酒井順子「下に見る人」を読みました

いや、酒井順子、なんでこんなに面白いんだろ。この本は「負け犬本」や先日読んだ「おばさん未満」よりも、さらにずっと面白いかもしれない。

子供のころからずっと私たちは差別をするべく生きて来ている、という本だ。こんなんだからいじめとか、もう絶対になくならないよ、と分かってしまう本。

帯には「こんな酒井順子みたことない」とか書いてありましたが、いやいや、いつもの酒井さんです。爆笑させてくれる酒井さんですよ。確かに笑えない部分もあるかもしれないけど、でもやっぱり文章が上手いよね、彼女。ホントにぐいぐい読ませる。

彼女、私より歳が1つ下だか、そのくらいで同世代だから、とにかく共感できる部分が多いのだ。たとえば就職においては一般職と総合職という違いがあった。これは私たちの世代特有のものかも。おかげ様で就職においては学校卒業時から、男女の差別がまったくなくやってきた私も(というか、どちらかというと女の方が強いみたいな場所で育った)、一般職の女性に対する差別があったかもしれない…とギクリと思う。今,言われてみれば、なんとなくドキッとする部分も…。私は男と同じ仕事で会社に来てます、って。

だから一時転職中に、ちょこっとやった派遣のバイトで「お茶入れてください」と言われてビックリした経験あり。あれはカルチャーショックだった。もちろんいれましたよ、お茶。いれましたとも!(笑)

「素人・玄人」の回も笑った。私もOLしてた頃、たまーに上司にそういう店に連れて行かれたこともあったし、最近ではクライアントさんが連れて行ってくれたが、でもやっぱりそういうところに居る女性は自分とは違う、という目で、こちらは見ていた。こっちは男社会で対等にやってる女だ。だが、間違いなく向こうも「化粧もしないで女捨ててるわーこいつ」くらいに思っていたことだろう。

「結婚」の回では、いつもの「負け犬ぶし」全開。とにかくお腹をかかえて笑った。先日久々に会った五十嵐正さんから、このブログについて「あのブログを読むと、ヨーコちゃんはますます結婚できないと思うよ」とか指摘されたが(笑)、まったくもって結構毛だらけ猫灰だらけだ。本気で結婚したかったら、オレは結婚するぜ。残念ながら心のどこかで結婚している人たちは窮屈で大変だな、と見下している部分があるのだと思う。それは否定できない。オイラほど自由を満喫している奴はいない、とも。本気でうらやましかったら、おいらだって結婚するわ…くらい思っているかもしれない。相手すらいないのに! 何の根拠もないのに! そして結婚している友人たちからは、野崎はなんて可哀想なやつなんだろう、とたくさんの同情と心配をいただいている!(爆)

しかしこの本の伝えようとしているメッセージは、上だの下だの思う人間の本性を笑い飛ばし、そんなチッチェエことに捕われず自由のびのびに生きなさい、という事なのだ。結局のところ「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず」なんですよ、ということを指摘しているのだと思う。つーか、目クソ鼻クソってやつかな。人は何とか自分と他人を比較しながら、あやういバランスの中で生きている。ちょっと視線を変えて見れば、見下していた相手に,今度はこちらが見下されている。

オレもだいたい5年前くらいに悟ったのだけど、自分を含め、正直どの人の人生も、ホントにたいしたことない。成功しているように見える人も実際はアップアップだし、エキサイティングにしているように見える人も単に疲れているだけ。みんな大変な中で、なんとか自分自身を保ち続けようと必死でもがいている。ホント、私もそうだけど、みんなたいした人生歩いてない。他人を羨ましがる必要などひとつもなければ、ましてや自分の正気を保つために他人を下に見る必要などもまったくない。

しかし、さすが酒井順子。福沢諭吉…だったっけ?は読む気がしないが、酒井順子は、やっぱりもっと読みたくなった。次は何を読もうかな〜っっっ。