昨日に引続きクロスビート編集部の荒野さんが語ります。しかし当時のお小遣いは1,000円だったそうですよ。よくこういう音楽に付いて来たよね…
荒野「ドリーム・シンジケートの最初のアルバムはかなり低予算だったらしくて。スティーヴはその頃、LAにあったライノ(レーベル)のレコード屋さんで働いてたんですよ。昼間はライノ・レコーズで働いて、真夜中にレコーディングとかしていたみたい。向こうも東京と同じだと思うんだけど、真夜中の方がスタジオが安いんですよね。だから仕事が終わってからみんなで集まって、深夜の1時から朝までの間に録る、みたいな… それがファースト・アルバム『The Days Of Wine And Roses』。最後の曲のミックスが終わったときは午前8時で、その2時間後には店を開けなくちゃいけなかった、というエピソードを、このアルバムのリイシューCDのブックレットでスティーヴが明かしてました」
「短時間で急いで作らなきゃいけなかったけど、『そういう風に作ったおかげで、当時の流行りのサウンドを意識せずに済んだのかもしれない』と、スティーヴはちょっと前のインタビューで言っていました。だからドリーム・シンジケート特有の、ドロッとして酩酊感があるサイケデリック・サウンドがファースト・アルバムには生々しく記録された。このアルバムが注目されて、ドリーム・シンジケートはメジャーのA&Mと契約するんですけど、その頃にはバンドのもうひとりの顔だったケンドラ・スミスが脱退してしまって。2枚目のアルバムではブルー・オイスター・カルトやクラッシュを手掛けたサンディー・パールマンがプロデュースを担当して、ちゃんとした制作環境で録音するようになったんだけど…メジャーに入ってからいろいろ要求をされただろうし、軋轢もあったんでしょう。ギタリストのカール・プレコダも、このあとバンドを辞めちゃうんですよ。そうやってメンバーが変わってから…一回活動を停止して。で、新しいギタリストを入れて3枚目のアルバムをつくるんだけど、また活動が滞って、もう一回バンドを立て直して4枚目のアルバムをエニグマから出して…という感じで、バンドの歩みは不安定になってしまいます。インディー・バンドが金になる時代だったこともあってメジャーに白羽の矢を立てられたけど、彼らはR.E.M.とは対照的で、自分たちのスタイルを守り切ることができなかったように見えましたね。結構80年代っぽいサウンドに寄った曲もあったし、そこはR.E.M.とは随分違うなあと思ってました。スティーヴの趣味もサイケから早々と脱却して、ルーツ・ミュージックの色が次第に強くなっていく。その分、バンドの個性はだんだん薄まっていくわけですけど。で、4枚目の後に解散しちゃうんです」
「スティーヴって、もともとCCRのジョン・フォガティとかニール・ヤングのファンだったらしいんですよ。それがレコード屋で働いているうちにイギリスのニュー・ウェーブにも詳しくなって、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの影響もあって…。そういう音楽的な背景がR.E.M.とよく似てて、ベースにあるものがとても近いんだと思うんですよね」
のざき「だから一緒にバンドやっちゃうんだよね!」
荒野「そうだと思います。ただ、アウトプットする時の出方はかなり違う。スティーヴ・ウインのアクって、やっぱり強いですから。ベースボール・プロジェクトとか一緒にやってて仲はいいですけどね。バンドのフロントマンのあり方も、ドリーム・シンジケートとR.E.M.では全然違うので。だから、面白いチームですよね」
「スティーヴって友達がすごく多いみたいで、毎回豪華なメンバーがゲストで参加していたり、若手と一緒にアルバムを作ったり、フットワークが軽い人ですよね。広く開かれた性格なんだと思います。そういう人だからICE STATIONにも乗ったんだと思う。でもドリーム・シンジケートのファーストの頃には、そんな開かれた人だとはとても思えませんでしたよ。音の印象から、ダークでどんよりとした人だとばかり当時は思っていた」
「またドリーム・シンジケートは、後のバンドに与えた影響が凄く強いことでも知られています。90年代以降のオルタナティブのバンドで、ドリーム・シンジケートの影響下にあるバンドって本当に多い。ギャラクシー500〜ルナのディーン・ウェアハムはその筆頭で、歌い方からしてスティーヴによく似ていたし、ライヴでもドリーム・シンジケートの曲をカバーしてました。ソニック・ユースもドリーム・シンジケートからインスパイアされたと認めていますね」
のざき「評価されてたんだね」
荒野「特にドリーム・シンジケートのファーストは、今も圧倒的な人気がありますよ。いきなりイントロがギターのフィードバック音で始まったり…どこまで意識的にやっていたのかわかりませんけど。そういう極端なところも、多くのバンドにヒントを与えていると思います」
「それをスティーヴもよくわかっているので、ICE STATIONでもドリーム・シンジケートの曲をやるでしょう。何年か前にペイズリー・アンダーグラウンドの同窓会みたいなコンサートを向こうでやっていて、それにもドリーム・シンジケートが出てました。メンバーはだいぶ違うんですけど…。そしてどうやら今、新しいアルバムも作っているみたいで」
のざき「2017年に出る、って言っていたねぇ…。日本でも出るかなぁ。無理かもだけど、でも来日している間に取材とかやればいいのにね。実は某巨大新聞の音楽担当さんがドリーム・シンジケートのファンで…インタビューしたいって言ってくれてるんだけどね」
荒野「へぇ〜 でも本当に、ここ数年サイケってまた盛り上がっていて。スティーヴも最近のインタビューで言っていましたけど、自分たちは82年の状況にはフィットしていないバンドで、1968年か、あるいは2015年に来たら…そのどっちかにいた方がフィットしていたかも…と(笑)」
のざき「なるほどね〜(笑)」
荒野「ほんとに今、ドリーム・シンジケートの影響を感じさせるバンドって結構いくつもいるんですよ。スティーヴもインタビューで具体的に名前をあげて言ってましたけど、Thee Oh seesとか、Tame Impalaとか…。ドリーム・シンジケートがやった事を踏まえて、ごく当たり前にサイケデリックな表現に取り組むバンドが増えたので…。で、スティーヴもそういうバンドが気に入っているみたいだし。そういう事も刺激になって、またドリーム・シンジケートをちゃんとやろうっていう気になったのかもしれないですね」
のざき「奥さん、ドラマーなんだよね」
荒野「そうそう。ICE STATIONで一緒に来るんですか?」
のざき「うん。ホントはビル(・リーフリン)と一緒に来日してツイン・ドラムでやる予定だったんだけど、ビルがスケジュールの関係でダメで。実現してたら面白かったと思うのだけど…。さて、そろそろマイクの話に行きますか?」
こちらはスティーヴのドラムにリンダが入ったThe Miracle 3。かっこいい!
ICE STATION、開催までもうすぐ。渋谷と京都で公演があります。チケットの通販、そろそろ締め切りますので、お申し込みはお早めに〜
2月7日 京都 磔磔
2月9日 渋谷 WWW
2月10日 渋谷 WWW
詳細はこちら http://www.mplant.com/icestation
with ナヌーク、カート・ブロック、ピーター・バック、スコット・マッコイ、マイク・ミルズ、リンダ・ピットモン、スティーブ・ウイン
PS
荒野さんが手がけた名著の数々。アイルランド音楽本とアコーステイック・ギター本にはウチのアーティストも多数ご紹介いただいております。
★ ★ ★
荒野「ドリーム・シンジケートの最初のアルバムはかなり低予算だったらしくて。スティーヴはその頃、LAにあったライノ(レーベル)のレコード屋さんで働いてたんですよ。昼間はライノ・レコーズで働いて、真夜中にレコーディングとかしていたみたい。向こうも東京と同じだと思うんだけど、真夜中の方がスタジオが安いんですよね。だから仕事が終わってからみんなで集まって、深夜の1時から朝までの間に録る、みたいな… それがファースト・アルバム『The Days Of Wine And Roses』。最後の曲のミックスが終わったときは午前8時で、その2時間後には店を開けなくちゃいけなかった、というエピソードを、このアルバムのリイシューCDのブックレットでスティーヴが明かしてました」
「短時間で急いで作らなきゃいけなかったけど、『そういう風に作ったおかげで、当時の流行りのサウンドを意識せずに済んだのかもしれない』と、スティーヴはちょっと前のインタビューで言っていました。だからドリーム・シンジケート特有の、ドロッとして酩酊感があるサイケデリック・サウンドがファースト・アルバムには生々しく記録された。このアルバムが注目されて、ドリーム・シンジケートはメジャーのA&Mと契約するんですけど、その頃にはバンドのもうひとりの顔だったケンドラ・スミスが脱退してしまって。2枚目のアルバムではブルー・オイスター・カルトやクラッシュを手掛けたサンディー・パールマンがプロデュースを担当して、ちゃんとした制作環境で録音するようになったんだけど…メジャーに入ってからいろいろ要求をされただろうし、軋轢もあったんでしょう。ギタリストのカール・プレコダも、このあとバンドを辞めちゃうんですよ。そうやってメンバーが変わってから…一回活動を停止して。で、新しいギタリストを入れて3枚目のアルバムをつくるんだけど、また活動が滞って、もう一回バンドを立て直して4枚目のアルバムをエニグマから出して…という感じで、バンドの歩みは不安定になってしまいます。インディー・バンドが金になる時代だったこともあってメジャーに白羽の矢を立てられたけど、彼らはR.E.M.とは対照的で、自分たちのスタイルを守り切ることができなかったように見えましたね。結構80年代っぽいサウンドに寄った曲もあったし、そこはR.E.M.とは随分違うなあと思ってました。スティーヴの趣味もサイケから早々と脱却して、ルーツ・ミュージックの色が次第に強くなっていく。その分、バンドの個性はだんだん薄まっていくわけですけど。で、4枚目の後に解散しちゃうんです」
「スティーヴって、もともとCCRのジョン・フォガティとかニール・ヤングのファンだったらしいんですよ。それがレコード屋で働いているうちにイギリスのニュー・ウェーブにも詳しくなって、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの影響もあって…。そういう音楽的な背景がR.E.M.とよく似てて、ベースにあるものがとても近いんだと思うんですよね」
のざき「だから一緒にバンドやっちゃうんだよね!」
荒野「そうだと思います。ただ、アウトプットする時の出方はかなり違う。スティーヴ・ウインのアクって、やっぱり強いですから。ベースボール・プロジェクトとか一緒にやってて仲はいいですけどね。バンドのフロントマンのあり方も、ドリーム・シンジケートとR.E.M.では全然違うので。だから、面白いチームですよね」
「スティーヴって友達がすごく多いみたいで、毎回豪華なメンバーがゲストで参加していたり、若手と一緒にアルバムを作ったり、フットワークが軽い人ですよね。広く開かれた性格なんだと思います。そういう人だからICE STATIONにも乗ったんだと思う。でもドリーム・シンジケートのファーストの頃には、そんな開かれた人だとはとても思えませんでしたよ。音の印象から、ダークでどんよりとした人だとばかり当時は思っていた」
「またドリーム・シンジケートは、後のバンドに与えた影響が凄く強いことでも知られています。90年代以降のオルタナティブのバンドで、ドリーム・シンジケートの影響下にあるバンドって本当に多い。ギャラクシー500〜ルナのディーン・ウェアハムはその筆頭で、歌い方からしてスティーヴによく似ていたし、ライヴでもドリーム・シンジケートの曲をカバーしてました。ソニック・ユースもドリーム・シンジケートからインスパイアされたと認めていますね」
のざき「評価されてたんだね」
荒野「特にドリーム・シンジケートのファーストは、今も圧倒的な人気がありますよ。いきなりイントロがギターのフィードバック音で始まったり…どこまで意識的にやっていたのかわかりませんけど。そういう極端なところも、多くのバンドにヒントを与えていると思います」
「それをスティーヴもよくわかっているので、ICE STATIONでもドリーム・シンジケートの曲をやるでしょう。何年か前にペイズリー・アンダーグラウンドの同窓会みたいなコンサートを向こうでやっていて、それにもドリーム・シンジケートが出てました。メンバーはだいぶ違うんですけど…。そしてどうやら今、新しいアルバムも作っているみたいで」
のざき「2017年に出る、って言っていたねぇ…。日本でも出るかなぁ。無理かもだけど、でも来日している間に取材とかやればいいのにね。実は某巨大新聞の音楽担当さんがドリーム・シンジケートのファンで…インタビューしたいって言ってくれてるんだけどね」
荒野「へぇ〜 でも本当に、ここ数年サイケってまた盛り上がっていて。スティーヴも最近のインタビューで言っていましたけど、自分たちは82年の状況にはフィットしていないバンドで、1968年か、あるいは2015年に来たら…そのどっちかにいた方がフィットしていたかも…と(笑)」
のざき「なるほどね〜(笑)」
荒野「ほんとに今、ドリーム・シンジケートの影響を感じさせるバンドって結構いくつもいるんですよ。スティーヴもインタビューで具体的に名前をあげて言ってましたけど、Thee Oh seesとか、Tame Impalaとか…。ドリーム・シンジケートがやった事を踏まえて、ごく当たり前にサイケデリックな表現に取り組むバンドが増えたので…。で、スティーヴもそういうバンドが気に入っているみたいだし。そういう事も刺激になって、またドリーム・シンジケートをちゃんとやろうっていう気になったのかもしれないですね」
のざき「奥さん、ドラマーなんだよね」
荒野「そうそう。ICE STATIONで一緒に来るんですか?」
のざき「うん。ホントはビル(・リーフリン)と一緒に来日してツイン・ドラムでやる予定だったんだけど、ビルがスケジュールの関係でダメで。実現してたら面白かったと思うのだけど…。さて、そろそろマイクの話に行きますか?」
こちらはスティーヴのドラムにリンダが入ったThe Miracle 3。かっこいい!
2月7日 京都 磔磔
2月9日 渋谷 WWW
2月10日 渋谷 WWW
詳細はこちら http://www.mplant.com/icestation
with ナヌーク、カート・ブロック、ピーター・バック、スコット・マッコイ、マイク・ミルズ、リンダ・ピットモン、スティーブ・ウイン
PS
荒野さんが手がけた名著の数々。アイルランド音楽本とアコーステイック・ギター本にはウチのアーティストも多数ご紹介いただいております。