アーティストとお客さんが決めるインディペンデントなツアー

Twitterのタイムラインで、とあるコンサートで人が入っていないことが問題になっていた。

私たちプロモーターにとって、アーティストに喜んでもらうため会場は是が非でも絶対に一杯にする、これは必須事項だ。そのために、もしかすると招待をたくさん入れることもあるかもしれない。ウチも20公演に1回くらいそんな事がないわけでもない。

「お客が入っていない」「招待で埋める」そういうだらしない結果になる一番の理由、プロモーターが甘えてしまう一番の理由は、それは「会場がいっぱいならなくても、チケットが売れなくても成り立つツアーを元から作っている」ということに起因しているのではないかと思う。もっともプロモーターとしては、このただでさえギャンブルみたいな仕事の、ギャンブル度を下げる事が大事なのであって、もしかするとそっちの方が職業上プロフェッショナルなのかもしれないが。

だが、何か新しいことを進める時、これらは単なるセイフティネットにならざるを得ない。だから一番重要なのは「退路をたつ!」これに限るのだ。それはどんなプロジェクトでも一緒だ。チケットが売れないとやばい、売れないとウチはつぶれちゃう! そういう状況をつくれば、プロモーターは、それこそ必死で売ることになるからだ。

実は自慢ではないが(といって自慢しているのだが/笑)前回の春のマーティンとデニスのツアーは、すべてチケットの売り上げによってなりたっていた。これは実はワールドミュージックの世界ではかなりレアなことだ。お客さんも自慢していい。マーティンたちを来日させているのは、チケットを買っている自分たちだと。それは、ラッキーな一部のアーティストをピックアップしているフェスティバルのプロデューサーのおかげでもない、ましてや文化財団やアートセンター系施設において決定権のあるプロデューサーのおかげでもない。すべてはチケット1枚を買ってくれるお客さんが決めているのだ、と。

もちろん最初アーティストを育てるという枠組の中では、そういうスポンサーっぽい援助が必要な時期があるのは当然だ。が、ウチみたいな小さいところだったら、そしてアーティスト側が協力してくれるのであれば、最初からまるで独立ってことも不可能じゃない。現にラウーの最初の2度のツアーなんかも超ギャランブルだったわけだし。でも、その「もう後戻りできない」という状況が、彼らの今の成功を生み出したといって間違いないんじゃないかな。今やなんたってケルクリにも出られたんだしな!

マーティンとデニスもウチでやるようになって今度で4回目。とにかく、この二人においては前回のツアーでアーティストもお客さんもインディペンデントに独り立ちしている事が実証されている。うん、いいぞ。もうこうなるとアーティストは、自分の都合のいい時期に来日を組む事ができる。他の誰かの決定を待つ必要などひとつもない。アーティストは「そろそろ日本かな」と思えば、私とスケジュールを調整して、日本に来ればいい。それだけだ。

同じことが実は今度のヴェーセンのツアーにもいえる。ヴェーセンはギャラもすごい高額だし、マーティンやデニスと比べると飲食費が倍くらいだから、彼らのハードルはかなり高い位置に設置されている。でも、今回のツアーは、私が大ばくちを売った2004年の彼らの初来日公演と同じで、まったく第3者の金銭的な援助を得ていない。音楽業界どころか世間の消費が冷え込んでいるこの時代に、これはすごく貴重で大事なことだ。ちゃんと「ヴェーセンが来るから」ということでチケットを買ってくれるお客さんがいる。それはものすごい圧倒的な事実なのだ。

ま、間に入るプロモーターの私としては、お客さんの数が予想外に減ってないかツアーのたびにちょっとしたギャンブルだが、まぁ、その程度は仕方ないよね(笑)。お客さんを信じて、アーティストを信じて。皆のため、そして何より自分がコンサートを観たいから頑張ってツアーを作る。うん、いいな。今日もかっこよく決まった(爆)……といいつつ、実態はかなりやせ我慢だったりもする(笑)実はホントは彼らにギャラをたくさん払うためにも、もっと安全パイな公演を入れてあげたかったのだけど、単に前年度の営業に失敗しただけだったりする(笑)。と、まぁ、ツアーは大変。でも頑張る。

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絵が気に入らないが(笑)ヴェーセンの最高傑作「ヴァルデンス・ヴェーセン」より。「キャプテン・キャプシール」すごい完成度! どこの国に伝統を踏まえつつも、こんなにプログレッシブな曲が書けるバンドがいるよっ? やっぱ最高だなーっっ、ウチのヴェーセンは。