終わった…

ヴェーセンが帰国して全てが終わった。今はただただホッとしている。ツアーはお客さんもそうだし、多くの人を巻き込む事になるので、ツアー中大きな地震もなく、事故もなく、みんなが元気で終われた事に感謝、感謝。9人もミュージシャン呼んじゃってツアーの経理が怖いけど(笑)、まだ地方から送った荷物が戻ってきてないし、それが戻るまでツアー経理はできない。何より今日はアヌーナのツアーのお手伝いなので、ヴェーセンに浸ってないで、みんなに迷惑をかけないよう頑張らないと。

昨日はオフィスに戻って、たまった急ぎの仕事をさばき、ご飯作る時間がないからケンタッキーの店屋もんとって食べて、夜8時前には倒れるように寝てしまった。そしたら朝3時に目が覚めて、もう一度寝ようと思ったけど起きて、エクササイズして3kmだけだけど走って、今は朝8時半のこだまで浜松に移動している。K松にあきれられないようしっかり仕事しないと!   頑張ろう。で、マイケルの顔を見たら絶対にヴェーセンの事は忘れる可能性が高いので、このブログをその前に書く。

やっぱりヴェーセンは最高だった。他のバンドもミュージシャンもかわいいけど、やっぱりヴェーセンの場合、誰にも触らせてないというか、人は巻き込みつつ、ある程度は任せつつも、すべての事に私が経済的に責任を持ち、計画し、やっていることになるので、他のプロジェクトとは達成感がまるで違う。

ヴェーセンのみんなは男らしくて、協力的でかっこよく、楽しく、何より音楽がもう最高に素晴らしい。あの音楽は本当にどこのアコースティック・アンサンブルとも比較できないと思う。あんなバンドは本当に他には絶対に存在しないだろう。メンバーともなんども話したけど、ヴェーセンについてはその点がやはり理解されないとダメだよね、という事。

ヴェーセンの売りはニッケルハルパでもなく、多くのバンドにカバーされている素晴らしい楽曲でもない。ヴェーセンはアコースティック・アンサンブルの概念をまったく変えてしまったのだ、と思う。あんなに3人とも爆走して、あんなに自由なのに、めっちゃくちゃ息があって、同じ一匹の生物と化してしまうのはいったい何故なんだろう。大げさな話、ヴェーセン見てると、そういう生き方も可能なのかな、とも思う。みんなが同じく重要な世界。あそこにはパーフェクトな世界がある。みんな自由で、お互いいいところを引き出しあい、刺激しあう、そういう世界に生きられたらどんなにいいか。誰かが誰かの引き立て役になるのではなく、全員がなくてはならない存在で、それぞれ共鳴しあって、お互いいいところを褒め合い…みたいな。それにしても素晴らしいよ、このバンドは。私にとっても、今回のツアーは、もしかしたら今までやったどの公演よりもパーフェクトだったかもしれない。

山形、というか最初の東北公演が出来たのも嬉しかった。日程がここだけ週末公演だったので、多くの人が遠くから駆けつけてくれた。仙台とか東京とか…。

で、山形で久しぶりにやっちゃった。ヴェーセンと私、In  One Taxi。これっていつもフォーメーションが決まっていて、前にウーロフ。後ろの奥にローゲル、真ん中私、そして左にミッケ。狭いので私は背もたれに寄りかかれない。というか、ほとんどミッケとローゲルの上に乗っかるようにしてタクシーに乗る。後ろのトランクにはギターとローゲルが使うスピーカー、ヴィオラとニッケルハルパの古い方、私の即売用CDなどでいっぱいである。これ本当にみんな密着しちゃうんで、本当に仲良し感がでていていいんだ…。いつもツアーが終わると思い出すのはそういうシーンだ。しかも山形駅前に止まってたのが小型しかなかったので、これまたカッツカツ。一度タクシー、2台に分けようかとも言ってみたことがあるんだけど、アテンドが私一人しかいないせいか、分かれると不安になるらしくウーロフが「一台でまとまるのがいい」って主張するから、それ以来どんなにきつくても、そういうことになってんだよね。それはもう初来日の時から、そう…。そんなツアーも、もう日本で10年かと思う。

公演終了後には、また一台のタクシーにヴェーセンを積み込み駅へ。新幹線に乗って、東京に戻り、JPPと合流、本当にここまでで、すでに達成感マックスだった。ここまでがすごく長かった。JPPを呼ぶまでの理由はいろいろあるけど、それは以前ここに書いたとおり。すごいよ!!  本当に全員揃っちゃったよ!!!

そしてちょっと話は戻るが、実は山形に行く電車の中で、やっとヴェーセンに東京で行う25周年公演の内容を話せた。あれこれ考えていた東京の公演。JPPとの共演だ。これをどう構成するか。それをヴェーセンに話をして、良いアイディアだ、と採用してもらうことが決定した。嬉しい。彼らは滅多に私のリクエスト曲すら拾い上げてくれない。「珍しいわね」と言うと「良いアイディアだからさ」と言ってたけどね(笑) で、この話を山形から戻りJPP側に話をし、JPP側もオッケーになったので、そんな風にコンサートはやることになった。で、以下は私のアイディアと結果どうなったか…の話。

最初はもちろんJPPを前座よろしく頭で40分。休憩挟んでヴェーセン60分、アンコールで共演というオーソドックスなものを考えていた。だが、ウプサラでの公演を見て、それじゃダメだと思ったのだ。とにかく覚えておかなきゃいけないのは、どうしても伝統音楽はダサくなりがちなジャンルだ、ということ。私が見せたいのは伝統云々ではなく、そのへんの詰まらないロックのコンサートよりもかっこいい音楽なのだ、ということ。それが伝わらないと、私がやっている意味がまったくない。伝統音楽の仕事をしていて言うのもなんだけど、私は伝統には基本的に興味がない。興味があるのはかっこいい、ロックミュージックよりもかっこいい彼らの音楽だ。もちろんヴェーセンの音楽もJPPの音楽も、そのままで最高にかっこいいのだけど、それが伝わりにくいのが、彼らのキャラというか、愛すべきところというか。MCといい、チューニングの間といい、どうしても伝統音楽の連中は…(以下自粛/笑)

ウプサラで会った時、主催も兼ねてるヴェーセンはもちろん忙しく、私も翌日はベルギーに行ってしまったので、ほとんど話をすることはできず…というか、彼らもその日の公演の成功に浸ってるから、話せたとしても、東京どうする、とかあれこれ聞いて、それを邪魔しちゃ悪いな、と思ったから、ほとんど話すことが出来なかった。相談できたのは山形で使うステージの大きさの確認だけだ。でもJPPは同じホテルに泊まってたから、翌朝アルトと朝ご飯しながら結構話せた。で、アルトに相談したら、アルトは「なんでもやるよ。ヴェーセンのコンサートなんだから言われた通りに何でもやる」って言ってくれたのだ。だから、私はこの際、もう延々と悩んでみようと心に決めた。あれこれ悩み考えるのは、大変だけど、ある意味ロマンチックで楽しい作業だ。これ、自分の仕事してる人なら、誰でも分ってくれるよね。

で、まずウプサラで共演するのを見ていて思った事は、ヴェーセンとJPPって共演でもあんまり混ざらないというか、ヴェーセンは相変わらずニッケルハルパのメロディを頂点とした二等辺三角形だし、JPPはマウノを精神的支柱にハーモニウムとベースで固まっているこの形を絶対に崩さないって事なんだよ。普通共演はメロディプレイヤー同士、伴奏組同士でまとまったりもするのが常だが、ヴェーセンとJPPの場合、9人のミュージシャンということではなく、ちゃんと二つのバンドの共演になってるような気がするんだよね。

なので、こうなったらステージセットは、ヴェーセンもJPPも一度に普段のポジション通りにステージに並べてバンド2つ、ということにしてしまおう、と。つまりステージを二つに分けて上手にJPP、下手にヴェーセンという設定にしようと。そうすればいわゆる多くのミュージシャンが出演する時のセットチェンジのややこしさからはまず開放される。

となるとDUOの名物柱も気になるけど、でもそれは椅子の配置でなんとかなる。(ちなみに一度すべて椅子を並べてみて、ステージを見切った部分はすべて取りはらったので一階に座れた人はちゃんとステージ全部が見えたはずです) メインのヴェーセンが真ん中でないのは我慢するとして、こうすると一気にステージ制作が楽になるんだよね。まず、ここまでの結論を出すのが、すごく時間がかかったけど、この結論が出たら、後は楽になった。

ここまで来れば、あとは構成の問題だけだ。で、私って普段コンサートは彼らが向こうでやってるもの、そのまま見せるのが好きなんですよ。あれこれ日本向けに演出を入れるのは好きじゃない。日本の曲カバーとか、日本のミュージシャンとの共演もあまり好きじゃない。山口洋のポール・ブレイディみたく、まったくサポートに回ってもらえるなら別だけど、日本のミュージシャンが来ると話がややこしくなりがちだ。だから普段はホントに向こうでやっているものを、そのまま見せてほしいんだ。でも… とにかく放っておいたら特にJPPの方は田舎臭くなりがちなんだよね。で、ヴェーセンのお祝いコンサートというのを前提にJPPをかっこよく見せる方法を、とにかくものすごく考えたってわけ。

まずお客さんは会場に入ってきてどう思うだろう、と。あぁいう風にモニターが並びハーモニウムが置いてあれば、ちょっと音楽わかる人なら、あ、こっち側がヴェーセンか…とすぐわかる。で、一部がはじまって、いきなり最初にヴェーセンを出したってわけ。これが自分でも良いアイディアだったなと思う点の一つ。もうメインが頭で出ちゃうんだ、という驚き。これホントにナイス演出。(すみません、自画自賛してますが、自分でも本当にナイスと思います)

そして2部は…これまた絶対に実現させたかったのだけど、ウーロフを前に出して、あのオールドニッケルハルパのワルツでスタートする事。その時、ウーロフにだけスポットライトが当たる。周りは暗い。JPPのフィドルが入って全体が明るくなる、あの感じ!  ここだけは照明さんにかっちり私から支持して、お願いしておいたのだ。

これ実はウプサラでやってて、唯一良いなと思った演出。ウプサラの二部の頭がやっぱりこの曲だった。なので真似したのさ。だってウーロフがかっこよく見える!    そしていきなりヴェーセンにバック・バンドが付いたっぽくなるんだよね!    実は2台目のニッケルハルパはウーロフは今回は持ってこないかも、と言ってた代物。でもちゃんと飛行機の追加料金を私が払って、ウーロフにも「私が運ぶから」と無理言って持ってきてもらった。だってあのワルツはあの古い方のニッケルハルパじゃないと!  でも実際ツアー始まってみれば私はローゲルのスピーカー持ち役でほとんどウーロフの楽器を持つのを手伝ってあげられなかったんだわ… ごめんよ、ウーロフ。

で、2部はこんな風に始まり共演2曲の後なんだけど、本当は私はJPPだけでノンストップで30分ってのをやってもらいたかったのだった… これについてはまた後で時間があったら書くかもしれないけど、さすが無敵の天然力。ペリマンニに演出は効かない(笑)   私の目論見を踏みにじり、彼らは勝手に自分たちがやりたい新曲などを披露しておった…でも充分かっこよかったけどね!   JPPは過去に70分一本勝負とか平気でやってる。一番やりやすいのは17分だってアルトが言ってたっけど…絶対に一本勝負の方がカッコよかったのに!!!   本当にペリマンニは天然記念物!   まぁ、でもそんな連中が渋谷で出来たことだけでも良しとするか!? それにしても…と思う。こういう連中はJPPまでだよね。ペリマンニだって、このあとエスコやアンティの世代になれば、もっと現代的だし、自分たちをどう見せれば格好いいか、少しは考えることでしょう。

で、JPPが演奏してる間、ヴェーセンは引っ込まないで見てるってのがいい、っていうのも私のアイディア。というのもウプサラでもJPPが彼らだけの演奏をしている時、ヴェーセンはステージのドラム台のヘリとかに座ってJPPの演奏をステージ上でニコニコと見ていたのだけど、その雰囲気に彼らの仲良し感がでていてすごく良かったから。それを東京でもやりたかったのさ。

そしてヴェーセンが座るソファ。会場さんに相談したら嫌がられるかな、と思ったのにブッキングマネージャーのNさんが良くしてくれて、楽屋のソファを貸してくれたのでした。ううううう、ありがとう、Nさん!!  ワインじゃなくてシャンペンにしろ、といったのはミッケ。グラスを貸してくれたのはduoさんで、シャンペンは手伝いにいてくれていたI課長に買いに走ってもらった… 

2部の最後はスラング・ポルスカってのは当然、私の提案で彼らも当然と思ったのだろう。難なくやってくれた。あとJPPがメドレーをやってる最後でヴェーセンが自然に入っていくってのはティモのアイディア。

でもって、ですね、最後のアンコール。最後のアンコールは実はヴェーセンだけで!!   ヴェーセンだけで「エスコとピルヴィのワルツ」で終わりたかった!!!   しかしここもペリマンニの天然力とヴェーセンの「最後はもう一度一緒にやろうよ」というのに押し切られ断念。最後にもう一度スラングポルスカやったけど、ちょっとあれは「全員集合」っぽかったよね…   ちょくしょー(笑)   ま、でもいいんですけどね。全体の構成はともかく音楽がもう最高にカッコ良かったから!

…と言い訳をたくさん書いてますが、まぁ、そんなのも本当に普通のプロモーターだったら言い訳せず、なんだろうけどさ。ま、こういうを書くのも私らしくていいかな、と。それに来てくれた人はこういう裏話きっと面白いんじゃないかな、と思ってあえて書きました。ご笑納ください。

まだまだ続きます。

私が書いたネタ表…






















ヴェーセンケーキ。ろうそくの穴あける前に写真撮れば良かった…