日本からの作品エントリーを増やそうという意図なのだろうか、最初にSXSWの映画祭のフェスティバル・ディレクターのトークもあり。なかなか興味深かった。
何はともあれこのドキュメンタリー映画です。映画館で上映されるのは、どうやら昨晩の1回だけだったらしい。なので私も早々にチケットを予約しておいたのでした。会場は満員。もっとも100名程度の小さな小屋なのだけど。
面白かったけど、音楽ファン以外が見ても良く分からないかも。だから一般の映画館でかからないという事もなんとなく理解できる。でもタワーレコード限定でどうやらDVDは発売になっているらしいので、興味持った方はぜひチェックしてみて。
アメリカのサクラメントでスタートしたタワーレコードの栄枯盛衰のドキュメンタリー。一時はホントにウハウハ、イケイケだったらしい。その「イケイケ」の様子もうかがえるのだが、それはちょっと下品なくらいだ。でも従業員をずっと大切にしてきた、と創業者は言う。ドレスコードはない。好きな恰好で仕事が出来る。従業員たちも創業者を尊敬している。そして時代は流れ、いつしかそのイケイケのビジネスも衰退の道へ。タワーレコードは一番利益が出ていた日本を売却し、ついに2004年だったかな…アメリカでの最後の店舗を閉じる。元日本支社長のキース・カフーン氏がもっと出て来るかと思ったけど、アジア地域の店舗の開発のところで一瞬出て来ただけでほとんど彼の存在については言及されなかった。最後は日本にある本社ビルにファウンダー/創始者であるラス・ソロモン氏が表れて、今は関係なくなってしまった日本の授業員たちに拍手で迎えられるという温かなエンディングとなる。時代は変わってもタワーの志は受け継がれているよ、ということだろうか。そして日本ではまだタワーレコードが85店舗あるんだよ、というテロップが流れて映画は終わる。でもこれから先、どうなるかは誰にも分からない。
70年代からずっと続いてきたLPの流れが、実は80年代に入って衰退していたということは私はよく分かってなかった。そしてそれを救ったのは実はMTV、そして「スリラー」の巨大ヒット(それによって人々は店を訪ね他の作品も買うようになる)、そしてCD化という波だった、とも。業界にシングルCDがまだ存在していたら、こんなにダウンロードにやられちゃうことはなかっただろう、と発言している人もいた。ふーん。
確かに創業者チーム、みんなすごい人たちだったのだろうけれど、でも本当にビジネスセンスが凄ければ、タワーだって、今のアマゾンみたいな通販の王者の地位に就くことが出来たかもしれないし、こればかりは誰にも分からない。(もちろん私は多くのインディレーベルの人たち、また小さい出版社の人たちと同じで、アマゾンの存在を肯定してはいない)ちなみにアメリカでのタワーレコードの通販サイトは散々な結果に終わる。
自分たちはタイミングと場所、そして運に恵まれた、と創業チームの1人は言う。そうだろうね。ただ「シング・ストリート」の感想ブログにも書いたけど、あの頃が最高だったみたいな事は思いたくないけどね。でも仕事の成功…とくにこんな巨大な成功は時代が味方しないと不可能だ。ブルース・スプリングスティーンやエルトン・ジョンなども出てきてタワーレコードの素敵さを語る。あの頃はホントに素晴らしかった、と。
日本でタワーレコードは生き残るのだろうか。いずれにしてもウチもCDを積極的にリリースしなくなってだいぶたつのだが、今でも非常にお世話になっているので、なるべく続いてほしいと私も願っている。というか、そもそもウチのような小さなレーベルが90年代、小規模ながらもCDを売ることが出来たのは、本当にタワーレコードのワールドミュージック・コーナーで働いていらした理解ある担当の皆さんのおかげである。それはまったく疑いようがない。本当に本当にお世話になった。
しかし音楽業界いったいこれからどうなっちゃうんだろうか。この映画に何か答えが隠されているんじゃないかと思って観に行ったのだが、それはかなえられなかったな…。
タワーの資本って今、どうなっているか知らないけれど、音楽に対して多くのユーザーがお金を出さなくなっているという厳しい状況の中、いったい彼らがどういう方向に進んで行くのか、とても興味深い。とにかく今や供給が多すぎて、需要がまったくついてこない。それこそ、私たちスタッフは、最初の話に戻るが供給過多な状況で生き残るために、SXSWのように供給したい側=アーティスト側からお金を取る方法でしか生き残る路はないのか? となるとすでに大きなアーティストや巨大資本でないかぎり生き残れないではないか。もちろんアーティスト側から雇われることがダメとは言わない。素晴らしい名マネージャーとして活躍されている方もたくさんいる。が、私もあくまで音楽を選ぶ側でありたいんだよね。ワガママかなぁ。
とか思いながらモンモンとして帰ってきたらチャーリーこと鈴木謙介氏のこんなブログがタイミングよくアップされてた。さすが、チャーリー、と思ったのだった。学生たちの活動も、音楽業界と変わらないな。というか、日本のどんな職業においても状況は同じようなもんなのかもしれない。
チャーリーの言葉を借りれば、「一生懸命、ほぼブラックというレベルまで極端に頑張り、のめり込む側にとっては周りの要求がどんどん高くなるし、一方で中途半端な意思しか持てず「観る側」に回ってしまう層との格差との心の距離はどんどん開いて行ってしまう」
そして音楽業界も「食えない人たちが市場から退出することで供給を減らす」という事に結びついていかないのは「他にも働き口がある」「退出しても他の働き口ですぐ働ける」という条件が充たされないためだ。うーん、なるほど。是非。興味深いので全文を読んでみてください。
で、このドキュメンタリー映画。上映はもうないけれど、DVDは売っています。Amazonで買っても字幕ついてないので、こっちで購入ください〜。
それにしても、すみませんね、なんか出口のないブログで…。こうなったら、もう自分が自分の職業人生をなんとか逃げ切れれば、もうそれで良しとするべきなのか?と思う。でもそれじゃあ若い人たちに本当に申し訳なさすぎる。 ALL THINGS MUST PASS。今の状況だって、いつまで続くか分からない。が、一つ言えることは、おそらく状況は悪くなる一方で、きっと良くはならないだろうな、ということだ。なんとかしないといけない。
でも今日も元気に行きましょう!!! グリーンランド犬を見習って。ご飯が食べられて、そして思いっきり走れれば、それだけで最高の人生…と思えるようにならなくちゃ。…っていうか、だからこそ、たぶん私は今、極地とか、探検とか、辺境とか、そういうのに憧れるんだと思う。もう都市文化は駄目だ。限界がある。辺境をテーマにしたコンサートやります。詳細はここ。