アンディ・アーヴァイン ポール・ブレイディ 6


もあわせてお楽しみください。

M(DJ)「今、二人はダブリンに住んでいるのよね」

A「イエス。僕はファーマナーに家を持っていて…」

P「あそこは隠れ家みたいな感じだよね」

A「そっちを家と呼びたいんだが、ダブリンにいることが多いかな」

M「ポールはダブリンよね。北に帰ろうと思ったことはない?」

P「北に帰りたいとは思うが、なかなか時間もない」

M「“The Island”みたいな曲を書いて、たとえば北の状況がこれほどまでに変わったことについて何か思うところはありますか?」

P「うーん、確かに多くが変わった。だが、まったく変わっていないとも言える。物事が根本的に本当に変わるためには時間がかかるだろう…まったく問題とは呼べなくなるまでは、まだまだほど遠い。まだそういう境地にはとても達していないね。が、うん…確かに変わったとは言えるね」

M「アンディは何かプロテスト・ソングを書いてみようと思ったことはある?」

A「ウディ・ガスリーが僕の最初のヒーローだったからね。彼がもっている政治的な視点をすべて尊敬していた」

M「60年代に影響力を持っていたプロテスト・ソングは今でも強いと思う?」

A「プロテスト・ソングという呼ばれ方は好きではないのだが、… 一部の人が多くのお金を持っているというのは、あまりフェアではないと思うんだよね。まだ多くの飢えている人がいたり…貧困にあえいでいたりするのに、一部の人は極端に金を儲けている」

P「それは今でも変わらないことで、そういうことがウディ・ガスリーに君が惹かれた大きな最初の理由じゃないかな。僕に関して言えば、僕は絶対に政治的なソングライターではない。“The Island”だって政治的な曲ではけっしてない。たまたま政治的に受け入れられた、というだけで…」

A「僕の社会的な曲のほとんどが、過去のことを歌った歌が多い、ということだね。炭坑夫の歌とか… 僕がヒーローだと思う人々のことを歌った歌が多い」

P「僕はアンディのことは、政治的というより、歴史が好きなシンガーだと思うな。政治的というよりも歴史的ドキュメントを扱った歌が好きだということじゃないかな」(さすがポール、よく分かってる!)

A「そうだね、本当にそうだ。僕はアイルランドや世界で今起こっていることを歌ってディベートしたいのではない。それは難しすぎることだと思うんだよね。時間は変わるし、状況も変わる…歌はすぐに廃棄されてしまうかもしれない。書くのにこんなに時間がかかるのに明日は意味がなくなる歌なんか誰も書きたいとは思わないだろ」

M「ポールはどんな風にして歌を書くの?」

P「正直に答えると、僕にも方法は分からない。すごく不思議なプロセスで、たとえば読んだ本がインスピレーションで、さらに5年前に書いたメロディにそれがフィットしたり……それで、さぁ曲を仕上げようと思って仕上げる…とか…。本当にいろいろさ。ただ言えることは決まりきった方法では書きたくないんだ。実際どうやって歌が出来上がっていくかは僕にも本当に分らないし、そのプロセスを知りたいとも思わない。というよりか、このまま分からないのが、きっと良いのだと思う」

A「それはおもしろいなぁ。だってポールが曲を書き始めたころって、まるで訓練みたいにして書いてたから…」

P「そうかもね。当時はなんとか良い曲を書こうとしていたのだと思う。どうしたら良い曲が書けるのか…。どのレベルで、歌の魅力が伝わるのか…うん、本能的に分かる事は多いよ。でも実際曲を書くのは、とても時間がかかる」

A「でもポールの言う、決まりきった方法で書きたくないって分かるなぁ。そして曲が出来る時のあのワクワクした感じは、とても共感するね! あぁ、これなら伝わる、って、これなら自分の思いを届けられる、って。そう思えるところにいたった時の感じとか」

P「小説にすると500ページくらいのものを3分とか3分半で言わないといけない。そんな短い時間で自分の言いたい事を伝えるのは本当に大変だ」

M「ヒット曲を書けた時、というのは自分で分かるものなんですか?」

A「僕自身が満足できる曲が書ければいいわけで、それを他の人がまた別のレベルで好きになってくれればいい、ということさ…。僕はヒット曲は書かないだろうなぁ」

P「でもあのオドノヒューの歌とか、ウェスト・コースト・オブ・クレア(Sweet Country Clare…というかMy Heart's tonight in Irelandですね)とか、あれらはすごいヒットだよ」

A「うーん、たしかにオドノヒューが書けた時は、これはダブリンでは受けるかも、とは思ったけど…」

P「そうだよ、あれはヒットだよ。恥ずかしがるなよー(笑)」

そして、アイルランド人ではやっぱりこの曲に思い入れている人はホントに多いね。
ポールの言うとおりレバノンの空は燃えているし、子供たちはいまだに通りで亡くなるし…何も変わっていないのかもしれない。


ポール・ブレイディはもうすぐ来日します。10月10日、11日。土日。東京駅の目の前のコットンクラブですから、遠くの人も是非! 火曜日には京都に行きます。13日、磔磔。すべての詳細はこちらから。

また来日記念盤、The Vicar Street Sessions Vol.1は、9/20一般発売。ウチのCDショップでは先行で発売しています。ヴァン・モリソンとポール・ブレイディのデュエット! すごい。商品の詳細はこちらへどうぞ。