映画『どうすればよかったか?』を見ました。すごかった。すごい作品だった。

 


すごいもん見た。すごい映画だった。ものすごいパワフルな作品。本当に感想はタイトルそのもの。では「どうすればよかったか?」

誰も彼らを責めることはできない。自分だってこういう状況に巻き込まれるともかぎらない。正常な判断力? そんなものに自信がある人っているのだろうか。

映画が終わってボーゼンとした空気の中、一人で帰宅してきて、まだこの映画のことを考えている。

ただこれに尽きる。「家族のために個人が犠牲になってはいけない」

一人一人が幸せにならなくちゃいけない。家族という閉鎖された空間で、誰もが自分の幸せを見失っている。それとも自分の人生を諦めているのだろうか?

実は、頭10分ほど上映に遅刻して見れなかったのだけど(失態!)、いや、いったん見始めるとまったく目が離せない。ものすごい作品だった。

統合失語症の症状って、こんな感じなんだ…というのが、そもそも直視できないくらいつらい。あと北海道の訛りがあるのか、両親の言葉はよく聞き取れないし、理解できない。撮影は特に初期のころはかなりの素人で、音声がクリアではないこともある。

ただただ家族のリアルな姿に見入るしかない。そしてなんとかこの状況を冷静に客観視しようと試みる。

この映画が伝えていることは、ものすごい。内容はあちこちで語られているので詳しくかかないが、簡単にいうと統合失調症を発症したらしい姉は医療にかかることなく放置され、しまいには家の中に監禁される。

それが25年も続く。どんどん年月がたって、ついにお母さんに認知症の症状があらわれはじめ、いよいよこれはたちゆかないという状況になって初めて、姉は病院に入る。(映画を観ている方としては、ここは唯一ホッとできる瞬間だ)

そうして、オチは書かないが、あーなって、こーなって、そしてあーなって…。結果、振り返れば比較的短い生涯のほぼ半分を監禁されて過ごした…という結果になった姉の生涯。

統合失調症については、松本ハウスさんのこの本を読んだくらいで、私は大した知識はない。あの本も実際すごかった。実際、患者さんの多くが、現在では症状をコントロールし、しっかりと社会生活を送れている人もたくさんいるのだそうだ。

医療の力はすごい。実際、この映画でもお姉さんは3ヶ月であっという間に退院し、症状は劇的に改善されている。

松本ハウスの方の本にも書かれていたが、地獄から生還した人の話によれば、患者の症状が出ていると周りも辛いけれど、本人はもっと、ものすごくつらいのだそうだ。

そして、問題解決は、どんな問題にでも起こりうるのだけど、まるでボールを投げる時のように一度出だしの角度を間違うと、時間が経った時、その角度の差はうんと大きな結果になるように、問題の結論は取り返しのつかない結果となってしまう。最初の角度が大事なんだ、最初んの角度が。

間違わない、なんてことは誰にもありえない。ただ少しずつ修正しながら、なんとか正しい(と思われる)場所に着地するよう、なるべく最短距離でいけるようがんばる。けっきょくはそれだけなのだ。

お姉さんとお父さんが花火を見るシーンはよかったし、かなりほっとした。しかし、かと思えば、また騒ぎを起こして警察ざたになったり、最後の最後まで、まだ論文の話をし続けるのかよ、という父…など、いや、本当に辛い。

お姉さんの人生を俯瞰してみたとき、監禁されていた25年というものの長さ、そして重さが沁みる。

こういう問題や状況が自分や自分の家族におこった時、果たして自分は強力に介入することができるのだろうかというと、たぶんそれはとても難しい。こういう時は巻き込まれないように距離を置く。それしか自分の生還する道はないと私は思う。

介入し、コミットすることを決断できる人は強い人だ。人間、誰も強くなんかない。

そして、間違ったと思ったときに、このボール投げの角度を修正する力が渦中の誰かにあるかというと、とても難しい。監督の気持ちは痛いほどわかる。最後、お父さんにあれこれを説明する監督のかしこまった、でも優しそうな丸い背中がとても印象的だった。

本当に生きるのって、難しい。そういう感想だ。そういう映画をまた見てしまった。バランスをちょっとくずしただけで、こういう間違いを自分が犯さないかの保障はどこにもない。

東中野ポレポレにて上映中。ぜひ観に行ってください。予約必須。私が行った日は全回ソールドアウトでした。


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