ブ厚く見えるけど改行多くて読みやすい。値段も2000円以下だし… |
数年前にNHKで放送された『大アマゾン 最後のイゾラド』を覚えてらっしゃる方は多いと思う。あまりに強烈な番組だった。文明社会と接触をもたない原住民たち。その書籍版とも言うべき『ノモレ』が出て話題になっていて買うのをずっと躊躇していたが、角幡唯介さんのレビューに押されてついに購入。先日読み終わった。
読み終わってみて、またもう一度NHKオンデマンドでこの番組を見てみた。
もう感動して3回目見ちゃう…:NHKスペシャル 大アマゾン 最後の秘境 第4集「最後のイゾラド 森の果て 未知の人々」 -NHKオンデマンド https://t.co/p8xdWLrodq— 野崎洋子 (@mplantyoko) 2018年8月17日
再度見てみれば… やばい… ほんとだ、確かに「ノモレ、ノモレ」って言ってる。「ノモレ」とは彼らの言葉で「友達」という意味だ。
それにしても、すごい世界だ。文明社会と接触したことのない人間を「イゾラド」と呼ぶ。今や多くの原住民が、文明社会の保護下にあるので、こういった人たちはもはや地球上に存在しないのではないかと思われてきた。そしてまた凶暴で野蛮な人間を「マシュコ・ピーロ」と呼ぶ。こちらは多分いわゆる蔑称なんだろうと思われる。
よく何も知らない人が、アマゾンの原住民を指差して「ほおっておいてあげて」「そっとしておいてあげて」と言うが、いや、実は違うのだ。彼らはほおっておくとあっという間に絶滅してしまう。そしてこの地域にも観光客が訪れたり、近くに幹線道路が出来たりしており(一般の人間と接触すると免疫を持たない彼らはあっという間に死んでしまう)、政府の保護下にある原住民たちと衝突、殺し合いも起こってしまう。となると… 政府としては見つけた以上、自分の監視下に彼らを置くしかないのだ。そういった議論は実は現場ではとっくに終っているのだ。
短命でもいいからそっとしておいてあげて…という人もいるだろう。私がイゾラドだったら自分でもそう思うと思う。が、政府としては… これ他の事でも言えることなんだけど、第3者としては命の炎が消えかかっている時に、これを見捨てるわけにはいかないのだった。外から観た時、それがどんな過酷な運命だったとしても、命の炎を消さないのは絶対条件なのである。(これについては、いろいろ思うこともあるので、あとでまたじっくり書いてみたい)
この本は早くから話題になっていたので、読まなくては…と思ったのだが、何せ積ん読本がたくさんあるオイラである。かなり躊躇していた。が、この角幡さんのレビューが決定的となった。私の書評なんかより、よっぽどいいから是非リンク先を読んでみて…
— 野崎洋子 (@mplantyoko) 2018年8月20日
角幡さんの言葉「この繊細な物語を掴み取り、描き切った著者の詩的な感性と表現力に感服した。川向こうの未知の人たちがやがてロメウの前から姿を消したとき、私はまるで自分の仲間を失ったような気持ちになった。ノモレはイネ族だけのノモレではない。あれは私たちのノモレであり、私たち自身が失った人間性そのものではないかと」
さすが角幡さん、さすがだ…! そうなのだ、この本、一応ノンフィクションなんだけど、筆者の想像の部分(例えばイゾラドの皆さんが思った事など)が多いから、まるでフィクション、良質な物語を読んでいるようだった。
番組との印象があまりに違いすぎる…と友人が言っていたが、ホントにそう。でも、この本、番組が好きだった人は是非手に取ってほしいし、番組を見てなくても充分楽しめると思う。まぁ、でもちょっとロマンチックすぎるかな、というきらいはあるんだけどね(笑)(概して探検を好む男性はロマンチストであると思う。それは多くの探検本、冒険本に見られる傾向である。特にオヤジ系の探検本。誰なのかは言わないけど…)
それにしてもすごい。実は今回発見されたイゾラドは、100年前に生き別れたおじいちゃんの友達(ノモレ)の子孫である可能性が高い、とこの本の主人公ロメウは考えているのだが、テレビ番組では紹介されていなかった、その話にぐっとフォーカスをあてたまったく別の物語が完成したということだろう。
私はでも実際には元原住民であるロメウはもっとドライに考えていると思う。時間の感覚も私たちとは違うものを持っているに違いないのだから。
でも、いや、それが何だと言うのだ。同時に言える大事なことは、読書をすることが、これだけ楽しいのは、そして私の世界がこれだけ素晴らしいものになっているのは、私たちの想像力のパワーなのだ。それを考えるに、この本は非常に完成度が高い。
同時に私は比較的ドライに作られた(ように見える)テレビ番組の方もファンである。松田龍平のナレーションがいい。最後、イゾラドたちがNHKの質問に答えた言葉は何度見てもグッと来る。
「文明側の人間をどう思っているのか」
「なぜ他の先住民を殺めたのか」
「あなたたちは幸せなのか」
「あなたたちは怖い」
「あなたたちが先に殺した」
「幸せは分らない」
あぁ、オレもアマゾンに行きたいと願う。そして生きる意味とはいったい何なのか、徹底的に追及してみたいのだ。同じNHKのディレクターさん作の『ヤノマミ』も買っちまったぜい。
こちらのインタビューも必読です。
『ノモレ』の著者・国分拓インタビュー「アマゾンの“時間”を書く」 NHKスペシャル「最後のイゾラド」から生まれた一冊 https://t.co/thPwv25mI9 #bookbang— 野崎洋子 (@mplantyoko) 2018年8月20日