アヌーナ、三鷹で行われたワークショップに参加してきました


先日、三鷹芸術文化センターさんにお邪魔してアヌーナのコーラス・ワークショップを見学してきました。

講師はアヌーナのリーダー、マイケル・マクグリンとローラ・インマン。コーラスに限らず、あいかわらずあれこれ心に響く部分もたくさんあったので許可をいただき多少こちらにご紹介したいと思います。

歌うあなたはもちろん、歌わないあなたも是非、アヌーナの世界に触れてみてください。

今日はコンサートを行われる三鷹芸術文化センターの風のホールに50名ほどのお客さんが
集められました。ステージには「さくら」の歌詞が書いたホワイトボードが。

まずマイケルはホワイトボードを除けて、生徒さん全員をステージに上げ、自分の周りに囲むように立たせます。そしてアヌーナはステージで指揮者がいない、その分、会場のすべてを使うんだ、と説明します。指揮者がいないことでコラース隊全体が1人の声,1人の人間になるのだ、と。なので、呼吸法が非常に大事です、と。

今日は1時間ほどのワークショップですが、呼吸法や立ち方のエクササイズをして、みんなで知っている歌を歌ったあと、ちょっとしたコンサートみたいなものができれば、と思っています、とのこと。

「さて、皆さん自分の肋骨がどこから始まっているか、さわってください」胸の上を触る人もいれば、脇の下を触る人もいます。

肋骨は身体の上の部分、端から背中まであります。「これが全部つながっているのです」とマイケル。

で、ここで生徒として参加していたアイルランド人の女の子(5歳)を紹介。「皆さん、注目です。彼女は皆さんが出来ていないことを自然と出来ています。子供はお腹から呼吸している。頭が後ろに下がったりすることもありません」

「それは彼女の肋骨すべてが広がっているから。カゴみたいに広く保たれているのです。意識して広げる必要がないわけです」

次に頭上に腕をひらひらさせて声を出してみましょう、とマイケル。ローラの先導でシシーシーと言いながら息を吐き、呼吸法を練習します。さらにグループを3つのグループに分けて、それぞれの音でハモることを練習。

「アヌーナではほとんどの曲をア・カペラ、つまり楽器なしで歌うので、お互いの声を聴いて音程を取ることはとても大事なのです」

3つのグループそれぞれに「目をつぶって声を出し音程が取れた、と思った人は手をあげてください」

会場のほとんどの人の手があがります。ほぉ〜なかなかいい感じになってきました。

ここでまた姿勢をチェック。「アイルランドではこんな風に立つ人が多いんです、特に女性」とマイケルは、手をだらんと前の方にたらした姿勢を見せます。

「正しいのは足はまっすぐ。手は横。ピンとはったりせず自由に身体の横へ」どうも皆さん、上手くいかないようです。マイケルはここで具体的な指導を加えて行きます。

「片腕を胸の上に置いて、そこを意識して引き上げてみます」なるほど〜確かにこうすると確かに姿勢がよくなる感じがする。

「そして次にその手を離して、脇へおろします。自然な形へ。この時に肩が上がったり、頭が後ろへ上がったりしないように」

マイケルによるとこれが自然に出来るようになると、長生きできて、歌も上手に歌えるようになるんだそうです。なるほど。

ここで皆で「さくら」を歌ってみます。

「いつも胸をあげて、手をリラックス、頭はまっすぐ
ここでマイケルとローラで生徒さんの姿勢を1人1人の姿勢を直しながら、会場を歩きまわっていきます。1人の女性の例。マイケルが首の位置を治そうとすると、何故かものすごい抵抗がそこにあります。リラックスさせることが大事ですよ〜、とマイケル。

また別の男の方。この方の頭の位置はばっちりなんですが、これは男性には良くある事なんですけど胸をあけるということが出来ていない、と。男性はついついお腹が出ちゃう。足の膝の部分をゆるめて立つと効果的に治るそうですよ。骨盤をピンとさせて胸は細い糸でひっぱられている感じが大事だそうです。

さて、ここで「さくら」について。

日本の歌詞はどうしても単語が細切れに聞こえがちです、とマイケル。一方で英語の歌詞は非常になだらか。なので、歌う時になだらかに歌うように意識すると綺麗に聞こえます、とのこと。ワンフレーズ、ワンフレーズを流れるように
 
ここで腕で波を描くようにしながら歌うことを実践してみます。確かに腕で波を描くことで、自然となだらかに歌えるようになる。これは効果的!

ここでマイケルは会場の皆さんに大切な事を話します。「この曲は日本の国を代表する大事な曲です。国歌 でもないのに、非常に広く皆に知られ、短いフレーズの中に日本のすべてが凝縮されている、そういう存在の曲は世界的に見ても非常に珍しいんです」……そうだった、姿勢の方にばかり注意が行って、そういう大事なこと忘れてたよ。

またこの曲は非常に古い曲だ、と。アヌーナも1000年以上も前の曲を歌ったりするのですが、死んでこの世にもういない人の歌を歌う、ということは、非常に大事なことだ、ということを思い出してください、と。歌うあなたは歌を作った人の一部になるのだ、と。これが「時を越える」ということなんです、とマイケル。

ここで再び、波を意識して、目を閉じて歌う。心の声を聴く、ということをやってみます。私はこのヘんは客席で聞いていたのですが、生徒さんたちがどんどん上手くなっていくのが分ります。短時間なのに、すごい!

さて、マイケルは生徒さんの感想を聞いていきます。「とても気持ちよく歌えた」という生徒さん。
「そう、このホールはとても音がいいですね。そんな風に音楽の波を感じることはとても重要です。波を感じて呼吸を感じる。それが気持ちのよいことなんです。アヌーナというグループには指揮者がいません。みんなが呼吸を合わせることが指揮の代わりになっているのです」

ここでマイケルはステージ上で練習しているお客さんすべてを客席の方に向けて立たせ、空間に向って歌う、ということをレクチャーしていきます。今日は客席にはお客さんはいませんが、実際のコンサートのような感覚です。口をあけて人に届けるように、歌ってください、と。口をあけて

ここで、また重要なポイント。「口がノイズを作ってはだめです。前頭部が響いてはだめ。顔が引きつったりすると、喉から首まで、すべて固くなったりします。肋骨で呼吸をするように!」

口先からではなく身体から声を出す。そうすることによって客席の後ろまで声を届かせるようになります。生徒さんたちの歌を聴きながら「もっと後ろへ〜」「もっと空気を入れて、胸を上げて」とマイケルは声をかけていきます。

ところでこの風のホールではアヌーナの公演が11月に行われるわけですが、この「さくら」のスペシャルアレンジを歌う、とマイケルは言っていました、楽しみ! また「僕の子供が大好きなもののけ姫をやります」とのことです。おおっ!

時間もなくなってきたので、ここで生徒さんからの質問を取ります。

質問のメモ自分の字が汚くて読めない。質問は失念しちゃいましたがマイケルの答えは「声はシンプルなんです。抑圧したりしめつけるのではなく空気を外へ出す感じ。あくびをしているのをイメージしてください。それと同じです」ローラもいっしょにあくびのように声を出すレッスンをここで数回行いました。なるほど、これは効果があるかもしれません。

また「息を吸うタイミングが難しい」という質問があがります。
「これは練習しかありません。肋骨と肋骨の間の筋肉が必要で、これが呼吸の効率にも影響してきます」ローラより「吸う事を練習するより長く吐くことを練習するのがいいですよ」とのこと。なるほど。マイケル「とにかく死ぬまで練習。それは永遠に。生きることも一緒です」ひーーっっ(笑)そうだった。歌うことは生きること。それがアヌーナの哲学だった。忘れてたよ

「喉が痛い時、風邪の時はどうしますか?」という質問。「実は喉が痛いのは関係ないのです。歌う前にチョコレートやチーズやミルクを食べる人はいますか? いろいろ説はありますが、でも実は食べ物は関係ない。肺に食べものを入れる人はいません。ここ(喉を指差して)ここは二つの通路で出来ているんです。一つは食べ物のため。もう一つは空気のための通路です。要は自分の身体をどう使うか、という事なのです。ローラは先のツアーのとき、風邪で声が出なかったんですが、でも歌うことは出来ました」(そういうもんなんだとちょっと感動)

今日はあまりにたくさんの事を学んだわけですが、どれが一番大切なことですか、という生徒さんの質問。「たくさんやったように思えますが、どれもすべてとてもシンプルなことなんです。どうやって立つか、そしてどうやって息をするか、それだけ」

「分らなくなった時は子供を見ると良いです。それが正しい。そして話す時も歌うようにしゃべってみましょう。遠くに歌を届けるようにしゃべりましょう。そのように生きてみましょう。例えば声をあげてスピーチのように怒鳴っても人は聞いてくれません。身体の奥から、身体全体を使ってしゃべることで、届けられるようになるのです」

以上、私が聞きとった内容なので、マイケルの意図した内容と違っている部分、私が勝手に誤解している部分があるかも、ですが、少しでも雰囲気が伝わるといいなぁ、ということでご紹介しました。でもホントにマイケルのワークショップは、コーラスのためのものなのに、なぜか「生きること」をすごく説いているような気がするんですよね。いや〜、すごいやマイケル。久しぶりに会って、思い出した。アヌーナがどんなにすごいグループか。マイケルがどんなにすごいリーダーか。

アヌーナの来日公演。三鷹公演はこちらに詳細があります。ツアー全体の日程はここ
マイケル、ローラ、プランクトンの皆さん、三鷹芸術文化振興財団の皆さん、ありがとうございました! 生徒の皆さんもお疲れ様でした。

ところで裏話を2つ。今日はちょっと早めに会場へ行き楽屋に挨拶に行ったのですが、マイケルに「さくら」の歌詞の意味を確認され「そんなの分んないよ、これって700年前くらいに書かれた言葉で誰も今はこんな言葉しゃべってないもん」とかいい加減に言ったら「ヨーコ違うよ、この曲は150年前に書かれた曲だ。wikiに載ってた」とか反論されちゃいました すごい、マイケルなんかごまかしが効かない!!! そうだった、マイケルにはどんな嘘も効かないんだった すごいマイケルはなんでもお見通し!! ごめんなさい、マイケル。これからもっとちゃんと生きます

あと終了後「短かったけど素晴らしい内容のワークショップだった」と二人に声をかけたら、ローラが「生徒さんたちが素晴らしい」ってすごく言ってた。マイケルも「本当に日本の皆さんは素晴らしい。他の国ではこうはいかない」と強調していましたよ。

ちょうど台風前で、三鷹もすごい雨でしたが、駅に向うバスをバス停で待っていると「楽しかったねー」と言いながら、生徒さんたち同士が話しているのに遭遇し、なんだか私も嬉しくなりました。ほんとにマイケルすごい! アヌーナすごい。今年もケルティック・クリスマスが楽しみです。三鷹の公演はチケットも残り少ないみたいです。皆さん、早めのアクションを!

私の好きな曲です、これ… アヌーナ、早くコンサートが見たい!



マイケルが教えてくれたアイリッシュ風YOKO



マイケルと食べた昆虫 in 松本

マイケルと食べたお魚

マイケルと食べた鶏肉

マイケルと食べたおそば