ムーア氏。ファミリーネームが示す通り、時々クラダーリングをしている通り,実はアイリッシュ系だと思っている。確かにこの正義感の強さはアイリッシュだよな。
いや〜面白い。すっごく面白かった。実はマイケル・ムーアは近作はほとんど見逃しており「911」は友人にDVDをもらったのだが、まだ見ていない。つまり「コロンバイン」以来見ていなかったことになる。で,思った。こんなに面白かったっけ?
「ボウリング〜」は映画が良かったが、どうも本がおちゃらけすぎていて(翻訳が良くない、という説もあり)、そこが好きではなかった。なので、あれ以来マイケル・ムーア作品は積極的には見ていなかったが、今回改めて監督の新作を見て、なんか監督変わらないよなぁ〜と思いつつ、いや、こんなに面白かったっけ、とも思う。何度も映画をみながら笑ってしまった。
注目のフィランドはやはり教育の素晴らしさが紹介されていた。「アメリカは統一テストを辞めたほうがいいんじゃないの」とか言われてるし…(笑) テストや大量の宿題を廃止したフィンランド。そしてみんな子どもたちは言語を何カ国語もあやつる。
私が特にびっくりしたフランスの給食。あれだけ素晴らしいものを小学校でも出しているなんてすごい。陶器のお皿でカトラリーもきちんとして4コースくらいになっている。(当然お皿やカトラリーもそのたびに変えられる)それなのに何とアメリカよりも予算が少なくすんでいるのだそうだ。そしてアメリカの給食もある意味すごい。家畜の餌みたいだ…。
アイスランドの女性役員さんたちもすごいね。アイスランドの銀行が破綻した時、唯一つぶれなかったのは女性が役員してた銀行だったんだって。みんなスタイルもよくって美人で、スポーティな感じで、チャキチャキしててかっこ良かった。
ノルウェーの刑務所にもびっくりだ。でもノルウェーの再犯率はなんと驚異の20%で、世界の中でもっとも低い国の1つなのだ。例の島での銃乱射による大量殺人が起こった時に17歳の子どもを殺されたという父親は涙ぐみながらも「死刑はのぞまない」と発言する。かっこよかった。あの時も非常事態宣言など出さず「ノルウェーはノルウェーのままで」みたいな偉い政治家さんの発言があったのをニュースで見たけど、あれには感動したよね。1人の凶悪な異質な人間のために今までの素晴らしい,みんなで実現した美しい国を捨ててはならない、ということなのだ。そういうプライドが感じられる。ホントにすごいよ。
世界を知る事で、そうやって自分たちが抱え込んでいた常識やしょうがないと言って受け止めてきていたことが、いかにくだらないものかということを認識することになるわけだ。そういうの、私もいつも分かっている事だからこの仕事してるわけだけど、あらためて思ったよ。世界の文化を知ることは面白いことだって。
そしてこの映画を見ているうちに「あぁ、こういうオチになるんだろうな」と気付くのだけど、誰もが「それ、もともとアメリカのアイディアだったんだぜ」って言うところ。もととも素晴らしいアイディアはすべてアメリカにあった。アメリカですべてスタートした事だ。でもそれを実際に実現させ継続させ定着させたのはヨーロッパの小国だったりする。それを思い出そうぜ、というメッセージが監督の映画に込められている。
ベルリンの壁崩潰も紹介し「まさかあの壁が一夜にしてなくなるとは思ってなかった」とポジティブなメッセージを送る。「だからオレたちにもできる」と。ほら見ろ、他の国では可能になっている。だからオレたちにも絶対にできる。やれば出来るんだよ、と。
ただ1つマイケル・ムーアに反論したいことがある。紹介されたのは、ほとんどが小さい国で、アメリカや日本は何をやるにも人口が多すぎちゃって、日本なんてみんな選挙に行かないし、ホント駄目なんですよ、と。あ、でも、アメリカは州制度が強いから日本よりは可能か… そして一方でフランスはかなりの大国か…(6,000万人)あとドイツもそうだよね(人口8,000万人)。うーん。そうか。そうだよね。日本も頑張らないとね。
あと惜しむらくは、マイケル・ムーアのすべての作品に言えることなんだけど、あくまでアメリカ人が観るということを前提に作っているところ。まぁ、でも、海外でムーア作品観ている人もそれを前提で観ているから別にいいんだろう。あと、まぁ、やっぱりアメリカ人ならではの大味感は払拭できない。でもあまり難しくしても…、観る人に通じないからね。監督は自分のメッセージを届けるために映画を作っているからね。(良い作品を作る為だけに作っているのではない、というところが重要)マイケル・ムーア苦手、みたいなこと言う人、時々いるけど、それは理解できる。
でも、とにかくこの映画を見ている間は、そして見終わってしばらくは、私はえらくポジティブな気持ちになれたのであった。皆さんも行くといいですよ。ほんとに元気になれます。「コロンバイン」よりも私は全然好きでした。
PS
しかし社会派ドキュメンタリーだからこそ、このくらい見応えがあり、きちんと撮影され、しっかり演出されるべきだよね。(あ、また「べき」とか言っちゃった)そして興行上もメジャーなラインにのせて、きちんと商売して、多くの人にきちんと届けるべき。そういうのをしっかりやっているマイケル・ムーアはホントに素晴らしいと思う。こういう例を見ちゃうと「FAKE」とか,ダメダメだよと思うのだ。強いメッセージを届けたいんだったら、最低ラインの制作のクオリティはきちんと守らないと。映画の場でも音楽の場でも社会派気取って、社会派だってことに甘えてクオリティの低いもんが許される…ってのが、私は実はすごく嫌い。社会派だからこそ、クオリティの高いもんリリースすべき。そして貧乏くささを払拭すべき。貧乏なのはいい。貧乏は事実だから。でも「貧乏くさい」のは辞めようよ、と。(あ、いいんですよ、音楽も映画も表現活動ですからねー 別にクオリティの低いもんリリースしてもねー/棒読み)
PPS
もっと言っちゃうと,小さい小屋でやっているからって、下手くそな音楽発表してたらホント救いようがない。そういうことなんです。例えばヴェーセンの公演なんて武道館でやってるどんなバンドより全然かっこいいぜ!って私はいつも思っているけど(私もバカで幸せなキャラだよな…)ちなみにヴェーセンの今度の来日公演情報はここですよ。