「聴く」ことの美学

この映像はアヌーナのオフィシャルYou Tubeにあがっているアヌーナのコーラスワークショップの映像@焼津。私が通訳やってます。この日はスタッフがいなくて、あまり時間もなかったので急遽頼まれて焼津に日帰りしたんでした。マイケルやアヌーナのメンバーと、ちゃんと話したのは、確かこの日が初めて。私はプロの通訳ではないので、私の通訳はひどいけどマイケルの言っている内容は本当に素晴らしいよね。あぁ、しかしちゃんと訳せてない。字幕つけたい。あとで字幕付けやらしてもらおう。ケルティック・クリスマスのコンサートが近くなったらプロモーションにもなるし。


最後の方でマイケルが言っている事が素晴らしい。ワークショップの最後の実検で「1回目はしっかり歌って、2回目はほとんど声を出さないような感覚で歌ってみて」と言う。

す・る・と……

なんと2回目に歌った時、周りの歌が急に聞こえるんだよね。つまりそれまで自分が歌うことに必死だった生徒さんたち。この瞬間、急にこのワークショップの意味は「一緒に歌うことだ」と自覚するわけですよ。

そうやって「コーラスというのはこういうもんだ」ということを私たちに教えてくれるわけです。その瞬間といったら、ちょっとした感動でした。実は「コーラス」って歌うんじゃなくって「聴く」芸術なのです。ホント、マイケル素晴らしい。

で、ウチのヴェーセン。ヴェーセンも実は「聴く」という事が非常に大事な位置をしめるバンドだと言うのを言いたくてアヌーナの映像も紹介しました。実はいつだったかウーロフがいないときにミッケとローゲルと飲んだ事がある。二人は言ってた。ウーロフほど、ものすごいメロディプレイヤーは他にはいない、と。でも二人は実はステージで、ウーロフは自分たちの事を聞いてないんじゃないかと思う時があると言う。反対にミッケとローゲルはウーロフが聞こえなくなると、もう自分がどこにいるか分からなくなっちゃうんだって。面白いでしょ?

本当にヴェーセンって面白い。3つの楽器が平等に面白く、平等なヴォリュームで鳴っているから、ヴェーセンの音楽は正三角形だと思っている人が多いと思うんだけど、実は違うんだわ。実は二等辺三角形なんだわ。

そして、またこれは別の時にウーロフと二人だけでいて話したこと。ウーロフも、なんかこう勝手に弾いてみたいと思うこともあるらしいんだけど、やはりミッケとローゲルのことを考えないといけないと言っていた。で、あっちの二人が輝いている時が、自分が一番かっこ良く見える時なんだよ、と。

うーん、ホント面白いよ、ヴェーセンは。こうして考えてみると、実はちゃんと他のメンバーの音を聴いているバンド・アンサンブルは非常に少ない。例えばルナサ、アルタン、ダーヴィッシュ、ラウー… あの辺のバンドは、バンドの成り立ちがそういう構造じゃないんだよね。でもヴェーセンは違う。そしてさらにマーティンとデニスは言わなくても分かるよね。あのデニスの動きはマーティンを、自分の全神経を総動員して聴いていないと、絶対にできない。

それにしても、特に日本の下手なバンドを聞いていると、多いのが、この「相手のことを聞いていないバンド」だ。そういうバンドはつまらない。自分のエゴだけで走って音楽を無視している。バンド内の他のメンバーに惚れてないから、そういう事になるんだよね。そして、そういうバンドはアンサンブルが弱い。全員のテンポがあっているとか、ドラムの上に全員が上手に乗っかっていれば良いとか、そういうものじゃないのだ、アンサンブルは。

ま、これでも聞いて,勉強しませう(笑)