ペッテリ・サリオラ、無事帰国しました〜 終わった!

さて、またもや恒例のツアー終わりウダウダ・ブログです。すみません。でも私も早く吐き出して次に行きたいので、とっとと書いて消えます(笑)

とにかく終わって、毎度毎度の「充実、空虚、幸せ、寂しさ」のミックスされた本当に複雑な気持ちです。アドレナリンがまだガンガン自分の中で分泌されているのが分る。いや〜ホントに楽しかった。ものすごくものすごく濃いツアーでした。

この仕事、注意深くウチが発信している内容をみれば常連のお客さんにはすぐ分ると思いますが、実はこれ私にとっては「雇われ仕事」だったんです。つまり自分から発生している仕事ではない、ということ。普段自分でゼロから真っ白なアーティストを売り出すことに誇りをもっている私は、正直あまり人の仕事をやるのが得意ではありません。だから最初はちょっと自分でも、この役目を果たすことができるのか半信半疑でした。

だからキングレコードのペッテリの担当ディレクターのN目さんに、ペッテリの事を紹介されたときは少し迷いました。でも、まぁフィンランドだし、音もいいし、前向きに検討するか…というのもあって、最初の打ち合わせへ出かけていったのです。確か今年の5月くらい。

N目さんが「ライブがものすごくいいんです」と強く言うのを聞いた時、そのミーティングの場で、このプロモーション方針が私の中ですぐに決まりました。下手に手打ちで公演を小規模でやってもショボくなるだけだから、ちゃんとした公演を作ろう。プロモーションは媒体取材をとにかくいっぱい入れて、最後にある程度の規模のショウケースを刺そう、と。その結果、私の出した提案にキングレコードさんが乗ってくれて、このツアーが実行に移されました。そしてタイミングもよかった。っていうか、タイミングがすべてだった。これが1ケ月後ろだったら、もう私のスケジュールは年内いっぱいいっぱいだったから。

ペッテリは以前、私が係る前にも来日しており、すでに4度か5度の来日経験があります。正直、今や各国が自国のアーティストが自国外で活動することを熱心にサポートする中、いろんなアーティストが良くも悪くもいろんなレベルで日本に続々とやってきてしまう。そして誰にも知られずそのまま帰国してしまう。果たして、そんな現状の中で私にどんな役割が出来るのか。自分があえて係る意味はなんなのか。

良かったのは8月、出張中にかなり無理してフィンランドに彼のライブを見に行ったこと。すっごく僻地で、正直辟易したけど、見に行ってよかった。ペッテリのライブはものすごく良くて、やっと自分の中の「やる気スイッチ」が入った感じ。っていうか、自分で確信もてないと人に薦めることなんか出来ないもんね。

出張はかなりキツい日程で、ほんとはヘルシンキでゆっくりしたいのに面倒だなーと思ったけど、早朝ヒースローからヘルシンキに飛び、電車に3時間半だか4時間だかゆられてラプアという街に到着した。ライブの後、立ち話だったけど、かなり長い時間二人で話しこんだ。ペッテリはバンドについてはマネジメントがついているものの、自分のソロ活動については、今は自分一人でやっている事もあって、正直話を聞くといろいろ大変そうだった。トラブルもたくさんある。この歳ならではの悩みもたくさんある。でもステージでは、そういうのを微塵も感じさせず、はじける。その前向きなパワーが私はとても好きだ、とその時も思った。

ホントに若い子と話すのは面白い。まったくもっていいアーティストとは、会話がいいんだよね。もちろんウチのポール・ブレイディもそうなんだけどさ。一緒に話したり悩みを、友達みたいにシェアするのは本当に楽しい。

何がどうした理由でこうなったのか。これはどういう事なのか。誰が仕掛人なのか。このやり方で間違っていないか。いやいや、大事なのは結果ではなくプロセスを楽しむ事、最短距離を探してばかりいちゃダメだ。あの人はこうだけど、実際はどうなのか、あー、私はよく知ってるけど悪口は言いたくないから他から聞いて、とか(笑)。でもこういう見方もあるし、こういう考え方もある。ジョブズも言ってたように点が存在していて、それがコネクトするのは後から振り返った時だけだ。その時には点自体にどんな意味があるのか分らない。でもthen again.... みたいな会話が本当に何度も何度も私たちの間で繰り返された。まだ29歳なのに、ペッテリは白黒だけがすべてじゃない、って分っているみたいだった。でもって自分では「自分はすぐ白黒つけたがる性格だから」って言ってた。すごい。私が29の時は全然ダメだったと思う。たぶんグレーでもほおっておけるようになったのは、ここ3年くらいじゃねぇのか?(笑)

ペッテリのおじいちゃんはフィンランドの伝統音楽業界でチーフタンズみたいな存在のすごい人なのに、ペッテリ本人にはまるでこだわりがない。おじいちゃんについては、また彼が何らかの新しいアクションを起こす時にまた紹介してきたいと思うけど、そういうドライさが本当にすごいと思った。

そうそう、ペッテリったらチーフタンズも知らないらしい。カルロス・ヌニェスのコンサートにつれていったら「こんなすごいもんは初めて聞いた」とびっくりしていた。

それにしても非常に頭のいいデキる子で、いろいろあっても、人の前ではそれをおくびにも出さないし、表面上は何事もソツなくこなしていた。私だったら単に自分のストレス発散のためだけに口にしてしまう事も、ペッテリはホントにプロフェッショナルに対処し、明るく振る舞う。ホントに健気で偉いと思う。

プロモーションのスケジュールはものすごかった。ペッテリは私たちの期待によく答えてくれた。前にも書いたけど、いつも「よく頑張ったね」って褒めると「チャンスをありがとう」って言う。最後の日にホテルのロビーでバイバイって分かれる時「明日、また朝7時にラジオのためにロビー集合でも、全然大丈夫だよ」なんて笑ってた。

そして私にとっても、正直、自分が頑張れば頑張るだけ、嫌な事もたくさんあった。いい事がたくさんある時は、悪いことや大変なこともその倍くらいおこる。自分のソロ現場じゃないから、普段とまるで空気が違う。今回はなんといってもアーティストだけではなく予算を出してくれているキングレコードさんもハッピーにしないと、このプロジェクトの意味がまったくない。

本当に書ききれない事が、人には言えない事が一杯ある。だから単に「こんな大成功のプロモーションは凄いですね」「こんなに盛り上がって、すごく嬉しいでしょう」とか言われると「お前になにが分かるんかい」と少しムッとしてしまうのだ(笑)

でも本当にいろんな時、私を芯からささえてくれるのは、私には自分のソロでやってる自分だけの、誰にも触らせてないプロジェクトが沢山あって、それが大成功とまでは言えないけどある世間から認められている、という事実だ。正直、今さら何故なんの関係もない他人に自分の何をインプレスする必要があるだろう。すでにウチのアーティストがすごいというのは多くの人が認めてくれている。そっちに自信があるから、こっちは別に100%自分のものでなくてもいいんだよね。

そしてホントにいつも言うけど、何も自分から行動を起こさない人に、いったい物事の本質の何が分るのか、っていうんだよ。自分でゼロから企画をたてた事のない人は、そういう物事の一番敏感な部分をまったく理解していないことが多い。それはフリーランスだからとか、会社員だから、という立場をこえて、いつも存在している。自分のアイディアを周りをまきこんで実現させたことがあるのか、ということだ。「自分が存在しなかった世界」と「自分が存在している世界」、その違いをどうやって出すのか、ということなのだ。それを存在意義とも人は言うけど…

ペッテリはそういうのを分ってくれるアーティストだ。それはなぜなら彼も同じようにいろいろ考えて自分で行動しているから。そういう気持ちとか、苦労とか、悩みを才能あるアーティストとシェアできるのが、この仕事の醍醐味だ。本当に素晴らしいと思う。前からペッテリについていた人から「今回の来日中は本人の態度も表情もまるで前回の来日と違う」と褒められた。そんなの話も、ものすごく嬉しい。

私たちはこの仕事を誰かに勝とうとか、誰よりすぐれている、とか言いたいためにやっているわけではない。ヒットも究極的に言ったら、キングさんには悪いけど別に必要ないのかもしれない。ただ聞いてくれるお客さんを少しでも増えて、本人がなるべく何度も日本に来れるようにしたいだけなんだ。

そして、今回ものすごく確信したことがある。この仕事は本当に面白い!ということだ。この仕事は本当に深い。この仕事は私に尋常じゃないパワーをくれる。本当に自慢したいのだけど、私はおそらくこの仕事に他の誰よりも向いていると思う。アーティストはみんな私にものすごいパワーをくれる。そしてアーティストがパワーをくれる時、私は普段できないことも平気で出来てしまう。

もちろん普段から身体きたえて、風邪ひかないのは当然だけど(笑)、ペッテリがギターを手にして自由を手にいれたように、私もこの仕事で、うんと自分を自由にすることが出来るのだ。

それこそツアー中はタクシーの運ちゃんしかり、いろんな世の中の「働く人々」に遭遇するわけだけど、本当にいろんな働き方があって、みんながみんな誇りをもって仕事をしているわけではないっていうのは、ちょっと気をつけて見ていれば、すぐ分る。本当に簡単な道も分らないようなドライバーさんもいれば、驚異的な知識のドライバーさんもいる。すごく気をきかせてくれるドライバーさんもいれば、全然気が利かない人もいる。本当にここに何度も書いているように評価されるべきは職業自体やそれにまつわる知識ではなく、その職業に対する本人の意識だと思う。

一人一人のそれが良くなれば、きっとこの世界はうんと素敵なところになるに違いないのにね。まさに最近亡くなったやなせたかしさんが言うように「人間が一番嬉しいのは、人を喜ばせることなんだ。世の中は喜ばせごっこで、お互いに得意な事で支え合って生きている」ってことなんだと思います。そして私には、小さいながらも、こういう自分を活かせる場が与えられているんだな、と。

ふふふ… なんだかんだで私もまだまだ自分のことでいっぱいいっぱいだな。ペッテリのこと書こうとしたのに、結局自分の事、書いてら。でもペッテリと話すことで、私も自分の中の何かが固まって変わっていくのがわかるんだ。そう、私たちはチームだ。

昨日のライブはものすごく良かった。でもペッテリは楽屋に戻ってきていろいろ言いたいことがありそうだった。そういうアーティストはいい。Star Pinesの小宮さんが(いつもありがとうございます)、アーティストはストイックなところがないとホントだめですよね、って言った。それがすごく心に残る。本当にそれは真実だと思う。

今朝、本人を成田へ見送って、家戻って来て3時間くらい倒れるように寝て、また復活して机に向かいこのブログを書いてるんだけど… ペッテリとあーでもない、こーでもないって本当にいろいろ話したのを、一つ一つ思い出したりしている。うん、でも大丈夫。もう私の中の方針は決まった。具体的なアイディアも早くも出て来た。とにかくあとは行動あるのみだよ。

あと今回やっていて思い出したことが1つある。私は自分ではじめてコンサートを制作した時、どうやってライブを作って良いかまったく分らなかった。でもケンソーの清水さんが「ライブをやりたい」って言ったから、何とかやれてしまったのだ。そうやって私の好きなアーティストは私は先に進めてくれる。あの経験がなかったら、CDが売れなくなっていた今、私は何をして生きていたのだろう。

少し反省したいのは、ここのところ、自分は自分の過去の成功体験をなぞることしかしてこなかった、という事だ。おそらくペッテリの音楽には私がもっている現在のカードはまるで通用しない。おそらく私も新しいカードを手にいれる努力をする時期に来ているのだろう。そういう気持ちに、もうすぐ50というこの時期になれることがホントにラッキーだと思う。ありがとう、ペッテリ。いろいろペッテリに教わったよ。私はまだまだこれからも頑張れる。正直、東京オリンピックが決まってからというものの、あと7年の間に海外脱出を考えないと…と思っていた時期もあったが、もう少し日本に留まってペッテリがビックになるのを見てみたいと思った。

最後にキングレコードのN目さん、S木さん、ありがとね。お二人と毎日会えなくなっちゃうのが寂しいです。良い出会いを与えていただいて本当にありがとうございました。今回は良い勉強になりました。何かあったらまた一緒に頑張ろうね〜 

さぁ! いよいよ次はこのアーティスト。この秋のMUSIC PLANTは若い男の子ばかりで、私は本当に嬉しい。このものすごいパワーを生で体験せよ! 来日の詳細はここ