ICE STATION講座 第6回:赤尾美香さん(4)


ピーター❤

好評いただいている当シリーズ。過去記事はこちらからご覧いただけます。

ICE STATION講座、各記事へのリンク
---------------------------------------------
 畔柳ユキさん 前半 / 後半
 赤尾美香さん  /  /  


★ ★ ★

のざき「例えば日本のミュージシャンでR.E.M.が好きな人って誰かいますか」

赤尾「ゴメス・ザ・ヒットマンの山田くん(後日登場していただきます)は絶対として、他に誰かいるかなぁ…。ホントに誰かいてくれれば分かりやすかったかもね! ただ日本への影響ってことになると、R.E.M.がグワッと来た頃に、グランジも上陸してて,あっちの方がムーヴメントとして分かりやすかったってのはあったかも。なんかパール・ジャムとか、ニルヴァーナとかにみんな行っちゃって、R.E.Mは、そんな中で、もうCMJでもなく孤軍奮闘的というか…。そのどこにも属さない感じが私としては良かったんだけど、面白さはなかなか分かってもらえなかったかも。アメリカだと映画『フィラデルフィア』で『Everybody Hurts』が使われたり、という話題もあった。これがいいシーンで使われてて、泣けて泣けて! 映画『マン・オン・ザ・ムーン』の同名主題曲もあったしね。アメリカでは(バンドが大きくなるための要素として)大きかったかもね。あとは、MTV時代にふさわしく、R.E.M.が作る一連のビデオはすごくよかった」

のざき「何が一番好き?」

赤尾「実は、評価の高い<Loosing MyReligion>は恐くて、あまり好きではないの。ピーターがギターを弾いていないというのに、ちょっと抵抗もあったし…。<Everybody Hurts>はいいねぇ」


「<Nightswimming>も好きだなぁ。暗いけど」


「あと明るいのなら『Shinny Happy People』とかね」


のざき「あぁ、あの曲、マイクの声がいいよね」

赤尾「あと私、アルバムとしては『Green』がかなり好きで…! でも、レコ社的にはセールス面で物足りない作品だったみたいね。ツアーの映像もリリースされているし、内容の良いアルバムだと思う。あの頃のR.E.M.は興行としては成功していたものの、レコードの売り上げとしてはちょっと物足りないと言われていたみたい。で、次の『Out Of Time』がドカーンと売れたから、レコ社はホッとした…っていうことらしいね。大枚はたいて契約したわけだし。次の『Automatic For The People』も大ヒット、でも、日本ではそれから数年後に出た『Reveal』からのシングル<Imitation Of Life>が、オリコン的には最大ヒット曲という不思議なズレ方で(苦笑)。


「ちなみに日本で1番売れたのは『Monster』、2位『Reveal』、3位『New Adventures in Hi-Fi』、4位『Automatic For The People』」といった具合。『Out Of Time』は10位にも入っていない。もちろん、発売年によって周辺状況も違うので一概には言えないけど、欧米との人気のズレは明らか。なんで『Monster』が売れたかといえば、この時はリリース・タイミングでの取材もきちんとやったし(日本国内紙メディアでの露出があった)、9410月のリリースで、来日公演が翌952月という流れの良さもあったと思う」

のざき「あと赤尾さんに聞きたかったこと。なんでR.E.M.は辞めちゃったと思いますか?(直球)」

赤尾「うーん… 最後のアルバム『Collapse Into Now』が満足できる作品だったから、それを作ってしまったというのが大きかったとメンバーは言っているよね。あそこで満足できるアルバムが出来なければ,次があったかもしれないけれど、今の自分たちに出来る最高の作品が出来てしまったからもう終わりだ,と。それは別に売れたとか売れないではなく、彼ら自身が納得のいくものを作ってしまった、ってことなのだと思う」

のざき「なるほどね。でも解散する前にもう1回ツアーするんじゃないか、って思っていた」

赤尾「みんなそう思っていたよね。辞めるにしてもね。でも、それも含めて彼ららしいかな…。意外と読めないバンドだったし、その読めないところが好きだったから」

のざき「ふーん。私なんて後からまとめて聴いているから、全然流れを把握出来てないのだけど、現役ファンとしてはアルバムが出るたびに驚かされてた、ってのはあった?」

赤尾「あったねぇ!! 『New Adventures In Hi-Fi』のアルバムを聴いた時とか、“どうしよう、私この人たちのファンを続けて行けるだろうか”ってホントに思った。全然理解できなくって。いまだに『Hi Fi』は鬼門かも…」

のざき「当時(8000年代初頭)、現地にライヴを観に行ってたわけでしょ?」

赤尾「うん。ツアーのたびに行っていたね。ウィルコがまだR.E.M.の前座やってた頃とか」

のざき「90年代に海外でライヴを観るとかすごいよね。だってこの頃ってチケットとるのも大変じゃん? 私は最初の海外でのライヴって91年、アイルランドなんだけど…クレジット・カードの番号をファックスしたり、ホントに大変だった」

赤尾「私は87年から洋楽雑誌で仕事をしていてレコード会社も協力してくれたからラッキーだったね。観に行くなら向こうにテレックス(!)打っておいてあげるよ、とか。で、帰ってくればそれを記事にも出来たしね」

のざき「そういう時代だよね…」

赤尾「最初のR.E.M.はフロリダのオーランドで観てるから、レコ社には協力してもらってないかもなぁ。チケット、どうやって取ったのか、記憶にないなぁ」

のざき「インターネットとかでチケット取れるようになったのっていつだっけ?」

赤尾「2000年前後じゃないかな。ほんとに当時に比べたら海外のライヴもだいぶ気楽に行けるようになったよね。私は、R.E.M.がいたおかげで知れたこともいっぱいあるよ。《Austin City Limits Music Festival》は、2002年の初回から数年は毎年参加していたんだけど、R.E.M.がトリの年もあってね。その時に初めてR.E.M.を観た日本の友達が“すごい!”って言って、“こんなバンドだと思わなかった!!”って。2000年代入っていても、そんな風に言われてたからね。日本に来るちょっと前だったかな、それは…」(2003年のことでした)

「やっぱり来ないと海外のバンドはダメだよね。R.E.M.とパール・ジャムはちゃんと来日してくれてればもっと違っただろうな、って本当に思う。日本でのフェスティバルも始ってたのに来てないじゃない? フジロックでいつかR.E.M.と思ってたけど、ギャラの面で難しかったんだろうね。レディオヘッドに比べても高かったんだと思うんだよね。アメリカのバンドだし。向こうじゃビッグだし。来てれば全然違っただろうな。本当に悔やまれる!」

のざき「私は結局R.E.M.は一度も観れなかったな。一度海外での公演に行きかけたんだけどね。ダブリンで連続コンサートやったでしょ? 知ってる小屋だし、1,300人くらいのR.E.M.にとってはちっちゃい小屋だったから、これはレアだ!って。で、チケット取ろうとしたけど瞬時で売り切れたっていう…」

赤尾「ライヴの映像は何か観た?」

ピーター❤
のざき「なんかドイツでやっている野外のやつはDVDを買ったよ。ピーターがピンクのシャツ着ているやつ」(左の写真)

赤尾「90年代のやつを是非みてよ。すごいから。『Green』の頃とか。みんな若くて、こんな時代があったのね〜〜っっ!って感じ。とにかくかっこいい!」

のざき「かっこいい(笑)」

赤尾「なんか“可愛い”っていいうんじゃないのだよね。“かっこいい”の」

のざき「ピーターがジャンプしているところとか観たいね。今、あんまりしないものね。腰かなぁ」

ジャンプしている瞬間はキャプチャ出来なかったけど❤
赤尾「床ぬけそうだもの!(←あ、こんなこと言っているよ)でもこの間,改めて聴き直したけど、昔のアルバムでも全然オッケーだよね。あぁいうギター・ロックは本当に普遍だと思う。ちろちろとアルペジオが鳴っているようなところもすごく好き。やっぱりピーターのギター好きだわ!と思う。あぁいう音を聴くとね。R.E.M.は、昔の曲は歌詞カードがなくて一緒に歌えないんだよね。最近はネットで歌詞が検索できるからいいけど、昔は歌いたくても歌詞カードが付いてないから歌えないじゃん!みたいな事がたくさんあった。英語ネイティヴな人が聴いても、何を歌っているのか言葉が聞き取れないというので有名だったから」

のざき「昔の洋楽にはそういう事よくあったね」

赤尾「R.E.M.こそ、研究本作りたいよ」

のざき「ホントそうだよね。再結成とかしないのかな…」

赤尾「そしたらホントに来日してくれないと困るんだけどねぇ。たぶんピーターは、マイケルがやりたいって言ったらなんだかんだでブーブー文句を言いながらもやってくれそうな気がするんだよね。だから最終的にはマイケルの気持ちじゃないのかな」

のざき「マイケル、いったんは音楽もう二度とやらないくらいの事言ってなかったっけか?」

赤尾「そう。でもこの間もちょこっと歌ったりして…本当に少しだったけど」

のざき「あれだけ歌える人がね、歌わないのはヘンだよね。ホントすごいシンガーだものね」

赤尾「私はもちろんピーター派だけど、マイケルがいてこそのR.E.M.だから。そこは絶対に…。やるならちゃんと3人集まって、期間限定でビル・ベリーにも来てもらって…」

のざき「ビル・ベリーは健康上の理由で辞めたんだっけか?」

赤尾「うん。でも人の結婚式とかではR.E.M.にジョインしてたりするからね。全然悪い辞め方ではないし、『Out Of Time25周年記念盤のブックレットのインタビューにもちゃんと4人で入っているし…」

のざき「25周年の『Out Of Time』、マイケルとマイクは随分プロモーションしてたね。それこそBBCとかガーディアン紙とかに出たりして」


赤尾「あのアルバム、もうアップルのストリーミングで聴けるんだけど、例えば、デモ集。ハミング・ヴァージョンとか、歌詞がないヴァージョンとか、超デモみたいな初期段階の音源とかあってね。そういうのが聴けると私みたいなファンはやけに嬉しいねぇ」

のざき「ファンだよねぇ!!!」

赤尾「あぁ、この曲最初はこういう感じだったんだ!って。最初はゆったりだったのにテンポが速くなって完成しました、とかね。<Losing My Religion>なんて2ヴァージョンくらい入っているのよ、デモが。その2ヴァージョンを聴き比べると全然違う。で、こういう時ネットっていいな、と思ったのだけど、CDと違って、すぐピッピッピッとかトラックを切り替えられるじゃない?」

のざき「日本のやつはどんなのが出るのかな。私は2枚のかっこいい箱に入ったやつを買っちゃったのだけど。日本盤が出る事知らなくてイギリスのアマゾンで買っちゃったよ。また日本盤買わなくちゃ」

赤尾「それそれ、それと同じだよ。それに対訳がついている」

このあと赤尾さんに今後のプロモーションの相談にものってもらい神田の午後は暮れていくのであった…

★ ★ ★

赤尾さんありがとう! 来日がほんとに楽しみです〜〜。というか、R.E.M.ファンとしては、あちこちのプロジェクトに顔を出すより本体を復活させてほしいよね、きっと… うううう、今回はICE STATIONにご協力いただき、ありがとうございました。赤尾さん、いつかR.E.M.が復活して武道館公演とかやる日には、ピーターのゴジラ持って一緒に行きましょう!! ホントにありがとうございました。さて、このあとは誰になるんだろう。約2名様、起こし原稿をチェックいただいておりますが、まだ返事が来ない…

ICE STATION、開催までもうすぐ。
渋谷と京都で公演があります。
2月7日 京都 磔磔
2月9日 渋谷 WWW
2月10日 渋谷 WWW
詳細はこちら http://www.mplant.com/icestation
with ナヌーク、カート・ブロック、ピーター・バック、スコット・マッコイ、マイク・ミルズ、リンダ・ピットモン、スティーブ・ウイン
  





赤尾さんが担当された名著の数々