すごいヒットしているということで、話題のこの映画。私は実はあまり日本の映画見ないんですよね。
なので当初は行く予定はなかったのですが、実はこの映画に比較的否定的な意見を複数見て、俄然行く気になり、ついに見てきました。はい、私は天邪鬼体質です。でも否定的な意見、少ないですよね。
カンヌうんぬんの記述があるけど、カンヌからはある意味一番離れたところにある、わかりやすい、物語がはっきりしている映画。(褒めています)
で、よくよく観たら、どうやら、カンヌはカンヌでも本体ではなく「監督週間部門」だったらしい。
ちなみに映画に行く数日前に「私はこの映画好きになれますかね」と自分のfbで友人たちに投げてみた。そしたら、すごい皆さんから貴重なご意見を多数頂戴しました。ありがとう、fb友!!
ちなみにfbの方にいただいた意見はのきなみ、この映画を褒めるものでした。というか、この映画否定的なことを言えないくらいのヒットになっちゃった?
で、私の感想はというと、結論から言うと「否定的な意見」(ひとつのポッドキャスト、ひとつのブログ、ひとつのネット記事)にも、自分のfbにいただいた意見にも、ご飯会で伺った意見にも、まったくもってすべて同意!しました。
というと、安直ですが、実際そうなんだから仕方ありません。
特に聞いた感想の中で一番自分と共鳴したのは「これは監督の作品」だということです。監督は李相日(リ・サンイル監督)。(私は「フラガール」を配信で見たのみ)
なるほど、「監督の作品」というのは、この作品を端的に言い当ててる。監督の要求に、素晴らしい俳優たちが全力で答えた。これはそういう作品です。
そして映画は…3時間という長尺にもかかわらず、最後まで一瞬も気を抜くことなく楽しめました。かなり面白かったと言ってよいでしょう。すごい作品であることは間違いありません。
実は映画を見た日は、事情があって、前の晩2時間ほどしか眠れず、体調も気分もあまりよくなく、絶対に寝てしまうよなと思いつつ映画館に入ったのですが、それにもかかわらず、もうバッチリ。しっかり映画に集中できました。
この映画をまだ未見の人に言うならば、3時間のエンタテイメントとして、これはたいそうな作品である、ということです。その点を否定する人はあまりいないんじゃないかな。
また最近の映画は、日本のものでも外国のものでも、なんでもちゃんと見ていないとすぐに登場人物の誰が誰か物語のコンテクストがなんなのか見失ってしまうくらい複雑なんですが、この映画は、そういった難解さもなく、なんというか、すごくわかりやすいドラマチックな展開ではある。
ただし若い俳優さんは…これは本当にごめんなさい…男子でも、女子でも最近の若い人は、私にとっては見分けがつかず、あれ、どっちがどっちだっけ…どの子がどっちの子と付き合ってんだっけ…となってしまうバカな自分が悲しすぎました。
あとでググって知ったのですが、主演の子はなんか飲酒トラブルでニュースになってた子だよね? でも、それを思うと、トラブルはトラブル、昨日は作品だよなと改めて思いました。
確かにバカで軽率なトラブルだったかもしれません。でもあれは悪意のある犯罪のレベルの事件ではないし(確かその隣人の理解で不起訴になったんじゃなかったっけ?)、もしこの超大作品があの事件のせいでお蔵入りになっていたとしたら、それは映画界における取り返しのつかない損失であることは間違いないです。
話がそれた。しかし。それにしても若い子の顔がよくわからない。どうやって、特に綺麗な子たちの顔を見分けるんだ?? ある意味個性的なお顔であれば、見分けはつくのに! ヘアスタイルが大きく違えば見分けがつくのだが。
でも思えば、私はトレンディドラマが流行っていたころから、人の顔が見分けられなかった。
やばいよね。リアルでも、私、ミーティングとかでも1時間打ち合わせした人の顔すら覚えてないことが多い。次のミーティング時にはその人の顔忘れてたりするくらい物覚えが悪いから…(だから帰宅すると、その人のことをfbで検索し、すぐ友達になっておくのだ。じゃないと忘れちゃうから)
あと、最近は若い男の子は大人になってからもヘアースタイルを変えるのだ!! あれは驚愕。男の子でヘアスタイルを変えたり、女の子でメイクの仕方変えると、もう見分けつかない!!
話がそれた…
そんなバカな理由もあって、特に好きだったのは(すでに顔をしっかり覚えている)渡辺謙と寺島しのぶが演じる夫婦でした。あの二人、安心して見ていられる。
特に寺島しのぶは、この役は彼女自身の背景も含めて、ゲットすべくしてゲットしてると思いました。素晴らしい女優さんです。
田中泯さんが、まぁ、毎度のごとくあちこちで絶賛されているが、あの感じの泯さんは「メゾン・ド・ヒミコ」ですでに私は体験済み。
泯さんはセリフがない方がかっこいいという説もあるけど、今回女方特有の喋り方ということもあり、そんなことは難なく超えた気がする。(私ったら、名優さんになんで上から目線…すみません)
でもご本人がインタビュー等で語っているとおり、ある意味歌舞伎とかいって泯さんの踊りからはもっとも遠くにある存在。だから確かにこの映画が泯さんを得て良い結果を得たのは確かだけど、それは泯さんにとってはどうなのかと思ってしまった。
それにしても、この映画。ハマって、何度も見ている人が多いと聞きます。
「何度でも見たくなる」思うにその原因のひとつには、あの画面の美しさに原因があるのではないかと思いますね。映画館でないと体験できない圧倒するような画面。
特に舞台のシーンは、どれもすごい。撮影はチュニジア系フランス人とのことで、なるほどなと思いました。
あとちょっと言い方悪いけど、もう一つの「何度も観る」の理由は、好きな漫画を何度も読むような感覚と同じかな、とも思います。ちなみに私も漫画は大好きです。『日出処の天子』『オルフェウスの窓』『ポーの一族』などは何度も何度も読みました。
お話を知っているのに、何度も観たり読んだりするのは、細部を味わいたいからだよね。気持ち、わかる、わかる。
ちょっと突っ込みたくなったのは、泯さん演じる国宝役者さんの最後。国宝になれば年俸もらえるわけで(少額だけど)それであの暮らしはないだろう、とちょっと思いました。
「いや、違うんですよ、野崎さん、彼(彼女?)はあえてあぁいう暮らしを選んでいるんですよ」と言われそうだけど…。だとしたら、理解が浅いよな、オレ。
っていうか、そうだったらリアル田中泯さんのごとく街中ではなく、山の中のもっと自然が豊かな場所に籠るのではないかな、とも。これも余計か。
あと歌舞伎だというのに、本丸の松竹がまったく関係ないところで、この映画が存在しているのが素晴らしいと思った。というか、だからこそ映画化可能だったのかも、とも。
その辺をついつい想像したり勘ぐったりするのが私は大好き。その辺の裏話を書いたノン・フィクションでもあれば、飛びついて真っ先に読んで、感想をブログを書くタイプです、私は(笑)。
そうそう、大興行主と、その番頭的な立場のおじさん二人も味わい深かったですねー。そして、その大興行主の保護の傘の下からはずれると、こんなに役者としてのステージ事態も落ちてしまうものかというのも、びっくりでした。
まるで芸能界じゃん。あっ、芸能界か、これ。現実の歌舞伎の世界もそうなんだろうか。そうなんだろうな、きっと。それにしても日本人は権威が好きである。あ、これは余計か。
よくわかってませんが、つまり松竹以外は、すべて無名の大衆演劇ってこと? 歌舞伎って松竹の商標だよね?? 梅沢富美男とか、どういう存在なのだっけ。すみません、私、歌舞伎は外国人のアテンドで2回しか見に行ったことがなく、まるでわかっていません。
それにしても話は、そんなことは知らなくても全然大丈夫。すごく面白かったです。
登場する若者二人には、それぞれモデルがいるという説もあり、それについて書かれたブログを見たら、非常に面白かった。この映画にハマっているという人は、ぜひそっちも注目してほしい。(歌右衛門と玉三郎、そして三島の小説など)
そして、この映画の原作本は、まぁ、とにかくすごく面白いらしい。原作を知らずに映画を見にいった人たちは、だいたい原作本に向かっている様子。
どうやらもともと朝日新聞に掲載されていた連載小説らしいので、だから話がストーリー・ドリブンな感じなのかなとちょっと思いました。とにかく先へ先へと読ませる…みたいな。
朝ドラは「おしん」以来見てないし、大河ドラマは「黄金の日々」までくらい遡る…かも?
「愛の不時着」ももちろん未見。未見だから悪口は書かないでおくが、見なくていいと思っている。あ、観てないのに「芝居が大きい」は、ないよね。「芝居が大きそうだから、見る気になれない」が正確な説明かな…
と、まぁ、なんだかんだで、かなり長く感想を書いてしまっている。ということは、私もこの映画好きなのかも??
しかしまぁ、ものすごいヒットということで、何度も行っているという人が存在するのが素晴らしいし、あと、おそらく普段映画館に行かない人も映画館に行っているんだろうな、とも思った。
意外と多いんだよね、年に一度しか映画に行かない人。年に一度しかいかない、滅多に映画みない人、そういう人が見に行く作品なのかも。それは嫌味ではなく。
でも、年間1本だけしか見ない映画がこれだとしたら、それはそれでちょっと残念だなとは思う。
あと、私みたいな天邪鬼からすれば、お金と時間をたっぷりかけた大作でしょ、という偏見は避けられないくらい大きい。
とはいえ、本作は、やっぱりそこに加えて作っている人々の「愛」がなければ、行けない領域に行けている作品ではあることは間違いわけで、そう言う意味では大拍手を送るべき作品。(あ、また「べき」とか書いちゃった)
いや、こういうのがなかったら、もう日本もまずいわけで、こういう作品はもう日本の資本ではできないよ、という危険は、十分すぎるほど近いところに存在しているわけで…
『鬼滅の刃』とかもすごいらしいし、なんか最近のヒットって、でかいものが極端にでかくなり、小さいものは小さくひしめきあっている…そういう傾向にあるよなぁ、と思うけどね。
◎2年前にレコーディングした無印良品BGM29 スコットランド編がやっと公開になりました。良かったら、聞いてください。プロデュースはLAUのエイダン・オルークにやってもらいました。現在無印良品の店頭で聞くことができますし、配信でも聴けます。