方の存在が、素晴らしく、これまた涙を誘う。
最後の終わり方もすごく好きだ。ノンフィクションでも、こういう読者の心の動きを見事にあやつりつつ、一種異様とも言えるこの地での生活や空気感に読者をがっつりと引っ張り込んで感じさせてくれる本は、本当にめったにない。
そして、これって日本中、ここだけの話ではない。おそらく皆さんも読んだら、自分の身の回りにもこういう話を見つけていくだろう。これって、あなたが日々関わっている組織にも同じことが言えるのではないか?
本当に日本、やばい。
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