パディ・モローニ(チーフタンズ)おおいに語る!(後半)

前半に続いて後半です。すみません、私がお話を聞いてメモったものをベースにしているので(録音はしてませんでした)、間違い、誤解、聞き違え等あったら、申し訳ございませ ん。何かございましたら、ご指摘ください。

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90年代に入って「Long Black Veil」の話。最初はChieftains and friendsというシンプルなタイトルを予定していた。豪華な共演のアルバムでよく取り上げられるのだが、実は僕らはこれ以前にもすでにマリアンヌ・フェイスフル、ジャクソン・ブラウン、ミック・ジャガーのソロやポール・マッカートニー、アート・ガーファンクルなどはすでに共演していた。

このアルバムによって新しいファンが獲得できたのは事実だと思う。それ以降も高く評価されて7回グラミー、そしてオスカーも取ったから家の中がトロフィだらけだ。家族に嫌がられているんだよ(笑)

(いろんなアーティストのとの思い出)フランク・ザッパのスタジオでトム・ジョーンズとレコーディングした時の話。フランクはもう亡くなる直前くらいで、具合が悪かった。で、僕は邪魔しないから…なんて言ってたんだけど、実際録音が始まると「ピアノの左手が多い」とか口を出してきたね。フランクは100年先を行っているアーティストだったと思う。彼と知り合ったのはBBCのラジオ局で会ったのがきっかけ。フランクの方から話してくれた。喉歌のシンガーたちと一緒にレコーディングもしたんだ。(ザッパWikiにもチーフタンズのことは載っています。「チーフタンズには彼等の堂々たる歴史があり、僕は彼等の作品たちにケルトだけではなく地球上の歴史を見つけることができる」)フランクのお葬式は、音楽と愛と涙にあふれ素晴らしいものだった。悲しかったけど彼の音楽をみんなで祝福したんだ。

ヴァン・モリソン。ヴァンは一度たりとも同じに歌ったことがないね。毎回毎回違うことをやる。(天辰さんより「Irish Heart Beat」のアルバムをつくる経緯を聞かれて)ヴァンに「明日ランチに来い」って言われて「いいよ」と答えたんだけど、当時ヴァンはロンドンに住んでいたんだよね。あわててロンドンに行く飛行機を取ったよ。卵と豆のランチだった(笑)お酒はたっていてコーヒーしか飲んでなかったな。6ケ月後、僕らは候補曲のリストを持ち寄った。Ta Mo chleamhnas Deanta(The match was made)では、ヴァンはゲーリックで歌う事を嫌がったので、ゲーリックの部分をケヴィンが英語の部分をヴァンが歌った。録音は5日間。そうそう、ヴァンがドラムをたたきながら歌う、と主張し、みんなが止めたんだけど,結局それは実行された。Raglan Roadだ。

 
他にも彼には「ロング・ジャーニー・ホーム」で「シェナンドー」を歌ってもらった。


今回の来日コンサートでは、「Long Journey Home」それからコステロとやったアンセムでクアイヤを使いたいと考えている。あとシンガーのアリス・マコーマックによるイエーツの朗読もある。僕もゲーリックということには拘りたいんだ。

僕の話すゲール語はいわゆる「School Irish」学校で習ったものだ。ドニゴールやコネマラ、ケリーのゲール語を話すネイティブの美しさにはかなわない。ゲール語は本質的なエッセンシャルなものだ。ウェールズ語、ブレトン語とも違う。アイルランドの歌には例えば2行ゲール語で歌い英国人をこきおろし、2行英語で歌い英国人を持ちあげ…みたいな歌もあるんだよ。天辰さんより「そのエピソードは黒人のブルーズにも通じますね」

「ボナパルド・リトリート」にもあるのだけど、アイルランドの本国の状況が悪いからみんな外人部隊として戦争に行ったんだ。ハバナには「オライリー通り」という通りがある。ライ・クーダーとはセント・パトリシオのアルバムをつくるのに2週間メキシコに滞在した。4枚分くらいになりそうな曲が収集できて、アルバムを1枚作った。ヨーロッパ、アフリカの影響が中南米アメリカに19世紀にあったんだ。タンゴを1910年に書いたアイルランドの作曲家もいる。誰だったっけ… 名前を思い出せないけど。(これググってみたんだけど見つけられませんでした)

(北米ということでは)ナッシュビルは本当にアイルランドの一部。ベラ・フレック、ジェリー・ダグラスとは何度も演奏した。チェット・アトキンスはお父さんがフィドラーでね。レコーディングにやってきて1時間しかない、と言ってたのに1日中録音した。ビル・モンローも結構アイリッシュの曲を演奏しているよね。

天辰さんより「アイルランドは音楽の故郷ですね」。アイランドはホームだ。僕は家をブルターニュにも持っているんだけど、ダブリンはやはり格別だ。外国から帰って来て飛行機から見えるダブリンは本当に素晴らしい。グレンダロックに住んでいるのだけど、ダニエル・デイ・ルイス、ポール・マックギネス、(あともう1人名前失念…とか書いてたら,通訳の丸山京子さんよりメッセージあり。映画監督のジョン・ブアマン) 、その4人でご近所さんだよ。お互いの家にコーヒーを飲みに行ったりする。〜は(メモの文字が読めず)20エイカーの家に住んでいるんだけど、僕は家は5エイカーだ。(だいたい2万平方メートル…すごい)アイルランド人はフレンドリーだし、音楽もある。アイルランド音楽は、日本の演奏者も増えているんだ。

天辰さんより「アイルランド音楽はなんだか懐かしい感じがするんです。幼いころの感じ。夕焼けとか草の匂いとか…。忘れちゃいけないもの。そんなものを感じます」

ここで今回のメンバー紹介。タラ・ブリーンは新しいメンバーで、ここ数年一緒にステージをしている。フィドル奏者だが、ダンスもするし、フィナーレではサックスも披露するよ。本人はすごく静かでシャイなんだ。あとシンガーのアリス・マコーマック。ダンスもするし、エルソン・マンデラの曲では大きくフィーチャーされる。トリーナ・マーシャルとはもう長いな。彼女にオーケストラを離れチーフタンズで一緒にやろうと言ったのは13年前だ。新しいCDも出してソロアーティストとしてもとても向上している。ティム・エディはギター奏者。(一時ルナサにもいましたね)アコーディオンもひく。すごく面白い男だ。先日も彼がしゃべったらお客さんが涙を流して笑ってた。BBCのBest Traditional Musician(2012年。Musician of the yearを受章)を受章した素晴らしい音楽家だよ。
あとピラツキ兄弟、キャラ・バトラーも、素晴らしいダンサーたちだ。

(これからの予定などを聞かれて)昨年亡くなったジョン・モンタギューや、娘のジョイスの朗読などのCDに音楽を提供したり、ポエトリー&ミュージックみたいな企画が多いかな。あとドキュメンタリー作品も作りはじめていて、テレビのプロジェクトで海外のミュージシャンを集めるプロジェクトが進行中なんだ。エド・シーランとも一緒にやるよ。アメリカツアーも2019年の春まで決まっているし…。(最初のアメリカツアーから何年ですか?と聞かれて)45年になるな…。最初のツアーでジョンとヨーコが見に来てくれた。

PS
最後に会場から質問をつのったのですが「最初にアイルランド語を話すあの冗談は何年からですか?」という質問に「68年から」だそうです!! すごい、48年あのオープニングやってるんですね!!(なんのことか分からない人はこちらへどうぞ。そういや最初スワヒリ語か?!って言われたとか言ってましたね/笑)


チーフタンズ来日公演は
11/23(祝)所沢市民文化センターミューズ アークホール
11/25(土)びわ湖ホール
11/26(日)兵庫芸術文化センター
11/27(月)Zepp Nagoya
11/30(木)Bunkamura オーチャードホール 
12/2(土)長野市芸術館メインホール
12/3(日)よこすか芸術劇場
12/8(金)オリンパスホール八王子
12/9(土)すみだトリフォニー大ホール
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