「TATSUMI マンガに革命を起こした男」を試写にて拝見しました。いや、これはマジですばらしい作品です。
辰巳ヨシヒロという、いわゆる「劇画」を生んだ、たいへんな漫画家さんの生涯を、彼の自叙伝的長編漫画「劇画漂流」をベースに、実際の漫画作品も入れつつ紹介していくという映画。先生のマンガを実際に動かして……というか漫画をアニメーション化し、臨場感たっぷりに表現。これがすごい迫力で見入ってしまった。
なんといっても、まず挿入される辰巳作品、この5つの作品が、もう最高にすばらしい。どれも迫力のあるパワフルな話。特に1発目の広島の原爆を描いた「地獄」。従軍カメラマンとしてスクープ写真を撮ったコヤナギが、最終的にその写真の真相を知らされ…。
そして5作品のうち最後に紹介される、米軍相手の娼婦マリコとお金をせびるアル中の父親の話「グッドバイ」なども、ものすごい結末が待っている。
…と、まぁ、前提として、この5作品がまず素晴らしいから、なんか…こう、ブレることがない。っていうか、作品すべてに通じる、通奏低音というか、一環した視線があるんだよね。これがとにかくすごい説得力を映画に持たせているのだと思う。
辰巳ヨシヒロという、いわゆる「劇画」を生んだ、たいへんな漫画家さんの生涯を、彼の自叙伝的長編漫画「劇画漂流」をベースに、実際の漫画作品も入れつつ紹介していくという映画。先生のマンガを実際に動かして……というか漫画をアニメーション化し、臨場感たっぷりに表現。これがすごい迫力で見入ってしまった。
なんといっても、まず挿入される辰巳作品、この5つの作品が、もう最高にすばらしい。どれも迫力のあるパワフルな話。特に1発目の広島の原爆を描いた「地獄」。従軍カメラマンとしてスクープ写真を撮ったコヤナギが、最終的にその写真の真相を知らされ…。
そして5作品のうち最後に紹介される、米軍相手の娼婦マリコとお金をせびるアル中の父親の話「グッドバイ」なども、ものすごい結末が待っている。
…と、まぁ、前提として、この5作品がまず素晴らしいから、なんか…こう、ブレることがない。っていうか、作品すべてに通じる、通奏低音というか、一環した視線があるんだよね。これがとにかくすごい説得力を映画に持たせているのだと思う。
劇画ってハードボイルドとかで、大人の男性が読むもの、でもって意味もないセックスシーンも多く、ストーリーの繊細さよりも大きな世界観の方が重視され、女には良く理解できない、という印象があったのだが… いやいや、これらの作品は私も読んでみたいと思った。ここに紹介されている5作品、とにかくすべてパワフルな作品であることは間違いない。
辰巳ヨシヒロについては、そんなわけで私はまったく知らなかったのだが、海外では手塚治虫なみに評価されている人なのだそうだ。ニューヨークなどの書店に行くと手塚の隣りにTATSUMIは並んでいる。
日本では59年ごろ劇画が大ブームだった。辰巳先生は劇画のゴットファーザーでありながらも、ブームの一方で本来の意味を失った劇画に幻滅し、シーンに背をむけて社会の底辺に着目したような社会的作品をたくさん発表したんだって。そして、それが80年代ごろになると、むしろ日本国内よりも海外で評価されるようになったのだとか。
…ってなわけで、この作品は日本の漫画家の話なのに、制作は日本ではなく、先生の大ファンだというシンガポールの映画監督、エリック・クー。監督が先生にラブコールしてこの映画が実現した。
自分の作品を映画にする、と聞いた先生は監督に「私の作品は暗いから、エンディングとか好きなように変えていいよ」と言ったそうだけど、監督はいっさい漫画のストーリーは変えなかった。ま,先生の大ファンの監督だもの、これは当然だよね。
そして映画になるわけなんだけど、ここですごいのがナレーションの別所哲也さん。こちらも監督のご使命だったわけなのだが、別所さんが素晴らしい。映画には辰巳先生本人のナレーションも入っているが、劇画の部分では別所さんが1人何役もこなし、辰巳ワールドを伝えている。でもこの1人複数役って、よく考えたら分る! だって漫画読む時って、誰でも自分1人の声で頭の中で読んでいるんだもの、これは当然だよね。というか、1人の人の声でナレーションすることで、漫画を読んでいるような空気感をうまく出しているのかも! 監督さすが! っていうか、単に予算がなかっただけかもしれないけど!(笑)
でもホント驚くベキことに、その1人何役、ってのは映画を見終わった私も、上映後にいただいた資料に目を通すまでは、まったく気がつかなかったよ。すごい。ちなみに広島の地獄絵図を描いた「地獄」での人々の苦しむ声…というか雑踏の声も別所さんがすべて重ねて録っているのだそうだ。アフレコは2日間、ずっと籠って行われたようで、映画製作ってホント大変だなぁーと思った。
それにしても、すごいわ、この作品。劇画が好きな人も興味なかった人も、辰巳先生を知っている人も知らない人も、ぜひ見に行ってほしいと思う。
辰巳ヨシヒロについては、そんなわけで私はまったく知らなかったのだが、海外では手塚治虫なみに評価されている人なのだそうだ。ニューヨークなどの書店に行くと手塚の隣りにTATSUMIは並んでいる。
日本では59年ごろ劇画が大ブームだった。辰巳先生は劇画のゴットファーザーでありながらも、ブームの一方で本来の意味を失った劇画に幻滅し、シーンに背をむけて社会の底辺に着目したような社会的作品をたくさん発表したんだって。そして、それが80年代ごろになると、むしろ日本国内よりも海外で評価されるようになったのだとか。
…ってなわけで、この作品は日本の漫画家の話なのに、制作は日本ではなく、先生の大ファンだというシンガポールの映画監督、エリック・クー。監督が先生にラブコールしてこの映画が実現した。
自分の作品を映画にする、と聞いた先生は監督に「私の作品は暗いから、エンディングとか好きなように変えていいよ」と言ったそうだけど、監督はいっさい漫画のストーリーは変えなかった。ま,先生の大ファンの監督だもの、これは当然だよね。
そして映画になるわけなんだけど、ここですごいのがナレーションの別所哲也さん。こちらも監督のご使命だったわけなのだが、別所さんが素晴らしい。映画には辰巳先生本人のナレーションも入っているが、劇画の部分では別所さんが1人何役もこなし、辰巳ワールドを伝えている。でもこの1人複数役って、よく考えたら分る! だって漫画読む時って、誰でも自分1人の声で頭の中で読んでいるんだもの、これは当然だよね。というか、1人の人の声でナレーションすることで、漫画を読んでいるような空気感をうまく出しているのかも! 監督さすが! っていうか、単に予算がなかっただけかもしれないけど!(笑)
でもホント驚くベキことに、その1人何役、ってのは映画を見終わった私も、上映後にいただいた資料に目を通すまでは、まったく気がつかなかったよ。すごい。ちなみに広島の地獄絵図を描いた「地獄」での人々の苦しむ声…というか雑踏の声も別所さんがすべて重ねて録っているのだそうだ。アフレコは2日間、ずっと籠って行われたようで、映画製作ってホント大変だなぁーと思った。
それにしても、すごいわ、この作品。劇画が好きな人も興味なかった人も、辰巳先生を知っている人も知らない人も、ぜひ見に行ってほしいと思う。