5月 フィンランド伝統音楽の巨匠コンサート

今日、わけあってマリア・カラニエミの前回の来日の日程を正確に調べる必要性に迫られ、過去のブログを検索していたのだが、自分で書いたこんな文章を見つけた。我ながら、めっちゃ面白い投稿! というわけで、再掲する。

2010年の秋、私はめっちゃ幸せだった。かねてからの憧れJPPを日本に呼べたからだ。その前の年にホントにウルトラC中のウルトラCで、アルトとティッモが参加するノルディック・トゥリーが来日できて、その流れでJPPが呼べたのだ。JPPはフィンランドの西ボスニア地方カウスチネンエリアに生息する希代稀な本物の音楽家たち。ペリマンニを代表するバンドだ。ペリマンニって日本語に訳すると「農村音楽家」と呼ばれることが多いんだけど、まぁ、そんな感じだ。今や地球上の絶滅危惧種。アイルランドの音楽家たちとこれだけ仕事をしてきた私だが、本当の伝統音楽家は、私にとって彼等しかいないと思う。これが本物か…と感動した。

初めてJPPの連中を迎えるにあたって、以前から仕事をしているスウェーデンのバンド、ヴェーセンの連中にはさんざんからかわれた。ペリマンニはしゃべらない、とか。ミッケなどは「彼等同士が話しているところさえ見たことがない」とか話を大きくする。そう、ペリマンニのツアーは静かだ。最初一緒にツアーしたときは、いったいどうしたことかと思った。でも本当に心の底からあったかくなれるようなそんなコンサートツアーだった。またあのぬくもりが、この5月日本に帰ってくる。


というわけで、その2年前の自分の投稿…(笑)


本当にペリマンニはしゃべらない。余計なことはいっさいしゃべらない。そしてペリマンニはおそらく心の奥の方では「女子供に音楽が分ってたまるかい」と思ってい る。男女平等が徹底された(というか、どちらかというと女の方が強い)フィンランド社会においてペリマンニは特殊な存在だ。いつも黙ってとにかくもくもく とヴァイオリンを演奏する。例えばペリマンニ同士なら言葉など一切必要としない。ボウを手にとり一緒のメロディを奏でるだけで、喜びも悲しみもすべて共有 できるからだ。



たとえばこの曲。こういう曲はペリマンニにしか書けないんだよ。ほら、そことなく流れるユーモア。この音符のスイングする感じ。弾いているだけで笑っちゃうだろ? だけどペリマンニはそんなことをいちいちと口にして素人の連中に説明するのは格好の悪い事だと思っている。これ面白いだろなんて相手に確認したとたん、面白いものも面白くなくなるのさ。だいたいそういうのはペリマンニの美学に反するんだよな。ユーモアは分る奴にだけ分ればいいんだ。

などと思いにふけっていたら、「ちょっっとっっ、あんた何やってんのよ! 今日の料理当番はあんたでしょっっ!」と妻の怒号が部屋の奥から聞こえる。そうだっけ。ウチの父の代はそんなことはなかったのだけど、今のフィンランドでは家事をちゃんと公平に分担しないと離婚されちゃうんだったっけなぁ。現代のペリマンニにとってフィンランド社会は必ずしも居心地の良い場所というわけではないのだ。しかたがないのでヴァイオリンを置いて、ペリマンニはいそいそと台所へ向かうのであった。

……とペリマンニが心の中で思っているかは、誰にも分らない。何せペリマンニはしゃべらないから。この物語はフィクションです。

ペリマンニの美学に触れるなら、JPP、そしてノルディックトゥリーの音楽がおすすめです。が、この物語はメンバーの中の特定の誰かをモデルにしたわけではありません。



はぁ〜ペリマンニ。アルト、ティッモ早く来ないかなぁ! 本当に心あたたまる人たち。先週までいたロックシュターとはまるで違う。柔らかな空気(笑) 早く会いたい。詳細はここ。東京と札幌で公演があります。