高野さん、かなり前に書いた本が新書になって再登場。私は今回初めて読みました「間違う力」。
高野ファンを満足させることはもちろん、高野さんのことをまったく知らない人にも楽しく読めるであろう1冊。
しかし好きなことを極めつつもホントにすごい高野さんだが、そのたたずまいはいつも静かなのである。あいかわらず言葉は優しい。でもすごく力強くて良い事がたくさん書いてあるんだ。すごく響いたよ。
いや、実は先日も某所で高野さんがいい、という話を友達としていて「高野さんの、あの“運ばれて行く感”がいい」みたいなことを私が言ったら、友人は「いや、高野さんは決して運ばれてなんかいない。警備にあんなにお金払ったり… お金払ってるって事は、自分でものすごくコミットしてるんですよ」とするどい指摘をされて、「うーん、さすがだ!(高野さんも、そう説明してくれた友人も)」と、妙に納得したのであった。
高野さんは、すごく謙虚で、いつも文章が優しいから、ついついそう思っちゃうけど、本当に強くてかっこいい人だ。それは読者が一番よく知ってる。
ちなみに「間違う力10ケ条」は…
第1条:他人のやらないことは無意味でもやる
第2条:長期スパンで物事を考えない
第3条:合理的に奇跡を狙う
第4条:他人の非常識な言い分を聞く
第5条:身近にあるものを無理矢理でも利用する
第6条:怪しい人にはついていく
第7条:過ぎたるは及ばざるよりずっといい
第8条:ラクをするためには努力を惜しまない
第9条:奇襲に頼る
第10条:一流より二流をめざす
あいかわらずソフトな語り口だから、スイスイ読んでしまうわけなのだが、自分じゃ何も行動を起こさず、そのくせ自分の人生に不満たらたらな人は耳をかっぽじって、よく高野さんの言うことを聞いてほしいと思う。これはすごく力強いメッセージが込められた本だから。
私も好きなことを仕事にしてしまった口だから、思い当たる事が一杯ある。好きなことを仕事にしてしまっている連中に共通することなんだけど、やっぱり「馬鹿である」ということ。そして思い当たるのは「慎重すぎた結果、何もコミット出来なかった頭のいい人たち」の話。バカに言わせれば、たとえ失敗しても、行動に移したという事実は、その後の血となり肉となるわけだ。ところが何も行動しなかった人はいつまでたってもゼロである、ということ。
あと笑ったのは「今、わたしのひそかなる夢は『アメリカに語学留学して英語がペラペラになること』」という下り。これ、サラームさんの「(中東で空爆?に遭遇した時)マクドナルドでBGMのビリー・ジョエルを聞きながら“初めてアメリカに行ってみたいと思った”ってのに似てる!!! もう二人とも超爆笑!
だって高野さん、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、タイ語、中国語、ビルマ語、アラビア語、ワ語、オリヤー語、ソマリ語、シャン語、ヒンディー語、スワヒリ語、ベトナム語、ベンガル語、ペルシア語、カンボジア語、韓国語、トルコ語、カチン語などが使えるんだよ!! ご本人「私の言語能力というのは品揃えは豊富だが、すべて粗悪品」って言うけど、すごすぎるよ!! 一方のアメリカは30年前、南米へのトランジットで寄った程度。イギリスは(この本が書かれる)5年前に初めて行った。カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランドにいたっては行ったことが無いそうだ(爆)
もし自分の能力をすべて英語につぎこんでいたら、ものすごい英語マスターもしくは英語/フランス語/中国語の3カ国マスターになっていたかもしれない…(笑)と高野さんは言う。でもそんな風に自虐的に自分を落としながら、やっぱり高野さんはすごい。そんなにたくさんの言葉をしゃべれる人なんか、他にいない。しかもこんなマイナー言語まで!! きっと地球外未知生物が表れたら,そいつの言葉を解読するために、きっとペンタゴンが高野さんが連れにやってくると思う。いや、マジで!!(そして高野さんは初めてアメリカにきちんと行くことになる/笑)
他にも「ユニークなことをしている人ほど動きが早い。オリジナリティとスピードはどこかでつながっている」とか、「ちゃんとしなくてもいい。でも今、はじめる。そこからオンリー・ワンは生まれる」とか。とにかくバカをはげましてくれる言葉に溢れてるんです,この本は!!
あと興味深かったこと。自分の文章に「情報」「技術」「科学」という三原則を置いているということ。「情報」というのは、必ず読者が読んで「あ、これ初めて知った」という新しい情報を入れておくこと。「技術」というのは、わかりやすく面白く書く、ということ(これはホントにすごいと思う)。自分も読者も思考停止にならないよう、思考を動かし続けるように書く、と。そして「科学」。「科学」というのは合理性、理論に納得があること。そして不要なことは書かないこと。これ、妙に納得するのだ。すごいなぁ、高野さん。
ただしご自身は、そうした結果、結局のところ自分の文章には「色気」や「つや」がない、なんて嘆いていらっしゃるわけなのだが、いや、だからこそこれだけの読者を引っ張っていってくれているのだろう。まさに「オンリー・ワン」の存在なのである。
そして「自分=ジャンル」になる、ということ。ライターだけじゃなくて、これはどんな職業でもありうる事だ。音楽の世界だってそうだ。
あと過去のことを振り返らない。たとえば画家になろうという友達がいる。彼も最初はもしかしたら甘い考えでスタートしたのかもしれない。「でも今となっては、どっちでもいいのだ」と高野さんは言ってくれる。だって「もう選択しているんだから、当時の本気度なんてどうでもいい。もうやるしかないのである」と高野さんは言う。あぁ、なんか勇気もらうわー。
高野さんの「長くやっているとチャンスも自然と何度も訪れる」と言う言葉にも勇気をもらった。勘や人生論ではなく統計学的にそういうものなんだ、と。やっとチャンスが訪れても、その時までに積み上げたものがなければ、やっぱりたいした高さは飛べない。でもその時までに積み上げたものがあれば、高く飛べる、と。高野さんも「ワセダ三畳」が売れた時、それまでに書いた本が何冊もあった。ここで過去の本3冊が売れるのと、過去の本10冊が売れるのとでは訳が違う。そういう私も高野本、今だに読んでも読んでも、まだ読んでない本ある(笑) それまでの努力が、そのチャンスを生かすすごいパワーとなるのだ。だからやっぱり続けるべきなのだ。
さていろいろ書いた高野さんが読者に伝えたいことはシンプルに3つだ。
(1)とにかくやること
(2)手段を選ばないこと
(3)正しいかどうかより面白いかどうかで決めること
とくに(3)は、ホントに重要。何をやるのしてもワクワクしているかがホントに大事だ、と高野さんは言う。あぁ、もうホントにやばい。ますますこの本でバカが勇気をもらってしまったではないかっ!!
ありがとう、高野さん。いいよ。すごくいい!! 「人生に間違いなどない」とこの本は結ばれている。ホントだ。本当にそうだ。この本は名著『謎の独立国家ソマリランド』より前に書かれたそうで,この本のあと、高野さんは「ソマリ」の第1人者として、学者の先生からも一目置かれるような存在になるわけだ。ホントにすごいと思う。やっぱり最高にかっこいい。
PS
ところでこっちは友達がやってる書評ブログ。この『大富豪からの手紙』って面白ろそうだし、実際はやっているみたい。ただもう「大富豪」ってのが、なんかすでに下品なんだけどさ、言ってることは高野さんと一緒じゃない?(笑) なんか両極端なんだけど、可笑しいよね!
一方で、こんなのも発見。そう、多くの人はこんな感じで人生終っていくんだよ。いるいる、どんなに末端でも音楽の側にいたい、って人。まさにカズオ・イシグロの「与えられた人生の中で、それでも自分の小さな尊厳を精一杯まもりながら…」ってやつ。それはそれで人間の美しさが表れていて好きな世界。でも、だからこそ自由な選択肢に恵まれた人間は、自分のやりたいことを諦めちゃいけないんだよね。
PS
高野ファンを満足させることはもちろん、高野さんのことをまったく知らない人にも楽しく読めるであろう1冊。
しかし好きなことを極めつつもホントにすごい高野さんだが、そのたたずまいはいつも静かなのである。あいかわらず言葉は優しい。でもすごく力強くて良い事がたくさん書いてあるんだ。すごく響いたよ。
いや、実は先日も某所で高野さんがいい、という話を友達としていて「高野さんの、あの“運ばれて行く感”がいい」みたいなことを私が言ったら、友人は「いや、高野さんは決して運ばれてなんかいない。警備にあんなにお金払ったり… お金払ってるって事は、自分でものすごくコミットしてるんですよ」とするどい指摘をされて、「うーん、さすがだ!(高野さんも、そう説明してくれた友人も)」と、妙に納得したのであった。
高野さんは、すごく謙虚で、いつも文章が優しいから、ついついそう思っちゃうけど、本当に強くてかっこいい人だ。それは読者が一番よく知ってる。
ちなみに「間違う力10ケ条」は…
第1条:他人のやらないことは無意味でもやる
第2条:長期スパンで物事を考えない
第3条:合理的に奇跡を狙う
第4条:他人の非常識な言い分を聞く
第5条:身近にあるものを無理矢理でも利用する
第6条:怪しい人にはついていく
第7条:過ぎたるは及ばざるよりずっといい
第8条:ラクをするためには努力を惜しまない
第9条:奇襲に頼る
第10条:一流より二流をめざす
あいかわらずソフトな語り口だから、スイスイ読んでしまうわけなのだが、自分じゃ何も行動を起こさず、そのくせ自分の人生に不満たらたらな人は耳をかっぽじって、よく高野さんの言うことを聞いてほしいと思う。これはすごく力強いメッセージが込められた本だから。
私も好きなことを仕事にしてしまった口だから、思い当たる事が一杯ある。好きなことを仕事にしてしまっている連中に共通することなんだけど、やっぱり「馬鹿である」ということ。そして思い当たるのは「慎重すぎた結果、何もコミット出来なかった頭のいい人たち」の話。バカに言わせれば、たとえ失敗しても、行動に移したという事実は、その後の血となり肉となるわけだ。ところが何も行動しなかった人はいつまでたってもゼロである、ということ。
あと笑ったのは「今、わたしのひそかなる夢は『アメリカに語学留学して英語がペラペラになること』」という下り。これ、サラームさんの「(中東で空爆?に遭遇した時)マクドナルドでBGMのビリー・ジョエルを聞きながら“初めてアメリカに行ってみたいと思った”ってのに似てる!!! もう二人とも超爆笑!
だって高野さん、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、タイ語、中国語、ビルマ語、アラビア語、ワ語、オリヤー語、ソマリ語、シャン語、ヒンディー語、スワヒリ語、ベトナム語、ベンガル語、ペルシア語、カンボジア語、韓国語、トルコ語、カチン語などが使えるんだよ!! ご本人「私の言語能力というのは品揃えは豊富だが、すべて粗悪品」って言うけど、すごすぎるよ!! 一方のアメリカは30年前、南米へのトランジットで寄った程度。イギリスは(この本が書かれる)5年前に初めて行った。カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランドにいたっては行ったことが無いそうだ(爆)
もし自分の能力をすべて英語につぎこんでいたら、ものすごい英語マスターもしくは英語/フランス語/中国語の3カ国マスターになっていたかもしれない…(笑)と高野さんは言う。でもそんな風に自虐的に自分を落としながら、やっぱり高野さんはすごい。そんなにたくさんの言葉をしゃべれる人なんか、他にいない。しかもこんなマイナー言語まで!! きっと地球外未知生物が表れたら,そいつの言葉を解読するために、きっとペンタゴンが高野さんが連れにやってくると思う。いや、マジで!!(そして高野さんは初めてアメリカにきちんと行くことになる/笑)
他にも「ユニークなことをしている人ほど動きが早い。オリジナリティとスピードはどこかでつながっている」とか、「ちゃんとしなくてもいい。でも今、はじめる。そこからオンリー・ワンは生まれる」とか。とにかくバカをはげましてくれる言葉に溢れてるんです,この本は!!
あと興味深かったこと。自分の文章に「情報」「技術」「科学」という三原則を置いているということ。「情報」というのは、必ず読者が読んで「あ、これ初めて知った」という新しい情報を入れておくこと。「技術」というのは、わかりやすく面白く書く、ということ(これはホントにすごいと思う)。自分も読者も思考停止にならないよう、思考を動かし続けるように書く、と。そして「科学」。「科学」というのは合理性、理論に納得があること。そして不要なことは書かないこと。これ、妙に納得するのだ。すごいなぁ、高野さん。
ただしご自身は、そうした結果、結局のところ自分の文章には「色気」や「つや」がない、なんて嘆いていらっしゃるわけなのだが、いや、だからこそこれだけの読者を引っ張っていってくれているのだろう。まさに「オンリー・ワン」の存在なのである。
そして「自分=ジャンル」になる、ということ。ライターだけじゃなくて、これはどんな職業でもありうる事だ。音楽の世界だってそうだ。
あと過去のことを振り返らない。たとえば画家になろうという友達がいる。彼も最初はもしかしたら甘い考えでスタートしたのかもしれない。「でも今となっては、どっちでもいいのだ」と高野さんは言ってくれる。だって「もう選択しているんだから、当時の本気度なんてどうでもいい。もうやるしかないのである」と高野さんは言う。あぁ、なんか勇気もらうわー。
高野さんの「長くやっているとチャンスも自然と何度も訪れる」と言う言葉にも勇気をもらった。勘や人生論ではなく統計学的にそういうものなんだ、と。やっとチャンスが訪れても、その時までに積み上げたものがなければ、やっぱりたいした高さは飛べない。でもその時までに積み上げたものがあれば、高く飛べる、と。高野さんも「ワセダ三畳」が売れた時、それまでに書いた本が何冊もあった。ここで過去の本3冊が売れるのと、過去の本10冊が売れるのとでは訳が違う。そういう私も高野本、今だに読んでも読んでも、まだ読んでない本ある(笑) それまでの努力が、そのチャンスを生かすすごいパワーとなるのだ。だからやっぱり続けるべきなのだ。
さていろいろ書いた高野さんが読者に伝えたいことはシンプルに3つだ。
(1)とにかくやること
(2)手段を選ばないこと
(3)正しいかどうかより面白いかどうかで決めること
とくに(3)は、ホントに重要。何をやるのしてもワクワクしているかがホントに大事だ、と高野さんは言う。あぁ、もうホントにやばい。ますますこの本でバカが勇気をもらってしまったではないかっ!!
ありがとう、高野さん。いいよ。すごくいい!! 「人生に間違いなどない」とこの本は結ばれている。ホントだ。本当にそうだ。この本は名著『謎の独立国家ソマリランド』より前に書かれたそうで,この本のあと、高野さんは「ソマリ」の第1人者として、学者の先生からも一目置かれるような存在になるわけだ。ホントにすごいと思う。やっぱり最高にかっこいい。
PS
ところでこっちは友達がやってる書評ブログ。この『大富豪からの手紙』って面白ろそうだし、実際はやっているみたい。ただもう「大富豪」ってのが、なんかすでに下品なんだけどさ、言ってることは高野さんと一緒じゃない?(笑) なんか両極端なんだけど、可笑しいよね!
— TOKUMOTOMASAHIRO (@masahirotokumo) 2018年3月31日
一方で、こんなのも発見。そう、多くの人はこんな感じで人生終っていくんだよ。いるいる、どんなに末端でも音楽の側にいたい、って人。まさにカズオ・イシグロの「与えられた人生の中で、それでも自分の小さな尊厳を精一杯まもりながら…」ってやつ。それはそれで人間の美しさが表れていて好きな世界。でも、だからこそ自由な選択肢に恵まれた人間は、自分のやりたいことを諦めちゃいけないんだよね。
響く。もちろん「それでいいのかよ」みたいな部分は大きい。でも多くの人はこんな感じで人生終っていくんだろうなぁ。ま、それはそれで幸せならいいんじゃない?:アメリカのバンドマンが居酒屋バイトをしないわけ、もしくは『ラ・ラ・ランド』に物申す https://t.co/IlbFwmpN2t— 野崎洋子 (@mplantyoko) 2018年3月31日
PS
こんなにデカく載るとは…。日経MJも間違ってる。記者の方は「五月病対策に」と言っていたが、会社に一度も勤めたことのない人間にアドバイスを求めるのも間違っている。 https://t.co/rcvKl9ylNj— 高野秀行 (@daruma1021) 2018年4月12日