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2013年6月26日水曜日

LAU ライブレビュー @ 梅田クアトロ

関西でラウーを目撃した友人がmixiでライブレビューを書いてくれたので、許可を得て転載いたします〜 ありがとう、Sさん! 



前作のアルバム「アークライト」は聞いていたんだけど、最新作も出ていたことも知らなかったような体たらくで、ライブを見るのも初めてだ。

まず、出音を聞いて意外だったのは、純然たるアコースティック、っていうライブの音作りじゃないってことだった。
フィドルとアコギはギターアンプに直結されていて、別に電気的に変調させるわけではないが、そこから出ている音を更にPAでもラインとマイクで 拾って出している。アコギにもフィドルにもコンタクトマイクが付いていたけど、あれはPAに回してるのか、あそこからアンプに入力してるのかは分からな かった。

アコーディオンに至ってはもっと徹底していて、かなりの数のエフェクターを通し、サンプラーにも直結されていた。モニターは彼のみ、両耳のイヤモ ニを使用していた。ボディを叩いて出した音をサンプラーで回してリズムにしたり、鍵盤を押さずに蛇腹を広げたり畳んだりしてまるで溜息のようなノイズを出 し、それをループで回したり…、かなり色々なことをやっている。 

更にボディにカシオトーンくらいの小型のキーボードが強引に接着されている。アコーディオンは左手でベイスにあたる低音のボタン、右手で鍵盤を演奏するものだけど、右手で小型シンセを弾きつつ蛇腹を動かして低音はそのままボタンで演奏、みたいなこともやっていた。
更に、小型のムーグも傍らにあり、時折ツマミを弄っては電子音をまき散らしたりもする。マックブックも見えたけど、エフェクトのプラグインか何かかな。
とにかく、彼の飛び道具だらけの音作りってのにいちいち目も耳を奪われる。まるでザ・バンドのガース・ハドソンみたいなもので、一見アーシーな演奏をするのかと思いきや、シンセでおならのような音を入れてくる、というあの異様にスプーキーな味を持っている人だ。

楽器はアコースティックだし、アコーディオン以外は演奏の方向もアコースティックだけど、音作りはアコースティック的なシビアさではない、というバランス感覚。
これが、そのまま演奏のキャラクターにも直結していた。

確かに彼等はトラッドとかフォークというカテゴリーに入るんだろう。だけど、伝承曲をきっちりやるタイプのバンドではない。自作曲も多いのだけど、それがトラッドの要素をまっとうに引用しつつも、遙かにコンテンポラリーなところに落とし込む体質だったりする。
いわゆる真っ当なトラッドのグループだと、「良い演奏を聞いた」印象が残るものだが、彼等の場合それ以上に「いい曲を聴いた」印象の方が強い。それは、トラッドのメロディやリズムを使いながらも、もっと自分たちなりのものを作ろうという意志が強いってことだろう。

伝承曲をきっちりやるグループは、スピードがあるダンス曲をやったりしても、とかくクラシックの室内楽的な硬質さが漂うものだけど、このバンドはもっとラフだ。
本人達の意識がどこにあるのかは判然としないけれど、楽曲にグイグイ没入し始めると、確実にロックっぽい熱が全面に出てくる。特にアコーディオン のマーティンは、全身でぐらぐらとリズムをとり、指運もどんどん怪しくもつれていく。演奏の精度でいうと、批判がおきてもおかしくないくらいに荒くなる。 しかし、速度とエネルギーを注入することを一切やめない。つまりは、丁寧に曲をやる、という以上に大事なことがある、ということなのだろう。

楽曲にしても、美しいメロディがあり、勇猛に暴れる演奏があり、押し引きの効いた構成でドラマチックに展開する構成があり、沢山の切り口と味があって、いちいち新鮮に響いてくる。
しかしながら、それが単純に「ロックを足しました」「テクノみたいな反復を入れてます」みたいに、他のジャンルの要素を孫引きして足したような感覚はない。雑多な音楽性を持ってもう一回トラッドに戻っていくような律儀さを持ち合わせている。
その新鮮さと律儀さがせめぎ合うのが、格好いいのだ。

アルタンなどの学究的なグループはたしかに素晴らしい。だけど、40分も聞いていると正直もういいか、と思ってしまうクチであって、自分がルーツ・ミュージックの聞き手としては良くない方であるという認識はある。
だから、このラウーとかアイルランドのキーラとか、カナダのソーラスみたいな、伝承に自前の味を強引に加えつつも、一般的なポップスまでには行かない、という適度な「濁り」があるバンドこそ、大歓迎だったりする。

彼等のユニークな持ち味がレコード以上にストレートに堪能できた素晴らしいライブだった。しかも、このバランスの演奏は今の時期だけの持ち味にな るかもしれない。音楽性がぐっと変わることだって十分考えられる。そういう生ものとしての貴重な一期一会の空気も大いに感じられた。

ちなみにマーティンはMCで「Yesterday,I saw craziest music I ever heard!!」と言っていた。どういう事かというと、このクアトロのライブの前日、クリスとマーティンは先日共演したタブラ奏者のU-zhaanさんの お勧めで、難波ベアーズにライブを見に行っていた。

そのブッキングというのが、三上寛(!)、オシリペンペンズ(!!)、クリトリック・リス(!!!)のという、ある文脈においては豪華極まりない けれど、特にトラッドなんかを熱心に聞いてる人には訳が分からない…どころか、知っていれば却って拒否されてしまうような極端な味わいを持つ人たちばっか である。
しかし、その極端な、しかも割と日本語の言葉による部分も多い表現をする三組のライブを大いに楽しんでる姿をたまたま目撃した。特にマーティンは場内で異常な盛り上がり。
この3組を無条件に楽しめる、という感性はちょっと凄いと思う。物珍しい、という理解では断じてない様子だったから。
ちなみに、ご一行はベアーズの翌日は文楽を見てきたらしい。何という落差と好奇心。

でも、あえてマーティンにもの申したい。「craziest music I ever heard!!」って、あんたも十分クレイジーだぜ!