「国家がよみがえるとき 持たざる国であるフィンランドが何度も再生できた理由」を読みました

いやー こういう本を待ってました! なんかフィンランド、フィンランド、っていってフィンランドがこの地球上の天国みたいな本しか出回ってないから、イヤだったんだよね。

心配のない老後、おしゃれで機能的な家具、女性の社会参画とか、充実した教育とか… そりゃそういうことは人間社会にとって、すごく大事だけど、フィンランドを知れば知るほどわかる。そんな事だけじゃ人間は絶対に幸せになれないんだ、と。

だからフィンランドに関する、こういう冷静な分析が読みたかった。

しかも著者は今をときめく社会学者の古市憲寿先生ですよ! もう!(笑)とても嬉しい。古市さん、ありがとうございます。古市さんはノルウェーにも留学経験があるから北欧とはもともと縁があるのだ。今度ウチのコンサートにもぜひ来てもらいたい!…それはさておき。

古市さんとトゥーッカ・トイボネンさんが、いろんなフィンランド人の論文を紹介しながらフィンランド社会の内側を紹介していく。

そうなんだよね。この世を見渡してみれば、この地球上に手放しで幸せな人など誰もいないことが分かる。フィンランドだって、最初からすべてを持っていたわけじゃない。っていうか、そもそも資源も何もない持たざる国だ。大国の都合に翻弄されてきた歴史。そんな中で、みんなが努力して考えて必死で頑張ったから、今のこの国を作り上げたのだ。だから素晴らしいのだ。最初から存在する単純な楽園なんて、この世にはどこにもない。

こういう視点って、すごく大事だと思う。特に音楽の仕事していれば。音楽って、そりゃあ聞いてて楽しい気持ちを分かち合うものかもしれないけど、私は持論があって、人は寂しいから音楽を聞くんだと思うんだ。少なくとも本当に音楽が好きな人はそうだと、私は思う。いや、あくまで持論ですよ。ほら、たとえば友達と話をしている時、美味しいものを食べている時、本当に嬉しい時、音楽なんか聞こえてこないでしょ… ほんとに寂しい時、落込んだ時、そこまでマイナスな気持ちにならなくても日々のウサを脱却したい時、そういう時に人は音楽を聴くのだと思うし、私がプロモーションしている音楽はそういう時に聞いてもらいたいんだ。で、聴く人に元気になってほしいのだ。音楽ってそういう存在だと思うから。というか、私がそう信じたいから。

だからフィンランドの事をこんな風に理解しないと、私がプロモーションしている音楽は理解されないと思う。確かに、フィンランドは、ある程度くだらない社会問題については解決を見たように見える。だからこそ、それでも発生する彼の地の人の悩みとか、それでも起こる日々の大変さとか、そしてもちろんさらなる日々の葛藤と努力とか…そういうところを理解しないと、少なくとも私がプロモーションしている音楽の本当の部分は伝えきれないと思うんだよね。ちょっと日本の社会にくたびれた「かもめ食堂」みたいな気持ちになりたいだけの人に、ウチの音楽は響かないと思うんだよ。

フィンランド人はすごい国を作ったから偉いんじゃない。それはあくまで結果でしかない。フィンランド人は努力家で勤勉だ。すごい悩んで努力して、試行錯誤しながら、自分でいろんなことの責任を取りつつ、それでも前向きに進んできたから偉いのだ。そして結果はそうやって努力していれば、個人であっても国家であっても自然についてくるものだ。だから上手く行っているのだ。外野の私たちがフィンランドから何か学ぼうとするときに、素敵な結果ばかりをみていては本当に大事なものを見失う。私がボヤボヤしている間にフィンランド人は、もうすでにさらに高次元の悩みや問題に向ってすでに戦い始めている。

あとは、まぁ、何度もここでも書いているけど日本は人口が多いのがそもそもダメなんだと思うけどね。北欧やヨーロッパの決断力も機動力のある国を見ているとホントにそう思う。

そして、これからも、ますますフィンランドは進化していくだろう。彼らから学ぶべきところは、ホントに多い。超お薦め!



PS
とか書いていたら、デンマーク大使館さんからこんなFB投稿が。ものすごく大事なことを言っていると思う。やっぱり北欧から学ぶことは本当に多い。

PPS
かもめ食堂の舞台になったカフェスオミ。オーナーが変わったと思ったら店員は全員日本人なんだそうな…ちょっと笑える。フィンツアーさんのツイートより