目的地に行き着くまでの行程を楽しむ…とは?

またもやウダウダ・ブログ。

プロモーションのやり方をいろいろ考えた1週間だった。旅はどこへ行くかじゃない。目的地ではなく、行程を楽しむべきだ…みたいな話はよく聞く。そういう事を考えた。音楽業界、ヒットをさせること、一人でも多くの人に聞いてもらえること、なるべく長く続けること…目的はなんであれ、その目的まで「どうやって」行き着くのか。

先週/今週とえらい忙しかった。そもそもウチはツアーがないときは、週に3日か4日くらいしか外に出ず、ミーティングはまとめて行うというのが主義だ。というのも荒川土手はとても交通の便が悪いから。一度、街へ出かけたら用事はなるべく一度に済ませてくる。しかもこの小さな事務所を一人で回している、ということは、週に2日か3日はまるまる事務所にこもれる日がないと、とてもじゃないけど事務仕事が終わらない。

先々週も先週も、ひどい状況で、事務所こもりの日がなく、常に外出していた。となると、仕事がたまりまくるのだ。机仕事。メール書いたり、返事したり、企画書書いたりする時間。

先週はFINLAND FESTの延長というか、そういうイベントがある週で、フィンランドを中心とした北欧各地から大挙して取引先が押し寄せて来た。最近は海外の取引先でもFBとかマメに更新している相手であれば、東京で年に一度会うか会わないかという人と同じようなもんで、まったく距離が離れている気がしない。

みんなお世話になっている人たちではあるが、そもそもアーティスト本人とは、私の方が深く知り合っていたりもするので、こういうマネジメントさんとかレコード会社さんは、正直、あんまり意味がなく、最初から実態はカヤの外というのは良くある。

だから実際会ったりミーティングしたりするのは、いわゆる彼らの顔をたててやるための社交辞令だ。ちょっと冷たいけど。ミーティングを申し込まれれば、まぁ、会う。そして面白いのは実は彼らからの北欧のニュースではなく、彼らから聞く、同業他社の日本人のニュースであったりもする。日本に着てから昨日は誰に会った、誰は今、こんなことやっている、とか…そういう情報(笑)。彼らはマメですでに業界引退して、もうその人に会っても仕事のメリットないでしょ、みたいな人にまで会いに行く。

久しぶりにニュースを聞いた知りあいが、仕事をたたみ東京を離れ奥さんの田舎に引き込んだこととか、またもやアーティストやマネジメントと金銭問題を起こしている人が、またしょうこりもなく別の誰かと金銭問題をおこしていることとか…。まぁ、どこを見渡しててもエキサイティングな良いニュースは転がっていない。ホントいろいろ考えるわ… 普段あんまり気にしないようにしているけど斜陽の音楽業界をまざまざと感じる。

そして合同商談会に行けば、大レーベル同士がどうなったとか、契約がどうこうとかそういう話ばっかりで、みんな「それあんたに関係あるの?」「それあなたの功績なの?」みたいな話ばっかりで、正直しらける。でもこういう合同商談会みたいなところに顔出しておかないと、トラッド系の会社が来日しなくなっちゃうからね。古株の某氏などは「時間が短い」「各国の調整がなってない」と文句ばかり言ってたけど、でも、そうね、まぁレコード会社しかやってないとイベントの難しさみたいなものは分らないよね、きっと…と彼に対しても思う。各国の代表を調整し、取りまとめるのにどんなに時間がかかるものなのか。だから私はポジティブに受け取ったよ。みんな健気に良くやってると思うし。最近、ホント文句だけを言う人にホントに嫌気がさすのはここでも一緒。問題は行動力だよ、とまた思う。ま、そんな事すべてを含めてゲームである。これは音楽業界のゲーム。

それにしても普段小さな小さなTHE MUSIC PLANT村の面倒を見ていると、こういうところに顔でも出さないと、てんで大きな会社の人たちにも会わなくなってしまったな、とも思う。私にとって重要なのは、お客さんにどのくらい素晴らしい音楽を提供できるか、来日したアーティストに如何に満足感を感じてもらうか… そういう事だけだ。私にとって大事なのはTHE MUSIC PLANT村の幸せだけだ。それ以外には、まったく興味がない。

でも久しぶりに会う人たちは、結構ウチのブログとかホームページとか見てくれているらしく「野崎さんは頑張っているから」と褒めてもらえる。それはそれで気持ちがいい。さらに嬉しいのは走っていることを褒められる事! 普段は自分の村の幸せを満喫している私だが、今週、先週みたいにいろんな人と会い、特に具体的な取引先もないような業界内の知り合いのニュースも聞き、いろんなイベントに参加していると、ホントに音楽業界と一言で言ってもいろんな価値観が存在しているなぁ、と思うわけだ。それらいろいろに接するにあたり、勉強になるな、という事を感じるとともに、結局自分が普段いかに恵まれているか、ということに戻って行くわけだ。

こうやってコンベンションというか、北欧音楽業界、みんなが来日してプロモーションに勤めているわけで、偉いなぁと思う反面、その効果は一体どの程度のものなのか…とシニカルに思ってしまう。実はウチはこういうビジネスイベントで拾ったアーティストはたった1組しかいない。(でも他にヘヴィメタチームとか、成果が上がっているところもあるだろうから、一概には言えない。あくまで自分のケースです、自分の)

その1組でさえ、本当に偶然見つけたのだ。彼らの(当時の)マネージャーがブースを出していたのだけど、彼女は私にその数ヶ月後に来日する某シンガーのCDをプッシュしてきた。来日ったって、全然小規模だし、こんなのやっても誰も翌月には覚えてないよ、と。だからなんとなくボーーっと彼女のプレゼンを聞いていた。ところがふと彼女の机の隅を見れば、こんなにチャーミングなジャケCDが並べられているではないか。

それがこれ…
ふふふ、私も見る目あるよね、ホントに。その後、スヴェングは何度も来日したし、これからもきっとするだろうというアーティストに成長した。

つまり商談会、おそらく10回くらい参加して結果拾えたのは1アーティストだけである。アーティストに出会うのは恋に落ちるみたいなもんだ。そのくらい出会いがあることはマレだし、難しい。

だからこういう商談会みたいなプロモーションの仕方が実際どうなのかな、とも思う。でもこういう商談会は各国やっている。フランス、スペイン、いろいろ… 彼らは税金をつかっていろいろ仕掛けてくる。そうね、税金だものね。こういうやり方しかないのかも。いつだったかウチの某アーティストが民主主義で平均値をとるとホントに妥協のたまものの、つまらないものしか出来ない、って言ってたけど、まさにそれからもしれない。彼らは文化の輸出に多大なプロモーションをしかけてくる。私程度のコンサートプロモーターでも、どこどこのフェスに来ませんか、とか招待がある。でもそういうのにハマってしまって、つまらないものをお客さんに紹介しちゃうと、今度は私がお客さんの信頼を裏切ることになる。だからホントに気をつけないといけない。つまり、再び言うがTHE MUSIC PLANT村の幸せが犯されてはいけない、と思うのだ。

何度も言うが、ホントにプロモーションのやり方は本当にいろいろある。いろんな事例をみるにつけ、いろんなイベントに参加するにつけ、思うことは、……目的地に行く方法はいろいろある、そういう事なのだ、と。

私たち音楽業界にいる人間はヒットという目的に向かって頑張っているわけだけど、やっぱり重要なのはHOWということであって、どんな風に前進していきたいか、という事に尽きる。1万儲けたいのか、100万儲けたいのか、そういう事ではまったくない。どうやって、その1万を儲けたいのか、どうやって、その100万を儲けたいのか、そういう事の方が100万倍重要だ。

たとえば先週はポール・マッカートニーが来日していて、私のFBのタイムラインはポールの写真であふれかえった。その話を大きなイベント会社の人と話していて、彼が「実は僕、自分に関係ないアーティストってまったく興味もてないんですよね」と言っていたのに、超共感してしまった。私も実はまったく同じで、自分のアーティスト以外はほとんど興味ない。

つまり…私もこの発言をした彼も、おそらくこの仕事に驚くほど向いているのだ。私はすごいアーティストがいたら、絶対に自分も同じレベルになりたいと思う。それを実現するにはアーティストと対等に仕事をするしかない。そんな気持ちで仕事をしているのだ。つまり悲しいかな、自分は音楽ファンでは決してない。

だから相手がすごいアーティストであればあるほど、自分にまったく関係ないところで動いている、という圧倒的な事実に関して、音楽業界で働いている多くの人はどうやって自分の中でおとしまえを付けているのだろうか、とちょっとイジワルに思ったりもする。

悲しいかな、職業は「仕事の名前」で判断されることが多い。特に音楽業界が有名ミュージシャンと働いてました、誰々のオフィスに居ました… そういうのが素晴らしいとされ、その人が「どんな仕事をしたか」というのが横においやられる職業だ。つまりその人がマネージャーとしてどんなにすぐれた人であっても、誰のマネージャーかということが判断される世界だ、ということなのだ。でもって、この業界内ではあいかわらず「アレ・オレ詐欺」がはびこるわけなのだ。もうアレ・オレ詐欺ばっかりだよ、ホント。

でもちょっと考えてみれば分るのだけど、たとえばタクシーの運ちゃんだって、道知らないバカ運ちゃんもいれば、もう天才的に運転がうまくて、道をよく知っている運ちゃんもいる。仕事とはそういう風に「質」で判断されるべきである…と私は思う。

だから…私は自分と仕事をしたほとんどのアーティストが無名であることにすごく誇りを持っている。(はははは…ホントはそれじゃいけないんだけどね)そして係ったすべてのアーティストが私のことをおそらく死ぬまでちゃんと覚えてくれていることも、すごく恵まれたことだなと思っている。ま、…それは単なるひがみかもしれないけどね。

でも音楽業界ほど、職種や誰の側に居たかだけが評価される職業はないね。つまり「どう」仕事したか、「どう」目的地に行ったか。とかそういう事が、きちんと評価されない。でも評価されないと、この業界に将来性はないと思う。…とか言っていたら、最近、自分の近くにいるすごい仕事のできる女友達が2人、仕事を探しているという状況に。おそらく二人ともきっとフリーでやれる人たちだと思うのだけど。彼女たちほど仕事が出来る人はいない。優秀なスタッフを募集してる業界の皆さん、良かったら野崎まで連絡ください。ホントに二人とも優秀ですから!!

なんで、優秀な彼女たちが仕事を探しているのか、とか、そういうイライラする世の中なもんだから、昨日行ったユキさんのTalk Showはとても感銘をうけた。なんかモンモンとしていたものがすっきりしたよ。

いいなぁ!! やっぱり若いミュージシャンや、ロックバンドと仕事するのはいいなぁ!と思ってしまった。韓国ロックについては、固有名詞はまったく分らないが、ユキさんの熱い気持ちやバンドの気持ちがよくわかるエピソード満載だった。高円寺の裏通りのバーに集まった30〜40人くらいの小さなイベント。でもここではHOW「どうやって」その目的地に行くか…ということについて迷いはなかった。やっぱりユキさんの仕事は格好いい! そうなんだよねー なんか音楽は良く分らないのだが(済まぬ…でもヴィドルゥギ・ウユはかっこいいと思う)、その手法に惚れる。やっぱ、いいわ、ユキさん。やっぱりHOWの方が大事。

ま、いずれにしても迷いはないな。オレはオレのTHE MUSIC PLANT村をどうやって運営していくか、それだけなんだから。

 ノルウェーの取引先になるかもしれないお姉さんがくれたチョコレートと、トナカイのソーセージ… 大丈夫か、これ食べて…?
 ユキさんのイベントにて。こういう地図とかもはってあって展示をみるだけでも楽しかった。
ホンデ・シーンのヘッドクォーターであるライブハウスが入っている、すごいアートな建物。


PS
とか、ウダウダ書いてたら、こんなブログを発見。まさに同じ事を言っている。自分が届けたいと思う相手に届くこと。それに尽きる…

PPS
と、書きつつ、つまり自分はやはりヒットの出ない星の下に生まれとるのう…と自覚する。ま、いいか、生活してければ!w  でもこんなに努力しておるのにのう…トホホ…