ICE STATION講座 第14回:五十嵐正さん(3)

さてアクセス沸騰の五十嵐正さんのICE STATION講座。第1回、第2回に引続き第3回目の今日で最後になります。明日はゴメス・ザ・ヒットマンの山田稔明さんが登場しますよ。
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のざき「応援団長、よろしく頼みますよ。なんかタッド、ICE STATIONの宣伝になるような事、熱く語ってよ!」

 五十嵐「どう語ろうかなー」

 のざき「例えば見どころとかさー」 

五十嵐「っていうか、見どころも何もないよね。このメンバーなんだからさ。みんな来ないとダメだ! R.E.M.であり、ドリーム・シンジケートであり、マイナス5であり、ヤング・フレッシュ・フェローズであり…」 

のざき「ベースボール・プロジェクトであり!」

 五十嵐「こういうプロジェクトが実現するのも、スコットが中心にいるからだろうね。彼はホントに友達と音楽を演奏することが何よりも大好きなんだ。10代の頃とまったく気持ちが変わっていないんじゃない? そういう自分たちの音楽を愛する気持ちを広げて行きたいっていうオープン・マインドを持っていて、みんなと一緒に音を出すのが大好き。そんな気持ちが伝わってくるところがいいんだよ! スコットとピーターにとっては、R.E.M.という世界的なビッグ・バンドで演奏することと、近所の友だちと演奏することに違いは全然ないんだよね」 

のざき「そうなんだよ、友だちと音楽を一緒にやるのは楽しいんだよね!」 

五十嵐「ちょっとアイリッシュ・ミュージックの楽しさにも似ているわけだけど…」 

のざき「わかる。タッドはそういうミュージシャンシップ好きだよね。そういやバラカンさんがいみじくも“音楽は人と一緒に聞くものだ”って言ってたけど、まさにそれだよね。ま、バラカンさんはラジオって主語で語っているわけなんだけど、それはバンドにも言える。バンドだったら、もっとそうだよね」 

五十嵐「1人でラジオと聞いていても、誰かがどこかで同じものを聞いているって事だよね。そして誰かとシェアしてる、っていう事だね…。良い事言うね」 

のざき「そう、音楽はシェアだからね。私も最近やっと気付いたんだけど」

五十嵐「だから、ある意味お客次第っていう事もあって、レパートリーはたくさんあって、50年代から80年代からカバーもたくさんやってるし、何でも出来る人たちなんだから、リクエスト叫んでもいいし、お客さんもホントに楽しめるよね。スコットなんて日本のバンドと友達だったりするし。そういう気持ちが演奏する音楽に出ているからね」

「お客さんにも、R.E.M.のメンバーが2人も来る、サポート・メンバーも入れたら3人、4人も来るっていうことではあるんだけど、それだけではない、って分かってほしいよね。R.E.M.はもう一時期は世界で2,000万枚、3,000万枚を売っていたバンドで、確かにスーパーグループだけど、でも、そんな連中が単純にギター弾いてね、ガーンってやるのが好きっていう…そういう音楽を作るのが今も大好きっていうところ。それがピーターたちの一番すごいところ、愛すべきところだから、そういうことを理解して、それを楽しんでほしいよね。もちろん北極とか地球温暖化とかICE STATIONが届けたい何らかのメッセージっていうもあるのだろうけど、基本はみんなで集まってみんなで楽しみましょう、って…そういうことだからね」 

のざき「いいねぇ。是非ファンとしてはそこを掴んでほしいよね。それに“みんなで一緒に楽しみましょう”って、ノルウェーのドキュメンタリーのオープニングでまさにミニーも言ってた事だよ。それこそがICE STATIONの一番のメッセージだって」 

五十嵐「スコットとピーターがロビンと来日した時に聞いた話で、一番感心したのはあれだね。この2人はインタヴューとかの機会があればいつだって新しいバンドを紹介し、先輩に敬意を表するスポークスマン的な役割をずっとやってきたんだ。そして前座に起用したり、録音に参加したりして応援してきた。それで、ツアーに出ていないとき、ちょっと気になるバンドが地元や近くの街に来たら、できるだけ見に行って,終わったら楽屋に行って励ましたりとかしてるんだって」 

のざき「うわ〜、えらいねぇ、それ。若いバンドからしてみたら、R.E.M.が見に来てくれて、楽屋にまで来てくれれば,嬉しいもんねぇ!」 

五十嵐「で、車社会のアメリカでは、まあ車走らせて2時間くらいの距離は行動範囲なんだけど、スコットの場合は友達のバンドに会いに行く、若いバンドを励ましに行くのだったら、5時間くらいまでの距離は全然平気だっていうんだよ。そのためだけに5時間車飛ばして行くっていうんだよ! これはすごいよね。そうやって、昔からの友達との交流をあたためたり、若手にも頑張ってほしいと伝えて、気に入れば一緒にやりたいっていう…。マイナス5なんか、まさにそういう成り立ちのバンドだからね。オレ達からしてみれば、なんでスコットはこんなにたくさんバンドやってるんだよ、ってなるんだけど、彼にとっては自然なことだから。やりたい奴はたくさんいるのだから、時間がある限りやるでしょう、ってこと」

 のざき「いいね、それ」 

五十嵐「いや〜、この連中が来るんだから、すごいですよ」

 のざき「でも呼べばこの人たち、いつでも来るんだよ(笑)。私も10年ぶりにスコットとピーターをやるわけだけど、ホントに楽しみ。もちろん2006年に一度やって以来、また来たいってのはずっと彼らからも言われていた事だけど,あのツアーこそ、ものすごい赤字だったから、そう簡単には再度呼べなかったし。でもずっといつかまたやりたいと思ってた。だから今回実現できて良かった…ってまだ終わってないけど」 

五十嵐「でも、ホントこれ、オレはすごく良い機会だと思っているんだけど、最近80年代を振り返るっていうのは、結構あるでしょ? 第二次ブリティッシュ・インベイジョンとか、亡くなったジョージ・マイケルとか、あのへんの時代の音楽…あなたのTOP40愛好会もそうだけど、あの時代は洋楽をみんな聞いていた時代だったんだよ。MTVっていうアウトレットもあったしね。だから今でもコンピレーションが出たり、多くの人が振り返って懐かしがったりしているでしょ。でも、ポップ・チャートに上がったアーティストの話ばかりなんだよね。同じ時代のR.E.M.とかドリーム・シンジケートとか、アメリカのギターを中心としたああいうバンドの活躍って、今まさに今一度振り返っていい事だと思うんだけどね。いったいあれはなんだったのか…っていう。あの時代は、MTVのキラキラした部分だけではなかったんだから、その点も含めてこの来日、『OUT OF TIME』のリイシュー… ちょっとみんな振り返えろうよ、一緒に考えようよ、っていうさ」 

のざき「この前、荒野くんと話してて,この当時ロック聞いてた人って今どこにいるんだろう、って聞いたら、今、みんなアイドル聞いてるんだって(笑) 

五十嵐「ホントそうなんだよ。悲しいけどね…」

 のざき「あははははは…でもアイドル、楽しそうだからね」 

五十嵐「ま、それはとにかく、来日が待ち遠しいよ」 

…となんとなくロックの衰退をうれいつつも、夜はふけていくのでありました。明日はゴメス・ザ・ヒットマンの山田稔明さんに登場いただきます。

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ICE STATION、開催までもうすぐ。渋谷と京都で公演があります。現在チケットは「当日精算」で受け付けております。

2月7日 京都 磔磔
2月9日 渋谷 WWW
2月10日 渋谷 WWW
詳細はこちら http://www.mplant.com/icestation

with ナヌーク、カート・ブロック、ピーター・バック、スコット・マッコイ、マイク・ミルズ、リンダ・ピットモン、スティーブ・ウイン


PS
こちらは五十嵐正さんのすばらしい著作の数々。特に「ヴォイセズ・オブ・アイルランド」「アコースティック・ギター・ディスクガイド」にはTHE MUSIC PLANTのアーティストのインタビューも多数紹介されていますよ。