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2014年10月4日土曜日

初心者のためのヴェーセン・ガイド

こんな映像を見つけました。どこかのフェスのワークショップでしょうか。ヴェーセンってなんぞや、と思っている人が、このブログを見ている人でも多いかもしれないので、紹介がてら載せておきます。

だいたい伝統音楽のグループはこうやってコンサート以外にも「ワークショップ」と称して自国の文化や伝統音楽を紹介するのも仕事の一部だったりします。なのでフェスティバルの会場ではよくこういうシーンが見受けられますね。



ローゲル「ヴェーセンってどういう意味だ?って思ってるだろ。みんながそう思っているのを感じるぞ」(会場/笑)「ヴェーセンはいろんな意味のある言葉で…」

ウーロフ「スピリット、存在、ノイズ、エッセンス、ガス…」

ローゲル「租税システム、道路システム…」

ウーロフ「なんでもシステム的なもの」

ローゲル「この件について質問ある?(会場笑)あ、それから、良い音楽を奏でるバンドの名前でもある。いいバンド名だろ? これ、最初の緊張をほどくには良い質問なんだよな。あと、どうやって発音するの?とも良く聞かれる。ヴェーセンと発音する。ヴァーセンではなくヴェーセン。他でもなくヴェーセン」(でもアイルランドとかヴァッセンって呼ぶ人多いよね。それでローゲルもアイルランドではヴァセンって自分たちの事紹介してた。ま、いい加減なんだ、そのヘン…/笑)

ローゲル「ヴェーセンはトリオで時々4人組にもなる。5人になったりもするけど、だいたいはトリオ。一番左がストックホルムから来たミカエル・マリーン、真ん中の典型的なスウェーデンの楽器ニッケルハルパを持っているスウェーデン人がウーロフ・ヨハンソン」

ウーロフ「そしてギターがローゲル・タルロート」

ウーロフ「僕らが演奏するほとんどの曲はポルスカ。ポルカじゃないよ、ポルスカって言うんだ、3/4拍子長調。スウェーデン人はすべてのことを3/4拍子で行う。車を直すのも、家を建てるのも……ダンスをするのも3/4だ」

ローゲル「今日ワークショップに参加してくれた人にはさっきダウンビートの話をしたけど、それは置いておいて、僕らがこの伝統的なものをいかにコンテンポラリーにアレンジするか、作曲するかの秘密を話そうと思う」

ウーロフ「まずミカエルが書いたハッセA'sという曲を紹介します。60歳になるご近所の友達のために書いた曲です」

<Hasse A'sを演奏>

ウーロフ「(モニターの)低音にフィードバックがあるなぁ(とエンジニアに業務連絡)」「今演奏したこの音楽はポルスカ、“イェンポルスカ”=イーブンポルスカとか16ビートポルスカと呼んでいるもので、16の音を繰り返すんだ。だいたいは1と3、もしくは123で足を踏む。それが延々と繰り返され、人々はそれに対して踊る」

ローゲル「ポルスカはいろんな地方に広がっていろんな形になった。これは16ビートポルスカだけど、8ビートポルスカもあるしトリプレットポルスカというのもある。それらはダンスをする時も演奏する時もちょっとずつ違っている。でも根幹のところはやはり似ていて、ポーランドからそれがいろんな国へと伝わった時にはものすごく流行したんだ。ポルスカ、って言うのは“ポーランドから来た”という意味だ」

(そこで変なお客が「Excuse me!  あなたたちはどこから来ましたか?」と叫ぶ)

ローゲル「ポーランドから来ました」(会場爆笑)「今のはウソ。いやいやスウェーデンから来たんだ」「僕はウプサラから来ました。ウーロフもウプサラから」

ウーロフ「ベイエリアから昨日来たんだよ」(と、とぼける)

ローゲル「ミカエルはストックホルムに住んでいるんだ。これで答えになってるかな?」

(ポルスカって綴りは同じなの?とまた質問)

ローゲル「いや、Sが入るんだ。Polska。で、2/4ではなく3/4なんだよ。スウェーデンにはポルカもあるけどね」

(あなたたちが演奏しているのは伝統的な音楽なの?と質問が飛ぶ)

ウーロフ「メロディは伝統音楽だったりするけど… でも今,演奏したのは新しく作曲されたものだよ。でも言わないと新しく作曲されたものだと分らないでしょ? そういう物がほとんどなんだ」

「伝統音楽を演奏する側からするとポルスカってもっとも面白い形式だ。僕らはスコティッシュ、ワルツ、ポルカ、ポルケッター、いろんな形式のものを演奏するけど、ポルスカが一番興味深いものだ」

ローゲル「これは伝統音楽なのか、それともそうでないのか、という君の質問に答えると。YESでもありNOでもある。僕らが伝統音楽に対してやっていることは、どういう風にハーモニーをつけてリズムをつけてベースラインを作るか、という事なんだ。例えばミカエルがヴィオラでやっていることは、“これは以前も存在したものか”という意味において、まったく伝統的ではないと言える。(つまりまったく新しいものだ)でも伝統が何かということをかんがえると僕の考えは…そしてこの二人もそうだと思うけど、僕は伝統とは、エネルギーのことだと思う。メロディーの構造や流れ自体は1600年とか1700年とかにあったものと対して変わってはいない」

ウーロフ「僕らはすごい年寄りに違いない!」(と詰まらないジョークを言う/笑)

ローゲル「でも音楽は、なんというか、古いな…! 例えば伝統音楽をどうするかというと…」

(ウーロフがメロディを弾き始める)

ローゲル「こんな感じ。僕らが育った場所に伝わっていた古い16ビートのポルスカだよ。僕はこのテの音楽にハマった時は最初フィドルを弾いていた。だから言うのだけど、ボウイングがとても重要なんだ。ボウイングが演奏に非常に大きな違いを与える。さて、ここで音楽をどのようにアレンジするかにおいて、重要なのはドローンだ。これはずっと続く途切れない1音のことで、その音が音楽に地平を与える。すごく便利な道具でもあり、とてもシンプルなものだ」

ウーロフ(延々とチューニング)

ローゲル「そしてチューニングも重要なんだ。チューニングがあってないとボヤけて聞こえてしまう」

(質問していい?と質問が飛ぶ。すごくいろんな音が響くように聞こえるんだけど、何故?)

ウーロフ「それは秘密だ。それは言えない」

(会場笑)

ローゲル「答えることはスウェーデン政府から禁止されているんだよ」

ウーロフ「後で教えてあげる。でも今は秘密だ」

ローゲル「答えはイエスだ。共鳴弦があるんだよ」

ウーロフ「しっしーーーっっっ!」

ローゲル「まったく…だいたい自分で説明したがるんだよな…」

ローゲル「ドローンのチューニングがとても重要なんだ。この場合はG。これはGマイナー(短調)の曲なんだけど、珍しいんだ。だいたいのポルスカはメイジャー(長調)だから… あれ、質問あるの? どうぞ!」

(子供の声で「そのTシャツはどういう意味なの?」)

ウーロフ「スウェー…デンだよ。スウェー」

ローゲル「スウェーデンの最初の3文字だ。僕たちが来た国だよ。分ったかな?」

ウーロフ「U.S.A.みたいなもんだ。短縮系!」

ローゲル「…えっと。だからGがずっとドローンであるだろう。で、(実演してみせて)ここに僕がリズムを付けて行く。…そして、これをもっとエキサイティングにするためにやることは…たとえば、ここにドミナント(完全5度上にある属音)を使うと……それはこの場合Dだ。これが曲にテンションを与える… ほら、“何か起こりそうだな〜”って感じになってきただろ?……ほら、もっとそうなってきた。スティーブン・キングみたいな感じ。…で、また普通に戻った。こういうトリックを僕は知ってるんだ」

…と、いいところでこの映像終わっちゃっているんだけど、ヴェーセンの秘密がちょっと分ったかな? まぁ、伝わったのは、このお茶目な人柄くらいかもしれませんが… 

何はともあれ、このヘンなスウェーデンのグループが、あなたの町にも行きます。ぜひ会いに来てやってください。山形、神戸、名古屋、東京、そして福岡で公演あり。すべての詳細はここ