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2017年1月26日木曜日

ICE STATION講座 第10回:荒野政寿さん(4)

さて今週はクロスビート編集部の荒野さんに出演いただいております。第1回第2回、第3回と続き、第4回の今日は主に荒野さんの「マイク愛」を中心に語っていただきます。そういえば、マイクが来日するのはR.E.M.の武道館以来! 前の会場と比較して格段に狭い磔磔とWWWで何を思うんですかね…マイク(笑)

★ ★ ★

荒野「個人的にシンガーとしてのマイク・ミルズが、すごく気になってて…映画のサウンドトラック盤で『Back Beat』って覚えてます? ビートルズのハンブルク時代を描いた映画。ビートルズの前身バンドが歌っているという設定で、ドラムはデイヴ・グロール、ギターはドン・フレミングやサーストン・ムーアが弾いていて。これに入っているっていう有名な曲のカバーで、マイクが柄にもなく不良ぶって、ワイルドな感じで歌ってるんですけど… 全然不良っぽくない!(笑)」 


のざき「(爆笑)」 

荒野「どんなに声を振りしぼって歌っても、1ミリもワルさが滲み出てこないマイク・ミルズがたまらないです」 

Backbeat - Roadrunner

荒野「マイクのファンのサイト、本当に面白くて。マイクがヴォーカルを取った曲がいちいちリストになってたりして、とても他人とは思えないんですよ。マイクはビッグ・スターのトリビュート・ライヴで歌ったり、バンド外の催し物では割とリード・ヴォーカルを取る機会があって。今回のICE STATIONもそうですけど。R.E.M.では、例えばアンプラグドをMTVでやったときにトロッグスの《Love Is All Around》をマイクがリードで歌ったり、他にもシングルの裏面でそっとクリスティーの《Yellow River》を歌ってたり、甘めのポップな曲をカヴァーする場面で登板しがちですね」 

 LOVE IS ALL AROUND 

荒野「で、何を言いたいのかというと、R.E.M.ってマイケル・スタイプだけじゃないよ!って事で」 

 のざき「ほんとそれは声を大にして言いたいよね」

 荒野「どうも解散して以降ますます、R.E.M.=スタイプみたいなイメージが強まってる気がして。それは違うよ、と」 

のざき「特に日本ではそうだったかもね。赤尾さんとも話していて気付いたんだけど、ロックを伝える媒体が紙だったからサウンドっていうより…」

 荒野「そう、生き様とかね…。そっちが話題になる事が多かった。だから音楽そのものの話をしてもらえた機会が、実はすごく少ないんですよね」 

「あとね、ベーシストとしてのマイクも素晴らしいんですよ。ピーターはギタリストとしてはアルペジオや単音弾きを駆使する緻密なタイプで、コードをジャーンッとかき鳴らす場面が少ないんで、正直演奏にはパンチがない。ピーターが細かいメロディを弾こうとしてどうしても隙間ができてしまうところを、マイクのベースがうまく補ってるんですよ。それも、しっかりルート音を弾くような手堅い感じじゃなくて、ベースでさらに別のメロディを足してる感じなのがアマチュアの発想らしくて、そこもたまらなく愛しい(笑)。初期のEPに入っている《Gardening At Night》のライヴ映像とか見ると分かるんですけど、結構グイグイ、リード・ベースみたいな感じで弾き倒してて。フレーズの動きが多い分ミスもしまくるんで、抱きしめたくなるんですけど(笑)。そういうマイクのベースが、曲に推進力を与えてる。初期は特にですけど、果敢にメロディアスなベースを弾く場面が多かったように思います」 

Gardening At Night

「どこまで考えてやっていたのかわからないけど、ライブ・バンドとしてもR.E.M.は自分たちなりに役割分担をきっちり考えてたんじゃないですかね。今初期の映像を見ても、無駄は一切ないのに演奏の情報量は意外と多くて。とてもかっこいい」 

「マイクのベースのスタイルも時間がたつにつれて徐々に変わってきて、じっくりボトムを支えるベースを弾くようになっていくんですが。歌心のあるベーシストなのは間違いないと思います」 

のざき「なるほどね。そしてプレイヤーとしては、楽器を選ばないというか、今回もいわゆるバンドとしてまとまった団体じゃないから、スコットといろいろステージの楽器を調整しているんだけど、まったく楽器も環境も選ばないんですよね。そこが感心しちゃう。ホントにすごいわ、あの人たち。マイクもスコットの使うベースを使うからいい、なんて言っちゃって。ホントにすごいプレイヤーってそうなんだよね」 

荒野「バンマスはスコットなんですか?」 

のざき「バンマスが決まってるわけじゃないけど、一応ね。何か疑問があると最初にスコットに投げて、そこからたまに直接本人に聞いてくれ、って事になる時があるけれど、とりあえずいったんはすべてスコットですね。一人一人追いかけるのは大変だけど、ミュージシャンと話すのは楽しいので、これは私にとっては楽しい作業ではあります。で、10年前のマイナス5で来た時って、どうやったんだったっけ?って思い返してみたら、あの時はロビン(・ヒッチコック)の“オレたちはビートルズと一緒”のひと言で終わった(笑)」 

荒野「あれくらいのキャリアの人でも、そんな湯加減でやってるっていうのがいいですね」 

のざき「どういうところでもやれちゃうんだよね。そしてそれが楽しいんだと思う。それこそR.E.M.みたいにローディがいっぱいいて、どこの会場でも同じコンディションで、チューニングですら自分でもやりません、ってのは楽だけど、つまらない。アンプもなんでもいいとか言ってんですよ。ホントにすごい。日本のライヴハウスにあるローランドのJCって、あんまり外国人ミュージシャンで好きな人が多くなくって、フェンダーがいいとか、マーシャルがいいとか言うのが普通なのだけど、それもあるものでオッケー。ホントにイージー。そうだ、マイクのクラシックのCD聞きました?」 

Mike Mills & Robert mcDuffie - Nightswimming 

 荒野「あー、『Concerto For Violin, Rock Band And String Orchestra』ですか。あのアルバムはびっくりしましたね!」 

 のざき「えっ、そう? 意外だった?」 

荒野「インストゥルメンタルで、あぁいう本格的なオーケストラ作品でしょ。やっぱりマイクが歌うポップなソロ・アルバムを、自分はずっと待っているから!」 

のざき「あ、そうか!(笑)」 

荒野「なので、最初は『なんだこれ?』って正直思ったけど。でも彼は音楽的な素養がある人なので、クラシックも出来ちゃうんですよね」 

のざき「そうかー 残念。ヴォーカル・アルバムを期待していたか…。でも、ライヒみたいのがいっぱい入っててかっこいいよ」 

荒野「よく聞くとなかなかいいアルバムですね。マイクらしさも出てるし。あのアルバム、リリースされたことすら知らないR.E.M.ファンも多いんじゃないですかね? 出たばっかりなのに」 

リンダが送ってくれたマイクのアーティスト写真
のざき「あのヴァイオリンの人と友だちらしいんだけど… でも、あぁいうのをリリースしたとしても、ウチの伝統音楽のバンドみたいに自分で販売用に持って来る、とか、そういうのないんだろうなー(笑)もっともR.E.M.のマイク・ミルズ様が“これ売って”って持ってきたら笑えるけど」 

荒野「物販どうこうっていう商売っ気はなさそう」(ところがどっこい、ピーターは自分のアナログを盤を多少持ってくる予定。マイクについては現時点では不明)

「あのアルバム、いいんですけど、僕にはあれが彼の活動のメインだとはとても思えないんで。いずれちゃんとマイクが歌うソロ・アルバムを作ってほしいんですよね。ピーター・バックのソロ・アルバムは、R.E.M.を期待して聞くと質感がやや違うでしょ。声も結構クセがあるし。その点、マイクの声を聞くと、『ああ、やっぱりR.E.M.だな』と思えるんですよね」 

 のざき「強調しますね〜、そこ」 

荒野「やっぱりあの声がないとR.E.M.じゃないですから。そう思っているファンは多いと思いますよ」 

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ICE STATION、開催までもうすぐ。渋谷と京都で公演があります。チケットの通販、そろそろ締め切りますので、お申し込みはお早めに〜

2月7日 京都 磔磔
2月9日 渋谷 WWW
2月10日 渋谷 WWW
詳細はこちら http://www.mplant.com/icestation

with ナヌーク、カート・ブロック、ピーター・バック、スコット・マッコイ、マイク・ミルズ、リンダ・ピットモン、スティーブ・ウイン




PS
荒野さんが手がけた名著の数々。アイルランド音楽本とアコーステイック・ギター本にはウチのアーティストも多数ご紹介いただいております。是非チェックしてみてください。