「殺人者はそこにいる」を読みました


川内有緒が激推薦してたので、衝動的に買った。普段、海外に出ると英語のアナウンスが聞こえなくなるので日本語の本は読まないようにしているのだが、今回はこれがずっと旅のお供に。夢中で読んじゃった。 うむ、これはすごい本だ。

まず読ませる、この作者。文章に臨場感があって、めちゃくちゃ読ませる。展開もものすごく面白い。もちろん題材もすごいのだけど、何よりそれがすごいと思った。やっぱりTVの人だからかな。正直読み始めは「煽りすぎじゃないの?   こういうノンフィクションは淡々と冷静にしてるべきじゃないの?」とも思ったが、いやいや、こういう本こそ、注意深く、でも自分中心でいいんだ、と最後には納得したのだった。私のブログと一緒だ(笑)。

しかし最近の本は本当に文章が上手いわ。売れてる本は、本を最後まで読み切れないとか、ないもんね。本が読めない、ってもう前世紀の話だよ。今や本がめちゃくちゃ読者に歩み寄ってくる。めちゃくちゃ読みやすい。

それはさておき、内容は帯の煽りも納得、日テレの番組制作者が書いたすごい内容の本だ。足利事件の周辺にこんなことがあったのかとまるで知らなかった。足利事件は、DNA調査の間違いによるひどい冤罪事件だ。それにしても警察や検察の隠蔽体質がものすごい。自分の都合の良いシナリオに全て落とし込んで行く様子がすごい。彼らにはもう正常な感覚がないんではないか、そして「原発ホワイトアウト」にもあったように、一人一人がたいして問題がないだろうと判断し、無視してきた小さなことが、大変な重大事項を見落としたりするような大きなミスに繋がって行く。本当に恐ろしい。江川紹子さんがいつも言っているように「取り調べの可視化」重大性を強く思う。そもそも起訴されたら有罪になる確率が99%って一体どういうこと?と思う。人間は間違うものだ、そして間違ったら謝る…という人間としてあるべき大前提。ここでも原発問題同じ、謙虚さが欠落している。

そして、まぁ、私が一番思ったのは、時々ここにも書いているけど、早く日本を死刑のない国にして欲しい、ってことだ。この本にも出てきているが、冤罪で無罪の人を死刑にしちゃったりしているのだ、我々は。我々は人を公式に殺している。まったく大変な問題だ。それを認めないといけない。ヨーロッパでそのことを友達に話してみ?   もう本当にびっくりされるよ。一人の人間がある程度ちゃんと勉強し、ある程度責任を持って社会に向けて訴えていけることは限界があるので、私はここに書くことも、個人的な飲み会のネタも(笑)「死刑」「原発」の二つに絞るようにしている。政治に対してマスコミに対して社会に対して言いたいことはたくさんあるが、ほとんどの事は「実際はよく知らない」。「文句を言えるほど勉強してない」のだ。だから選挙権があって社会に対して少しでも責任ある大人だったら、脊髄反射的に文句を言っても意味ないだろ、思ってる。とはいえ、結局そういう直感的な善悪の判断がやっぱり正しいんだ、ってところにもどってきたりするのだから、それはそれであなどれないんだけどね。それにしても死刑も原発も、どちらも私が生きているうちになくならないだろうなーというのが悲しい。ちなみにこれは一所懸命書いたので是非一度読んで欲しいです。 →  http://themusicplant.blogspot.ie/2012/04/eu.html

ま、それはさておき、この本がなんとか日本を動かすように、と願う。やっぱり人間って、自分がいない世界と自分がいる世界と比較して、何が違うのか…そこだよね。だからこの記者の人の気持ちはすっごいわかる。本の内容よりも記者の人の生き様に響いたかも。この人、根っからのジャーナリストなんだね。すごい。聞くところによればお嬢さんを交通事故でなくしているのだそうだ。死は絶対的なものだ。死んじゃったら戻ってこない。そして世の中にはどうにもならにことがある。それ以外はただただ喪失感。この著者にこれからも期待してるし、本当に殺されてしまったいたいけな少女たち、そして遺族の方のために一刻でも早く真犯人が裁かれるように願う。