2012年10月30日火曜日

マーティン・ヘイズの哲学 8

「アイルランドに住んでいると、そういう事がはっきりと見えないかもしれない。でもシアトルに住んでいれば、伝統音楽についてのこういった問題が、いかに閉鎖的なもので、かつ、僕が時々呼ぶように“文化的ナショナリズム”によるものか分かる。それは混乱しがちだし、それでもある意味、伝統音楽が明確に提案しているのは、僕らのアイデンティティであるだろう。が、別の意味においては、とにかく純粋に音楽なのだという事だ。だかこそ、国民的なアイデンティティが、創造的な音楽の表現の力には、相容れないことも出てくるのだと思う」

「僕は純粋に音楽のことだけを考えたいと思う。今、僕たちアイルランド人のアイデンティティは多様なものだと世界的に認められている。もちろん僕らの音楽が僕らの国民的精神のよりどころ、もしくは僕らの過去を反映していないとは言っていないよ。しかしながら、僕が思うに僕らはまるで音楽を手におえないティーンエイジャーみたいに扱っているように見えるのさ。伝統が何かというものの統計的な概念に無理にはりつけて、わざと独立を与えようとしないようにしている。まるで独立前のティーンエイジャーの連中を拘束するかのように」

「たしかにそこに恐れはある。たしかにアイルランドという国はこの音楽を作ってきた。育てても来た。そして今や伝統音楽のリバイバルまで実現させた。しかし今や僕らはこれらの音楽を作った文化的な背景すら持っていないわけだ。周りの環境はこの音楽が出来た当時とだいぶ変わってしまった」

「世界中のワークショップで教えて来たが、エニスの人々もピザを頼んでCNNを見る事が出来ると生徒たちに説明するのは辛い。実際これら海外の生徒たちは最新の録音を手にいれ、インターネットでチャットをし、雑誌を定期購読し、夏になるとウィリー・クランシーのサマースクールに毎年参加する。彼らはクレアにいる演奏者と同様によく情報を手に入れ、気持ちもとても彼の地に結びついていると言えるだろう。統計的なデータは何もないのだが、おそらくアメリカ、英国本土、オーストラリア、カナダ、日本など世界中に散らばる伝統音楽のミュージシャンは、アイルランド国内にいるよりも多いのではないかと感じている」

「僕は時々、アメリカのジャズ音楽の発展と伝統音楽を学ぶことを結びつけて考えている。アイルランド音楽も似たような道をたどっているように思える。単に向こうが数十年早かった、というだけで…」

「例えばメインストリームのメディアはジャズを知的に不十分な音楽として扱っていた時期があった。でも今ではそれはとても広い範囲の人に受け入れられている。今、多くの音楽学校にはジャズが学べるコースがある」

「そこで問題なのは多くの演奏においては、表現の深さが欠けている、ということなのだ。ジョン・コルトレーンみたいに演奏できる人もいるかもしれない。が、そういった人たちでさえコルトレーンが巡った旅路を巡った人はいないだろう。だから結局同じようには聞こえない。最近のアイルランド音楽のバンドがボシーバンドと同じように聞こえないのはそんな理由からさ。今日のステージに、キョールトリ・クーランを上げたとしよう。それは当時と同じようにに素晴らしい響きはしないだろう。なぜならそれらは新しい地平を超えていないからだ」

「音楽の発展を本当に理解したいのならば、彼らの創造の最後にあるプロダクトではなく、その過程にある洞察力のある魂と、創造的な想像力を手に入れないといけない。コルトレーンやオ・リアダに匹敵する創造的な想像力だ」

「彼らの制作物から得られる結末を描くよりも、芸術家として、彼らが彼らの前には存在していなかった道をどう歩んだのかを理解する事の方がずっと大事だと僕は考える」

下に貼付けた音楽はマーティンたちの超名盤「The Lonesome Touch」より、デニス作曲の名曲。コンサートでは絶対にやらないんだけど、大好きな曲の一つ。それにしてもすごいアルバムなんだよ、「The Lonesome Touch」は。会場で販売します!


<マーティン・ヘイズ&デニス・カヒル来日公演>
11/3(土)トッパンホール with 田辺冽山 当日券あり 18:30開演
11/5(月)小諸高原美術館 白鳥映雪館 18:30開演
11/6(火)名古屋 秀葉院 当日券あり 19:00開演
11/8(木)京都 永運院 当日券あり  19:00開演
11/10(土)松江 洞光寺  18:30開演
小諸、松江公演の当日券については主催者あてお問い合わせください。

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