佐々木俊尚『広く弱くつながって生きる』を読みました。これは勇気をもらえる!

佐々木俊尚さんの本はいつも優しく私たちを励ましてくれる。そこが好きだ。本作もまったくもって優しい語り口で、とても分かりやすい。

たまに人の悩みを聞く機会があったとして、思うことは、人の悩みのほとんどは人間関係だということだ。私みたいに気楽な一人暮らし&自営業だと、そりゃあストレスもないわな、と思う。っていうか、ストレスあるんだけどさ、そのストレスの質がきっと違うんだろうなって思う。

でも普通の人は職場だって、そう簡単に変えられないし、家族からだって自由になれない。友達だって選べない。それが普通だろう。が、佐々木さんも書いているように「固定化されたコミュニティ」ってのは、ホントに圧迫感しか生まない。それは精神的に非常に良くない。

でもって最近さらに多いのがSNSでの悩み。みんな驚くほどSNSでの「いいね」の数やいろんなことを心配している。それって…時間の無駄じゃない?と私なんぞは思うし、友達にそういう話された時は、バッサリと「それ時間の無駄だよ」と一刀両断してしまうキツイ性格の自分がいるのだが、ま、そんなアドバイスをあげても、本人の悩みが解決されたケースを見たことがないから、それは良いアドバイスになっていないのだろう。ははは…

だからそういう人たちには,この本をお薦めする。私の言うことなら聞けなくても、佐々木さんのこの優しい語り口なら、耳を傾ける人は多いのではないだろうか。

しかし、例えば職場の人間関係で悩むのならまだしも理解できる。職場は、我慢しなくちゃいけなかったとしても、我慢してそこにいさえしていればお金がもらえるのだから! でも、ネット世間に悩まされるって、何かが間違っ ているとしか思えない。だって、そこはお金がもわえるわけではないし、そこにかじりついていたって、生活が安定するわけではないんだよ。それなのに?! なぜそんなに悩む!?

大事なのは悩むより、それをいかに利用するかを考えること。例えばfacebookには、いろいろなコミュニティがあり、いろんなイベントに気楽に参加できる。それをどんどん活用して、広い世界を見なくっちゃ。佐々木さんもそれで仕事にはまったく関係ない(と、一見思われる)山登りや狩猟関係のイベントに出かけたり、とても楽しそうなのだ。

佐々木さんは、そうやって人脈を広げて行くためには、常に不用意なネガティブ発言はしないことだと言う。あぁ、私も反省しないとなぁ。自分が「言ったら気持ちがいい」って言うだけで、イヤな事いって、人を傷つけていないか? そういうの、もっと考えなくちゃ。

他にもこの本を読んで心に残ったことがたくさんあるので、自分のためにここにメモ。「会った時、相手を大切にすること」というのは、すごく響いたね。確かに、そうなのよ。普段の人間関係はユルく、fbとかSNSに預けて、ほおっておいていいんです。で、その分、会った時にはちゃんと相手に向き合い大切にする、と。うん、いいなぁ! これ、すごくあることで、実際SNSで「いいね」やメンションをたくさんくれる友達が、私のことを気にかけてくれているとは限らないのだから。

他にも忘れちゃいけないことがいろいろ。プライバシーの公表を必要以上に恐れてはいけない、ということ。例えば日本と比べたら北欧や英国などでは、もうプライバシーなどないに等しいし、メールアドレスを他人に渡すことも、誰もまったく気にしない。(日本だけだ。〜さんにご連絡先を渡していいですか?って断るのは… でも私も日本に住んでるからしょうがないからやるけどね…)もう社会がそういう社会になりつつあるのだ、というのを認識しないといけない。じゃないと、現代社会のこのスピード感や、あらゆる恩恵も手に入らない。

そして他者との相互作用で、個は築かれるということ。だから面ではなく「1本1本の線をきちんと愛おしむ」。「同調圧力を生まないようにする」「時々fbで相手の行動を確認する」。同じことをもう一度書くが「会った時には大切にする」などなど。どれもとても重要な事だ。

そして一番大事なのは、強い関係でも弱い関係でもなく「持続性がある関係」。なるほどこれにも納得。いや、実際50超えて、友達がいると、もう10年友達です、とか20年友達です、とか、しょっちゅう出て来るわけですよ。振り返って思うのは、やはり一番大事なのは「続いている友達」だということ。今の時代には極端な人間関係が重要視される傾向にあるけど、それは本当は違う、と。これ、人間関係だけじゃなく仕事も一緒だね。いや、ホント実感するわ…

あと夫婦で友達をシェアしない方がいい、ってのにも、めっちゃ共感。人間関係って,いろんなレイヤーがあって、そのレイヤーをあまり混ぜない方がいい、ということ。これ、すごく分かる。(最近、日本のすごく偉い人の奥さんによる超勘違いの例もありますしね…)

一方で、私は仕事仲間が自分の親友みたいになっていくケースが大きいので、これはこれでどうなのかな、とも考えた。でも… 特にフリーランス同士とか、フリーランスと経営者とかだとそうなりがちなんだけど、仕事こそ価値観がぴったりあってないと、一緒に出来やしないんだわ。仕事仲間の多くはみんな音楽が大好きで、食べものが大好きで,正義感や社会に対する考え方まで私に似ている。こんなに居心地のいい場所があるだろうか… これはこれでやばいと思わないではないが…(笑) しかもその中で、適度にみんなから距離を保ち、一匹狼でいることが許される。だってお互いフリーランスだから。自分の自由が一番大事と思っている皆さんだから。そんな彼らとは、しょっちゅう会わなくてもいいわけで、ただ、お互いが「あぁ,誰々さん、頑張ってるんだなぁ」っていうことをfbで確認しあえる。そして尊敬しあえる。そんな関係が本当に最高なのだ。

あとちょっとビックリしたのが、以前佐々木さんは「一定額のギャラ以下の仕事は受けない、業界全体にも悪影響が出るし」という話をされていて、それにはすごく共感していたのであるが,この本では「ここ、6、7年は、無料でも誘われれば行く」みたいな話をされていたこと。年齢的なこともあるのかなぁ(佐々木さんは私より4つ上だ)。

一方の私は、まだ自分の中で譲れない部分がたくさんあるかなぁ。ここんとこお金にならないであろうコンサル仕事が結構発生しているのだから、これまた悩ましい。もちろんどれも、私にとっては大事な人脈であることには代わりはない。が、そろそろ考えないとなぁ、という岐路に来ているのも事実。はぁ、まだまだだなぁ、自分も。まだ佐々木さんのように達観できてはいない。でも「合理性の果てに人間性が残る」というのも響いた。合理的でいいことは合理的にとっととすませてしまい、大事なことに時間をつかいじっくり取り組んだ方がいい。

あと忘れちゃ行けない… この本でまったく私が気づいてなかった新しい希望をもらった点があって、それは、転職可能年齢はおそらくどんどん上がって行く、という事。確かに。でも佐々木さんに言われるまで気づかなかったよ。でも、もうホントに若者だけに働かせていては、社会がたちゆかないところまで来ちゃっているのだ。そしてどんな職能でもプロになりうる、という話も。確かに、佐々木さんのお友達の例を見るまでもなく、今や接客のプロなんて、ひっぱりだこだろう。今は過渡期であれこれ大変でも,将来、ものすごい給料を獲得できるチャンスも来ると言えなくもない。だから、これから自分の人生を変えたいと思っている人は、遅すぎることはない。そんなことも書いてある。だから勇気をもらえるよ、この本に!

そして佐々木さんが始めた他拠点生活も面白かった。今、佐々木さんは東京/軽井沢/福井に拠点を持ってらっしゃる。私は日本にいる限りは東京、そして今の荒川土手が気に入っているので、ここから動く予定も願望もないし、他に拠点を持つつもりもないが、一時はダブリンに部屋を持っていた。あれは、今思い出しても良かったよなぁ。結局全然ダブリンの部屋に行けてなかったんだけど… それでも東京で部屋の鍵をながめながら、ホントに嬉しく思っていた。

あ、あと佐々木さんの小説をほとんど読まないってのも、共感した。私も読むのは佐々木さんと同じ「世界観を学べるノンフィクション」中心。これだけ情報があれこれ溢れていると、排除する知識を先に考えるのは1つのやり方っていう話にも、すごい納得。

それからもう1コあった。これはこの本では、重要ではない箇所だったかもしれないが、ヨーロッパと違って階層社会がない日本には「本当の意味でのお金持ち文化がない」という記述。そうなのよね!! だから日本には寄附文化とかも全然ないし、芸術をサポートするみたいな感覚もないの。ま、日本はそういう国なのよね、いうのを再確認したかな。あと「達成が楽しいのは達成した瞬間だけ」というのも響いたなぁ… それよりもプロセスを楽しめ、と。

というわけで、この本、お薦めです。自分が響いた箇所をメモりましたが、もう一度読めば、きっとさらに響くことがたくさん書いてあると思う。最初に戻りますが,人間関係で悩んでいる人。読んだ方がいいですよ。