朝井リョウ『イン・ザ・メガチャーチ』を読んだ。面白い!!


ブックレビューがたまっています。

で、読みましたよ。話題の『イン・ザ・メガチャーチ』。まぁ、この本が話題だというのは知っていた。大ヒットしてるんだよね。

最初は買うつもりなかったんだけど、先日たまたま行った月島のちょっとイカす感じの古い書店で、いい感じのお父さんが店番をしていたので、ついつい何かを買ってみたくなり、いつもお願いする書店さんにまだ注文していないものはなんだろうと悩んだすえ、これにした。

話題の『イン・ザ・メガチャーチ』

で、帰ってきて、数ある積読本をよそに読み始めてしまった。

この本のことは、あちこちでレビューを読んだし、ポッドキャストなどでも読んだ人の感想を聞いていた。

なんというか「推し活」を軸に、いろんな人間模様、考え方、そしていったい誰が幸せなのかということが描かれており、いやー、とにかく今の時代が凝縮されている本だなというのが最初の感想だ。

あまりにも人物描写がリアルで素晴らしすぎて感動。わたし、普段、フィクション全然読まないから、こういう「上手な筆致」に弱いのよ。免疫ないから、一気に引き込まれた。

なんていうか、フィクションの文章うまい人って、すごい。レベルが違う。ある意味、文章力は素人レベルだったとしても、取り上げるテーマが充実してて良い編集者に恵まれれば誰でも本を出せちゃうノンフィクションの世界と違って、圧倒的にフィクションの人たちは文章力のレベルが高い。

物語の展開も面白いし。

で、もうわたしなんぞは、あっという間に夢中よ。そして夢中で、読んで、読んで、読みまくった。比較的長い本なのに、早かったわ。で、超盛り上がった、超クライマックス!!と思ったら、割とストンと終わった(笑)

これ、ほんと登場人物全員に感情移入しないではいられない、そういう本。今の時代と密接につながってて、「ちょっとまずいぞ」と分かっていながらもズブズブに入り込んでしまう。ファンダム経済を支える人の心境ってこんなことなのかな。

もっともわたしがリアルに知っている推し活の皆さんは、みんなこんな不健全な感じではまったくないんだけど。みんな実際、とても楽しそうだし、健全な感じだ。でもそれが行きすぎると、こういう世界もあるんだなぁ、と。

まぁ、とにかくすごい。のめり込む人、仕掛ける人、かつてのめり込んでいたけど今は妙な宗教に入り込んでしまった人…などがとにかくリアルに描かれている。

いやーー みんな悲しすぎる。悲しすぎるけど、これが現実かもしれないとも思う。これ、作者の朝井さんは実際にこういう人たちにリアルに取材してネタを集めたりしたのかな。とにかくすごいリアルだ。

全部、最近ニュースで見たよとか、最近こういう人いるよね、とか、そういうことにつながる、まさに「今」の小説だ。5年後だったら、また全然違う内容かもしれない。

そして、こういうことにハマる人たちの、特に自分の中の葛藤というか、自己矛盾みたいなものって、こういうふうに文章で、こんなに力強く表現できるんだ、と感動した。

例えば耳は友人たちのクールな会話を聞きながら、自分の心は全く別の思考をしている、みたいなシーン。

あれとかもすごい迫力だったよな。こうなんというか、時間や空間が妙に立体的に見えてきたり… この本、ほぼ間違いなく映像化されるんじゃないかと思うんだけど、映像化される以上にリアルだった。

そして、これまたちょっとこの本を離れた視線で見てみれば、では、これら登場人物の中の、いったい誰が幸せなのか?という疑問もよぎるわけで…。

いやー はっきり言って誰も幸せじゃない。ただただ疑問を振り払うようにして生きてるだけやん、と思ったり。

しかし「推し活マーケティング」の冷血なプロ(この人はおもしろくって、なんと性別・年齢もはっきりしないのだそう)によるファンの分析には笑った。

確かに音楽でも、本でも、映画でもこういうファンの人いる。ファンっていうか、言葉が悪いかもしれないけど「外野」ね。外野から、人を批判したり評価したりしている人。

それは「プロデューサー気質」「アナリスト気質」「学級員気質」「疑似恋愛気質」

これこの名前の羅列を見ただけでも、想像できる人は想像できるよね? くわしく知りたい人はぜひこの本を読んでほしいんだけど、とにかくよく分析されている。

わたしにとっては、すべてが「あるある」分析ではあった。もちろん、わたしの場合、仕事は自分の好きなようにやってきたわけで、こんなマーケティングなんて糞食らえだけどね(笑)
そのおかげで、ヒットも出ず、ウチは地味に終わったわ。はははははは(と、高笑い)。

確かに誰のファンになるにしても、こういうファンの人たち、確かにいる。そしていつだったかソウルフラワーの中川敬さんが言ってたみたいに、すぐ「あなたには失望しました、もうあなたのコンサートには行きません」とか言っちゃったりする。

ファンでなくても、外側から勝手にあれこれ言ってくる関係者もたくさんいる。人のやることに何か言わずにはいられない人。自分では何もやらない人。わたしはあなたの「ご批評」など聞きたくはありません、とわたしならはっきり言っちゃうけどね。

あ、話がそれた。

それはともかく、最近のアイドルやイベントのチャートやTwitterにおけるトレンドの盛り上がりって、なるほどこうやって作ってんだ、と、かなりびっくりすることも書かれていた。みんなでお金出し合って広告打っちゃったり、ファンの人たち、すごすぎるだろう。

いや、そうだろう、そうだろうよ。きっとそうだと思っていたよ。でもすごすぎるよ、推し活。組織票。ほんとメガチャーチ。経済と熱狂だ。

ほんと、この本にもチラチラ書かれているように、自分で選ぶ自由が、多くの人にとっては苦痛なのかもしれないと思う。疑いながらも、そこに突っ込んでいく方がなんぼか楽なのだ、と。

朝井さんの文章で、「視野は広げれば広げるほど、どんどん自分がみんなから遠くなっていく」みたいな表現があって、すごいなぁ、と唸る。こういう言葉が読んでいていちいちズンズンと響く。すごい、うまい。文章、うまい。人間社会の描き方、するどい。ほんとすごい。

なるほど、視野をわざと狭める。

我に帰らないように、と。嘘でもこうなんだって強く思い込む。わざと信じ込む。

何かに夢中になっている人、変な宗教にすがる人、推し活にのめり込みすぎてお金を使いすぎちゃっている人、そして人間家系の距離感がバグってしまっているおじさんなど、みんながみんな悲しすぎる。

しかし、わたしも同情なんかしてられない。だって彼らの危うさは、自分の中にも間違いなくある要素だから。

ただわたしにとっては夢中になっているのが仕事だったってだけで、ただただラッキーだった、ってだけで。そして自分はそれなりに幸せを感じているけれど、もしかしたら違うのかもしれない。…とふと我に帰る。

もしかしたらわたしの視野も、めちゃくちゃ狭いのかもしれない。ほんと怖すぎるでしょ、それ。でもそういう危機感はいつも持っていないといけない。

しかもこの出てくる悲しいおじさんが、音楽業界人なのが、なんとも!! 離婚した妻と生活する娘との距離感はぎこちなく、雑談ができないおじさんの典型。出世してヒットの真ん中にいる元同僚に久しぶりに連絡をもらい、ちょっと浮かれる…とか。痛い。痛すぎる。

自分は今はバックオフィスで総務みたいな仕事をしているんだよ、と。そしてふざけた部下との距離感は絶妙で、失礼なやつだと怒りつつも、ウンと年下の彼に言われることにドキッとしてみたり…。最後は破滅だよね。でも、彼はもしかしたらそれで幸せなのかもしれない。最後の彼の展開はいわゆる「Woke ウォーク」なのかもしれない。

他にも、バイトをしている女の子の気持ちのところとかの描写もすごい。仕事のできる何々ちゃんはすごい。彼女がいないと店は回らないのに本社から来る給料の高いやつは、何もできないのに威張って腕組んでる、とか。

ウォークしちゃった友達からの視線が怖い、と。だからスタバやマックには行けない、自分はインターナショナルに留学したいと言ってても、それはなんか違うと思う…とか。本当の自分は違うのに、と。

いやはや、ほんととにかく登場人物がいかにもという感じでリアルすぎるんだ、この本は。

あ、そうそう、「みんな自分を余らせたくないんです」ってのも響いた。どんなパターンの人生を歩んでも、視点を変えれば全部マイナスな要素があって、何もかも簡単にひっくり返ってしまう。そんな世の中。

そんな中で、自分は絶対に損をしたくない、そういう感覚なのかな? つまり自分というリソースを使い切ったものが勝ち、ということなのではないか、と。この本は問いかけてくる。

となれば、何かに夢中になれるということだけで、かなり人生の成功なのかな。いやー すごいわ。すごい表現だわ。(いや、違うだろう)

そうそう、ファンの人たちのオフ会的な集まりも笑った。リーダー格の人がいて、その人は若くはなく「お母さんよりちょっと年下くらいだろうか」なんて書かれてる。リアル!!! こういうファンダムの自主面倒見役、本当にリアルにいそう!

しかしすごいなぁ、こんな、まさに「今」の世の中が書かれた小説を、日経新聞読んでる人は連載で読んでたりするのか。なんかちょっとびっくりだった。

朝井さんって、すごい若いんだよね。すごいね。そういや彼のデビュー作『霧島、部活やめるってよ』は映画は配信で見たけど、原作は読んでない。原作面白いのかな。

さてさて、とはいえこの本を読んで、気分が滅入ったりした人は、こちらの本を読んでバランスを取るといいですよ。

この本を読んで、おめでたい私が改めて思ったのは、やっぱり人生において大切なのは「自由」だということだ。その自由を書いたエッセイ。自由を得るには日々の努力が必要なのだ。森博嗣さんの『自由をつくる 自在に生きる』。おすすめです。ぜひ。

そして最近読んだ、アドラー心理学をベースにした『嫌われる勇気』。『嫌われる勇気』については、近日中にブログに書きます。圧倒的な本でした。あの本を読めば、みんな幸せになれると思う。

◎1996年からかかげてきたTHE MUSIC PLANTの看板は2025年12月にて下ろすことにしました。公式サイトは近日中にアーカイブ化する予定。

主催公演や招聘はもう行う予定はありませんが、2026年も若干雇われお手伝い案件(笑)があるので、そちらはゆっくりとこなしていく予定です。これからはのんびりと。

宣伝の仕事は続ける「かも」しれませんが、まぁ、それはクライアントさんあってのことだからなぁ。どうなるかなぁ。年に1本くらいならやってもいいのかな…

この日記も自分のペースで続ける予定。fbページは適当なタイミングで閉じて個人アカウントに集約していきます。大好きなTwitterは以前と変わらない自分ペースで続けてます。1日平均30ツイート。はっきり言ってうざいと思う(笑)

◎で、さっそく2026年のお手伝い案件。

最近妙に話題のグリーンランドからナヌークがやってきます。2月24日に恵比寿のYEBISU GARDEN CINEMAにて、『サウンド・オブ・レボリューション グリーンランドの夜明け』を上映。

そしてそこでトークイベントとちょっとしたミニライブもあり。詳細はここ。MCは大好きなキニマンス塚本ニキさん。チケット発売は2月4日。劇場のサイトにて。

 

◎パンデミック後くらいから作曲家:日向敏文さんのお手伝いしております。昨年の6月25日に新作「the Dark Night Rhapsodies」がリリースされました。こちらが特設ページ(Sony Music Labels)。アナログ盤と、ピアノ小品集の楽譜は日向さんのサイトで通販中


◎その日向さんは、91年の大ヒットドラマ『東京ラブ・ストーリー』のサントラを手掛けていたわけですが、そちらが2月に35周年記念のリイシューされることになりました。詳細はこちら。

◎ショパンコンクールのドキュメンタリー映画『ピアノフォルテ』のPRのお手伝いしております。東京での上映は一旦終了しましたが、これから公開になる地域もあるようです。みんな見てね! 公式サイトはここ

◎アイルランドのフォークホラー(?)映画、2月6日公開。 映画『FRÉWAKA フレワカ』詳細はこちら