#ザ・ノンフィクション 『ひきこもって37年〜母と息子の小さな食卓〜』を観ました



鳥の唐揚げとプチトマト(スーパーで99円)そして新生姜のご飯(油揚げ入れるのを忘れた!)。りゅうじさんのレシピで、あっためる前の油に片栗粉をいれて揚げるやつ。結構感動の出来。りゅうじさんのおかげで、鳥の唐揚げは私の得意料理の一つとなりつつあるかもしれない。

日向敏文さんが音楽を担当されたというので、久しぶりにフジテレビの「ノンフィクション」を観た。うちはテレビがない。TVERで生放送でも見れるのかと勘違いしていたけれど、見れないと知って、慌ててマンションのロビーへ。

うちのマンションのロビーは子供に占領されていなければ、テレビが見れるのであった。ありがたい。

しかし…いやー なんというかものすごくヘヴィな内容だった。ロビーで見るのはちょっと躊躇われたが、もちろん最後まで見た。基本的に静かなインタビューで、音があまりしない。

時々日向さんのピアノが挿入されるが、それも本当に靜かフレーズが流れるように弾かれているだけ。

それにしても「この家族は、いったいどうすればいいのだろう」と、途方にくれる内容だ。中学の時、スポーツの事故で怪我をしてから引きこもってしまった息子。それを支える母。まさに5080問題。

お母さんは、彼のことをなんとかしたいと思い、この制作会社の取材を受けることにした。

そしてこういう番組を見ると社会は、弱いものに対して本当に厳しいよなと思う。いや、彼らを弱い…って言ってしまってもよくないのか。なんというか、ちょっとしたつまずきで、人生の典型的な軌道からずれていってしまった人たちに対して、社会は本当に厳しい。

こういう状況に対する想像力が足りないんだろうな。それは私も含めて…。

こういう人たちでも、普通に生きることができないのだろうかと思う。でも知れば知るほど、それが難しく、それが出来ない世の中なのだった。厳しい。

でも割と最初の頃に出てきた全国から生きづらいと思っている人たちを引き受けて自給自足の生活を送っているというパン屋さんの経営者の言葉が良かった。

「生きているだけで一人前」「お金を稼ぐのは一つの手段であって」「引きこもっている人たちは今の社会を否定している」「否定の仕方がわからないから、一つの手段として引きこもっているわけですからね」等々、なんだか、すごく沁みた。あれは良かった。

引きこもってしまった彼は、鬱の傾向もある。部屋を片付けられない感じも、本当にギリギリさを感じさせる。でもパン工場での彼の姿には積極的に手伝い出すなど、ちょっと希望が見えたような気がした。27年ぶりに履いたという運動靴の蛍光色もとても眩しい。

ちなみに番組を見ながら、Twitterを追いかけていたら同じ方が主人公として登場する「27年ぶりの運動靴」というドキュメンタリーもあることを知る。こちらも同じ映像制作会社。すごい。2016年の作品だ。

本当によくこれだけ彼らの様子を捕らえたよなぁと思う。この番組が、彼らと社会をつなぐ、本当に細い(でも強い)糸なのだと思う。12年がかりで彼らとつきあい、すごい長い時間をかけて番組を作りだしているのがわかる。

でもまさきさんはまた心ない人の言葉に傷つき、再び家の中へと戻ってしまう。うーん。そして、またそこから何年もの月日が過ぎてしまう。

加えて、そらにそこに追い打ちをかけるように別に暮らすお姉さんにも問題が起こる。ギリギリの家族。

なんとか部屋を片付けようと試みるまさきさん。そして、音楽だけが心の支えだったとも話す。去年亡くなった横山SAKEVIさんとの交流エピソードは、なんかよかった。音楽家っていうか、表現者っていうか、そういう人たちは概して、みんなこういう弱い人たちの味方である。それが表現者ということなんだろうなと思う。

番組の最後の方ではお母さんの誕生日ということで、家族で食卓を囲むシーンがあり、ちょっとホッとする時間が訪れるのだが、それも長く続かないような予感がマックスではある。

本当に不安しかないのだけれど、それでも母親の車椅子を推しながら歩く息子に太陽の光がふりそそく。風が強い。でもとにかく前に進む。そんな感じがとても良かった。

日向さんのピアノは、いつも状況がちょっと明るくなった時に、主人公に寄り添うように流れる。それでも、なんだか寂しいのは、その幸せや明るさが束の間のもので、決して長く続かないと、痛いほどわかっているからなのかも。

なんか、最近の私のテーマはそれである。本当に人生の喜びって儚い。そして人生は概して辛い。生きていくのは誰にとっても大変である。

この番組、再放送やネットで見られるようにもなると思うので、ぜひ注目していてください。

それにしても、食卓って不思議で、住んでいる人のすべてが映し出されているよね。掃除や片付けもそうだ。家の中の、そんな様子が、すべてを物語る。

そういや、いつだったか見た崩壊した家族の映画では家族が全員ずっとコンビニご飯だったのが気になった。大竹しのぶが長女役をやった映画『阿修羅のごとく』では店屋物が、妙に気になった。

『昨日なに食べた』もそうだよね。食卓に並ぶ手作りの温かいご飯があれば、この二人は大丈夫、と感じさせてくれる。

こちらは、ナレーションをつとめた小雪さんのインタビュー。

ディレクターの長谷川さんはこんな方。日向さんの話題も出てくる。

それにしても、一人で暮らしているのに割と料理をしている私は幸せなのかもしれないよな。

でもいつも食事シーンのシェア時にキーボードが写っているのが笑えると友達に指摘され、自分でも笑った。仕事を辞めたらダイニングテーブルをちゃんと買おう。今のレイアウトのままでも、台所のカウンターみたいなところで食事ができなくもないのだが、ついついYou Tube見ながら仕事机で、食事しちゃう。

そんなんじゃダメだよね。

部屋が片付いていないのも、これまたダメダメだよね。

そんな自分をしょうがないなと思いつつも、こういうお母さんや息子のような家族は案外身近にもいるのかもしれないなと思う。

彼らは毎日を「なんとかやりすごす」ようにして生きているんだろうなぁ、きっと…

こちらが番組のトレイラー。


日向さんは6月25日に新作「the Dark Night Rhapsodies」がリリースになります。配信でもすぐ聴けるようになりますので、みなさんもぜひ。こちらが特設ページ(Sony Music Labels)。


THE MUSIC PLANT次の公演は、こちら。

Caoimhín Ó Raghallaigh クイヴィーン・オ・ライラ with 黒木千波留
7月24日(木)南青山曼荼羅 
19:00開演 ¥6,000(+ドリンクオーダー) 詳細はこちらへ