いやーーーーーー 面白かった。おそらく今まで参加したどの本屋イベントよりも面白かったかも。定員一杯、満員御礼の会場。以前『世界の辺境とハードボイルド室町時代』で超盛り上がったお二人の対談本、第2弾の発売記念イベントである。今回はなんと書評本なんだって!
イベント会場でもある東京堂書店さん。初めてゆっくり入ったかも。でもいい本屋だった。1階をウロウロしているだけで魅惑的な本がいっぱい並ぶ…
本屋は危険だ。でももう最近は積ん読がひどいし、もう絶対に今年前半、本はこれ以上は買うまいと決意して、イベントが行なわれる6階の会場へとなだれこむ。お二人の目の前、2列目を確保。 イエス! あ、でも、もちろん、この本は購入しましたよ。サインをもらわなくちゃいけないからね。
この本で、お二人が紹介している本はどれも難しそうな歴史書だ。書評本、あぶないんだよな、読んでると、そこで紹介されてる本が読みたくなって… 角幡さんの『日々本々』とか何冊買って騙されたことか… でも大丈夫。ここに紹介されているのは、充分難しそうな歴史書だし、読まない、読まない、絶対に読まない。大丈夫、大丈夫。
……と思っていたのに、なんと!!! イベントが終ってみたら、お二人の楽しそうな様子に押されて、全部読みたくなった!!!! めっちゃ、やばい!!! それにしても1時間半くらいのイベントだったかな… もうあっという間に終っちゃったよ。
お二人に加え、司会はHONZの内藤編集長。HONZって、Twitterとかでシェアされているのを何気にしょっちゅう読んでただけだけど、ノン・フィクションのしかも新刊を紹介するサイトなんだって。でもビジネス書とか、自己啓発本みたいなものは取りあげず、いわゆる本屋の辺境に置かれがちな本を紹介するサイト。(ちなみに内藤さんは大手広告代理店に勤務。このサイトだけで食べてるわけではないらしい。へぇ〜)
以下、イベントを簡単にレポートしますが、あくまで私がお二人のお話をメモっただけなので、私がお二人の話を間違って理解している場合は、すみません。
まず内藤さんに普段のお二人の読書は?と聞かれ「雑食系で何でも読みます」と高野さん。読まないのはビジネス書、タレント本、売れてる小説くらい(笑)。最近は資料として読む本が増えて来た、とのこと。
そして読む本は2種類。1つはペンを持って読む本。いわゆる「資料」。赤線をひいたり、書き込んだりする本。そしてもう1つは寝そべって読む本。こちらは小説、エッセイ、ノン・フィクションなど。
一方の清水さんは「読むのが遅いのがコンプレックス」だそうで、Twitterで高野さんの読書の様子を見ていると羨ましい、とも。怖くて新刊本には手が出せない、というか、セレクトにまったく自信がないそうで、新刊が出て,ある程度書評が揃ったところで、そこから読みはじめるのだそうです。面白いね。
本のセレクト、高野さんは本屋で探したりアマゾンのレコメンも結構参考にするそうで、お二人とも新聞の書評はすごく参考にするらしい。ちなみに清水先生は某新聞の書評をやっていたこともあって、2年間担当し、新刊を読むのはもういい、古典が読みたいと思った、というお話には、場内が笑いにつつまれたのであった…。なんか分かる(笑)
で、今回の本。2年かけて8冊の本を取り上げることにしたそうなんですが、そもそも企画がどう持ち上がったのか、編集者、お二人、誰もよく覚えていないそうで(笑)、全員「俺はこんな企画やりたかったわけではないのに」と被害者気分でいたのだそうです(爆)。でもどうやら、1冊目の『ゾミア』を読んだ高野さんが、これは面白いと思って、清水先生の感想を知りたいと思ったことがきっかけだった説が濃厚らしい…
あとお二人の例の『世界の辺境とハードボイルド室町時代』が当たったことで、また本を一緒に出したいと思ったものの、同じような続編の本はやめようという話を高野さんはしてらしたそうなんです。ふむ。というわけで書評本になったってわけらしい。
で、読書会が「kotoba」で連載としてスタートしたのだけど、高野さんからすると、自分が読んだ本について、大学の先生がいるから,いろんな事の答えあわせが出来る感じがいいんだって。一方の清水さんは著者もリアルで知ってる先生がいて、これは言ったら怒られそう、とかいろいろ思ったそうですよ…
紹介されている8冊のうち、高野さんセレクトは『ゾミア』、『大旅行紀(全8巻)』 、『ギケイキ』、『ピダハン』、『日本語スタンダードの歴』。それ以外の『世界史のなかの戦国日本』、『将門記』、『列島創世記』が清水先生だそうで、高野さんの方が多い。
『ゾミア』とは中国の南、東南アジアの北側の少数民族、山野地帯の文明から取り残された人たちの話なんだけど、これが実は定説通りではなくて、彼らはあえて文明を捨てた人たちではないか、国家から逃げて来た人たちなのではないかという新しい歴史観に元ずく話なんだと…。例えばリーダーをうまないとか、文字を持たないとか、実は非常に戦略的なのではないか、と。それとこの『ゾミア』が、実は「納豆地帯」にもつながる、という高野説。なるほど…。で、これを知ると納豆観も変わってきて、そもそもこのエリアに入っていった人たちは、入っていった時にあえてミソとか捨てて納豆を携えていったということも考えられる… とのこと。ホントか?! うーん。
そして次の『世界史のなかの戦国日本』。中世史をやっている連中というのは、アナーキーな傾向があるのだそうで、清水先生いわく、そもそも国境という意識が違う。例えば倭冦、倭人というと、海賊というイメージだけど、結構社会インフラも整っていたそうで、それを思うと、今まで思っていた自分の中の地図が変わる。豊臣秀吉とか、まるでイメージが変わっちゃう等々。
さらなるイブン・パットゥータの『大旅行紀(全8巻)』は、8巻もあるのに、表紙も一緒のデザインだから、途中読んでいると訳がわからなくなる、と楽しそうに説明する高野さん。今回紹介した8冊の中で、実は一番盛り上がったのが、これで、とにかく読み終った時の達成感がすごいとのこと。ウルトラ・マラソンを制覇した感じ。ちなみに清水先生は一夏をこれで過ごしてしまったそう。高野さんも読み終わるまで2週間かかった。この物語には、ダイジェスト版もあるのだそうだけど、是非全8巻を読んでほしい、とお二人。特にインドの王様の横暴ぶりが描かれる5〜6巻がすごいのだそうです。(当時のインドは一度入国したら二度と出国できない国だったそう…)そもそも、なんというか著者が物語として書いているわけではなく、それを読んでいるこちらとしては、いわゆる人の日記を盗み見るような感覚もあり、そのむき出し感がとてもよい、と高野さん。これを読むとマルコ・ポーロとかが幼稚に見えるそうですよ。すごいなぁ…
『将門記』は、バイオレンス・ハードボイルド。これに対抗するには、短くて古典がいいかな、ということで清水先生が選んだ1冊だそう。続く町田康の『ギケイチ』は、今回紹介した中で一番読みやすい。これを選んだ高野さんはただ単に清水先生に感想を聞きたかったから選んだのだそうで、清水先生によると、これはフィクションながらも、真面目に歴史を捉えた本なんだって。また弁慶が出て来るのだけど、それに惹かれた清水先生は、書写山円教寺にまで行かれたのだそう。(その時の写真も紹介されました)
『ピダハン』は、私も前から気になってた本。高野さんセレクトだけど、とにかくインパクトがある、とのこと。宣教師であり言語学者ある著者がアマゾンでピダハンに出会って,価値観がまるで変わってしまうという話。ピダハンには神もなく、左右もなく、数もない。親子はあるけど、兄弟姉妹の概念がなく、色もない。時間もない。夫婦というよりパートナーという存在がいる等々、とにかくユニークな価値観を持つ人たちで、いわゆる直接体験しか語らないところや、明日や未来の心配がないとか、とにかく幸せに見える。非文明的だけど、こっちの方がいい、と清水先生。うーん、これはやはり読まないとヤバいか。気になってたんだよなぁ!
『列島創世記』は清水先生のセレクト。シリーズものだけど、これが評価が一番高い1冊で、めっちゃ面白く、ちょっと油断して読んでいると、超するどいことが書いてある本なのだそうだ。すごく読みやすくて、でも「えっ、こんな見方していいの?」みたいなことが山盛りらしい。読みたい!!
『日本語スタンダードの歴史』は高野さんセレクト。いわゆる日本の標準語は明治に東京で出来たといわれているけど、これをひっくり返して実は室町時代に出来たいのではないか、という説。清水先生によると、例えば日本の基本的な生活スタイル、1日に3食食べるとか、畳の上で寝るとか、そういう概念はだいたい室町時代に出来たのだそうで、 室町時代の人たちは鎌倉時代の人と話すよりも現代人と話す方が話が通じる…とか。
お二人によれば、8冊の中で一番面白いのは『列島創世記』そして、読みやすいのは『ギケイキ』、そして『大旅行記』は「とにかく是非!!!」とのこと。そして読書会を面白くする本選びの条件としては、相手が何と思うか知りたいということ。相手と話すと本の内容への理解が深まる、ということ。
なおこの本を具体的にどうやって作ったのかという質問については、まず3時間くらいはヨーイ、ドンで二人で話をする。(ちなみにお二人は普段は極力会わないように務め、メールとかも業務連絡にとどめ、なるべく接触をしないようにしている、とのこと。それによって対談が濃くなるように)で、会議室の後は飲み会に突入して、またしゃべり、後からメールで「そういえば、あれは…」とか「実は調べてみたら…」みたいなやりとりもある、と。で、1冊終ると次の本を選ぶのだけど、手駒として2冊くらい考えておき、相手に提案する方法を取ったんだって。
あと藤木式メモ(これは本を読めばわかる)の話も面白かった。本の見返しのところに重要事項をどんどんメモで書いていって、自分の索引にしちゃうんだって。
それにしても面白いのが今までどうでもいいと思ってたことが漠然と積み重なり、くっきりとした像を結ぶような過程が面白かった、と高野さん。いろんな時代が網羅されていく、それがマッピングされて、自分の経験もx軸、y軸みたいなものが出来てくる。これが教養か、と話す高野さん。そうそう「高野さんの書いた後書きがすごくいいんです、電車の中で読んで泣きそうになった」と清水先生が言ってたのも印象的だったなぁ。あぁ、後書きから読みたい!!(笑)
次の企画は?と聞かれて高野さんは、辺境歴史から離れて哲学ものかなーと。今、興味あるのはAIの本やオープンダイアローグの話だそうで、そのへんを清水先生に読ませたいのだそうです。あ、あとこの本に載せる本の候補の1つにあがって、結局実現させなかったのが、なんと手塚治虫の『火の鳥』。名著すぎて何を言っていいのか分からない、と清水先生。でも確かにこの書評本が漫画の超名作で終るのも面白かったかも。
会場からの質問に答えるコーナーでは、二人がこれだけハモっている理由を聞かれ、二人とも生活そのものに興味があり、イデオロギーとか観念的なことには興味がないこと。具体的には、ご飯をどう食べていたのかが気になる、と。二人とも、すごく具体的な話が好きなのが、良かったのではないか、と。それは、ややピダハン的、と清水先生。(場内爆笑)
それからちょっと例のシュールストレミングの話にもなって、私と一緒に行ったカサイも狂喜乱舞!!(私も登場している回はここ!(自慢)そして、清水先生のナイスな発言はこちらを参照。いや、ホントにこの「あいもの」という京都におけるお魚の話(干物と生ものの中間みたいな感じ)面白かったもんね。高野さんが言ってた「清水先生はナイスなことを言う」っていうのも笑った。
うん、そうやって、いろんなことがお二人の中で具体的に形を結んでいくんだろう。いいねぇ、書評仲間?!(笑)
最後にお二人にサインもいただき、大満足。担々麺を食べて帰宅! あぁ、読むのが楽しみ〜
なんか高野さんの顔を見ると、こういうエスニックなものが食べたくなるのよね…
それにしても、この本を読むのが楽しみ。読んだら、また感想を書きます。それにしても,この本、めっちゃ装丁がいい。それから勢い付いて、1階でこの本も買っちゃった。やばい。
イベント会場でもある東京堂書店さん。初めてゆっくり入ったかも。でもいい本屋だった。1階をウロウロしているだけで魅惑的な本がいっぱい並ぶ…
本屋は危険だ。でももう最近は積ん読がひどいし、もう絶対に今年前半、本はこれ以上は買うまいと決意して、イベントが行なわれる6階の会場へとなだれこむ。お二人の目の前、2列目を確保。 イエス! あ、でも、もちろん、この本は購入しましたよ。サインをもらわなくちゃいけないからね。
この本で、お二人が紹介している本はどれも難しそうな歴史書だ。書評本、あぶないんだよな、読んでると、そこで紹介されてる本が読みたくなって… 角幡さんの『日々本々』とか何冊買って騙されたことか… でも大丈夫。ここに紹介されているのは、充分難しそうな歴史書だし、読まない、読まない、絶対に読まない。大丈夫、大丈夫。
……と思っていたのに、なんと!!! イベントが終ってみたら、お二人の楽しそうな様子に押されて、全部読みたくなった!!!! めっちゃ、やばい!!! それにしても1時間半くらいのイベントだったかな… もうあっという間に終っちゃったよ。
お二人に加え、司会はHONZの内藤編集長。HONZって、Twitterとかでシェアされているのを何気にしょっちゅう読んでただけだけど、ノン・フィクションのしかも新刊を紹介するサイトなんだって。でもビジネス書とか、自己啓発本みたいなものは取りあげず、いわゆる本屋の辺境に置かれがちな本を紹介するサイト。(ちなみに内藤さんは大手広告代理店に勤務。このサイトだけで食べてるわけではないらしい。へぇ〜)
以下、イベントを簡単にレポートしますが、あくまで私がお二人のお話をメモっただけなので、私がお二人の話を間違って理解している場合は、すみません。
まず内藤さんに普段のお二人の読書は?と聞かれ「雑食系で何でも読みます」と高野さん。読まないのはビジネス書、タレント本、売れてる小説くらい(笑)。最近は資料として読む本が増えて来た、とのこと。
そして読む本は2種類。1つはペンを持って読む本。いわゆる「資料」。赤線をひいたり、書き込んだりする本。そしてもう1つは寝そべって読む本。こちらは小説、エッセイ、ノン・フィクションなど。
一方の清水さんは「読むのが遅いのがコンプレックス」だそうで、Twitterで高野さんの読書の様子を見ていると羨ましい、とも。怖くて新刊本には手が出せない、というか、セレクトにまったく自信がないそうで、新刊が出て,ある程度書評が揃ったところで、そこから読みはじめるのだそうです。面白いね。
本のセレクト、高野さんは本屋で探したりアマゾンのレコメンも結構参考にするそうで、お二人とも新聞の書評はすごく参考にするらしい。ちなみに清水先生は某新聞の書評をやっていたこともあって、2年間担当し、新刊を読むのはもういい、古典が読みたいと思った、というお話には、場内が笑いにつつまれたのであった…。なんか分かる(笑)
で、今回の本。2年かけて8冊の本を取り上げることにしたそうなんですが、そもそも企画がどう持ち上がったのか、編集者、お二人、誰もよく覚えていないそうで(笑)、全員「俺はこんな企画やりたかったわけではないのに」と被害者気分でいたのだそうです(爆)。でもどうやら、1冊目の『ゾミア』を読んだ高野さんが、これは面白いと思って、清水先生の感想を知りたいと思ったことがきっかけだった説が濃厚らしい…
あとお二人の例の『世界の辺境とハードボイルド室町時代』が当たったことで、また本を一緒に出したいと思ったものの、同じような続編の本はやめようという話を高野さんはしてらしたそうなんです。ふむ。というわけで書評本になったってわけらしい。
で、読書会が「kotoba」で連載としてスタートしたのだけど、高野さんからすると、自分が読んだ本について、大学の先生がいるから,いろんな事の答えあわせが出来る感じがいいんだって。一方の清水さんは著者もリアルで知ってる先生がいて、これは言ったら怒られそう、とかいろいろ思ったそうですよ…
紹介されている8冊のうち、高野さんセレクトは『ゾミア』、『大旅行紀(全8巻)』 、『ギケイキ』、『ピダハン』、『日本語スタンダードの歴』。それ以外の『世界史のなかの戦国日本』、『将門記』、『列島創世記』が清水先生だそうで、高野さんの方が多い。
『ゾミア』とは中国の南、東南アジアの北側の少数民族、山野地帯の文明から取り残された人たちの話なんだけど、これが実は定説通りではなくて、彼らはあえて文明を捨てた人たちではないか、国家から逃げて来た人たちなのではないかという新しい歴史観に元ずく話なんだと…。例えばリーダーをうまないとか、文字を持たないとか、実は非常に戦略的なのではないか、と。それとこの『ゾミア』が、実は「納豆地帯」にもつながる、という高野説。なるほど…。で、これを知ると納豆観も変わってきて、そもそもこのエリアに入っていった人たちは、入っていった時にあえてミソとか捨てて納豆を携えていったということも考えられる… とのこと。ホントか?! うーん。
そして次の『世界史のなかの戦国日本』。中世史をやっている連中というのは、アナーキーな傾向があるのだそうで、清水先生いわく、そもそも国境という意識が違う。例えば倭冦、倭人というと、海賊というイメージだけど、結構社会インフラも整っていたそうで、それを思うと、今まで思っていた自分の中の地図が変わる。豊臣秀吉とか、まるでイメージが変わっちゃう等々。
さらなるイブン・パットゥータの『大旅行紀(全8巻)』は、8巻もあるのに、表紙も一緒のデザインだから、途中読んでいると訳がわからなくなる、と楽しそうに説明する高野さん。今回紹介した8冊の中で、実は一番盛り上がったのが、これで、とにかく読み終った時の達成感がすごいとのこと。ウルトラ・マラソンを制覇した感じ。ちなみに清水先生は一夏をこれで過ごしてしまったそう。高野さんも読み終わるまで2週間かかった。この物語には、ダイジェスト版もあるのだそうだけど、是非全8巻を読んでほしい、とお二人。特にインドの王様の横暴ぶりが描かれる5〜6巻がすごいのだそうです。(当時のインドは一度入国したら二度と出国できない国だったそう…)そもそも、なんというか著者が物語として書いているわけではなく、それを読んでいるこちらとしては、いわゆる人の日記を盗み見るような感覚もあり、そのむき出し感がとてもよい、と高野さん。これを読むとマルコ・ポーロとかが幼稚に見えるそうですよ。すごいなぁ…
『将門記』は、バイオレンス・ハードボイルド。これに対抗するには、短くて古典がいいかな、ということで清水先生が選んだ1冊だそう。続く町田康の『ギケイチ』は、今回紹介した中で一番読みやすい。これを選んだ高野さんはただ単に清水先生に感想を聞きたかったから選んだのだそうで、清水先生によると、これはフィクションながらも、真面目に歴史を捉えた本なんだって。また弁慶が出て来るのだけど、それに惹かれた清水先生は、書写山円教寺にまで行かれたのだそう。(その時の写真も紹介されました)
『ピダハン』は、私も前から気になってた本。高野さんセレクトだけど、とにかくインパクトがある、とのこと。宣教師であり言語学者ある著者がアマゾンでピダハンに出会って,価値観がまるで変わってしまうという話。ピダハンには神もなく、左右もなく、数もない。親子はあるけど、兄弟姉妹の概念がなく、色もない。時間もない。夫婦というよりパートナーという存在がいる等々、とにかくユニークな価値観を持つ人たちで、いわゆる直接体験しか語らないところや、明日や未来の心配がないとか、とにかく幸せに見える。非文明的だけど、こっちの方がいい、と清水先生。うーん、これはやはり読まないとヤバいか。気になってたんだよなぁ!
『列島創世記』は清水先生のセレクト。シリーズものだけど、これが評価が一番高い1冊で、めっちゃ面白く、ちょっと油断して読んでいると、超するどいことが書いてある本なのだそうだ。すごく読みやすくて、でも「えっ、こんな見方していいの?」みたいなことが山盛りらしい。読みたい!!
『日本語スタンダードの歴史』は高野さんセレクト。いわゆる日本の標準語は明治に東京で出来たといわれているけど、これをひっくり返して実は室町時代に出来たいのではないか、という説。清水先生によると、例えば日本の基本的な生活スタイル、1日に3食食べるとか、畳の上で寝るとか、そういう概念はだいたい室町時代に出来たのだそうで、 室町時代の人たちは鎌倉時代の人と話すよりも現代人と話す方が話が通じる…とか。
お二人によれば、8冊の中で一番面白いのは『列島創世記』そして、読みやすいのは『ギケイキ』、そして『大旅行記』は「とにかく是非!!!」とのこと。そして読書会を面白くする本選びの条件としては、相手が何と思うか知りたいということ。相手と話すと本の内容への理解が深まる、ということ。
なおこの本を具体的にどうやって作ったのかという質問については、まず3時間くらいはヨーイ、ドンで二人で話をする。(ちなみにお二人は普段は極力会わないように務め、メールとかも業務連絡にとどめ、なるべく接触をしないようにしている、とのこと。それによって対談が濃くなるように)で、会議室の後は飲み会に突入して、またしゃべり、後からメールで「そういえば、あれは…」とか「実は調べてみたら…」みたいなやりとりもある、と。で、1冊終ると次の本を選ぶのだけど、手駒として2冊くらい考えておき、相手に提案する方法を取ったんだって。
あと藤木式メモ(これは本を読めばわかる)の話も面白かった。本の見返しのところに重要事項をどんどんメモで書いていって、自分の索引にしちゃうんだって。
それにしても面白いのが今までどうでもいいと思ってたことが漠然と積み重なり、くっきりとした像を結ぶような過程が面白かった、と高野さん。いろんな時代が網羅されていく、それがマッピングされて、自分の経験もx軸、y軸みたいなものが出来てくる。これが教養か、と話す高野さん。そうそう「高野さんの書いた後書きがすごくいいんです、電車の中で読んで泣きそうになった」と清水先生が言ってたのも印象的だったなぁ。あぁ、後書きから読みたい!!(笑)
次の企画は?と聞かれて高野さんは、辺境歴史から離れて哲学ものかなーと。今、興味あるのはAIの本やオープンダイアローグの話だそうで、そのへんを清水先生に読ませたいのだそうです。あ、あとこの本に載せる本の候補の1つにあがって、結局実現させなかったのが、なんと手塚治虫の『火の鳥』。名著すぎて何を言っていいのか分からない、と清水先生。でも確かにこの書評本が漫画の超名作で終るのも面白かったかも。
会場からの質問に答えるコーナーでは、二人がこれだけハモっている理由を聞かれ、二人とも生活そのものに興味があり、イデオロギーとか観念的なことには興味がないこと。具体的には、ご飯をどう食べていたのかが気になる、と。二人とも、すごく具体的な話が好きなのが、良かったのではないか、と。それは、ややピダハン的、と清水先生。(場内爆笑)
それからちょっと例のシュールストレミングの話にもなって、私と一緒に行ったカサイも狂喜乱舞!!(私も登場している回はここ!(自慢)そして、清水先生のナイスな発言はこちらを参照。いや、ホントにこの「あいもの」という京都におけるお魚の話(干物と生ものの中間みたいな感じ)面白かったもんね。高野さんが言ってた「清水先生はナイスなことを言う」っていうのも笑った。
うん、そうやって、いろんなことがお二人の中で具体的に形を結んでいくんだろう。いいねぇ、書評仲間?!(笑)
最後にお二人にサインもいただき、大満足。担々麺を食べて帰宅! あぁ、読むのが楽しみ〜
なんか高野さんの顔を見ると、こういうエスニックなものが食べたくなるのよね…
それにしても、この本を読むのが楽しみ。読んだら、また感想を書きます。それにしても,この本、めっちゃ装丁がいい。それから勢い付いて、1階でこの本も買っちゃった。やばい。