ヴェーセン5回連続公演、決定までの経緯。

というわけで、今夜24時からチケット発売になります、ヴェーセンの5回連続公演。


先日関西のプロモーター仲間がフルックの京都公演にかけつけてくれたのだけど、私がiPadに入ったこのチラシのデザインを見せたら、「野崎さん、よくメンバー説得しましたね」と感心された。ふふふ、さすがはプロ。分ってる。そうでしょう、そうでしょう。

普通アーティストというのは自分が普段自国でやっている公演をそのまま日本でもやりたがるものだ。それが、5回同じ会場で、もしかすると同じお客さんのために連続ともなれば、5回それなりのものを見せないといけない。これは正直芸術的ハードルが非常に高い。また普段と違うプログラムをやるとなれば、準備もあるし時間もかかる。ヴェーセンのギャラはそれなりに高いけど(笑)このプロジェクトだけに例えば2週間とかリハに取り組む時間が取れるほど余裕のある金額を提示しているわけでもない。

だからヴェーセンで5回連続をやろうと思っていても、彼らは嫌がるんじゃないかと私は最初思っていた。

5回連続というヒントは、実は日本人の音楽評論家/ミュージシャン和久井光司さんからちょうだいした。彼はよく「ごやれん(五夜連)」と言って5回連続の公演を東京で行なっていた。確かに、小屋に信頼さえあれば、日本のミュージシャンであれば可能性がある企画だ。が、海外のミュージシャンは普通こんなバカなことは行なわない。常識的に考えて、海外からミュージシャンを呼ぶプロモーターは、一刻でも早く効率的に公演を行うためミュージシャンの人気のサイズにあった大きな公演を1回だけ打ち、そのままとっとと帰国させるのが一番ビジネスとしては賢いやり方だからだ。長くいればいるほど宿泊費もかかるし、食費もかかる。

でも私は、逆に招聘アーティストが「5夜連」をやればインパクトがある、と考えている。ウチで最初に「5夜連」をやったのはグレン・ティルブルックだった。そしてその後はラウーも。その時に学んだ作戦は4夜まで先に発表して5夜目は追加として発表する… とか、連続して来てくれた人には割引をつけるとか、土日の動員は問題ないはずなので、月曜日はその勢いでいける…だから最終日は月曜日がいい…といった小技たちだ。

1年まえから押さえないと取れない東京の小屋と、彼らのニューアルバムの発売のタイミングをあわせるのは毎度至難の技だ。となると、来日を重ねるにあたり色々技を考えないとお客さんは戻ってきてはくれない。事務所の20周年、バンドの25周年でJPPとの共演、東京の歴史的建造物との共演などなど、あれやこれやのネタを今までも考えてきた。が、なかなかこの「ヴェーセン5回連続」というアイディアは、私が一方的に考えていてもなかなか実現が出来なかった。

でも、今やレパートリーが山のように増えて、昔演奏してた「建物/ビグナン」とか「90本のポテトフライ」やら「ジョセフィン」や「30歳のジグ」もやらなくなってしまったヴェーセンの過去の作品が聞きたいと思っているのは私だけではないだろう。

とはいえ… また最初に戻るのだが、これをヴェーセン側に提案するのはかなり勇気がいった。

話は2年前の7月のノルウェーにさかのぼる。私はノルウェーのフォルデ・フェスティバルに来ていた。ヴェーセンはその年の出演バンドの1つで、私同様、同じホテルに数日連続で泊まっていたから、朝ご飯を一緒に取ることが多かった。ある朝、朝食の場所に降りて行くとヴィオラのミッケ(ミカエル)が1人で朝食を食べていたので、私はそのテーブルに合流し、ミッケと二人で一緒に朝食を食べることになった。そこで、ミッケと、これからやるオーストリアのデュオのことや、これから観る予定のハンガリーのフィドル奏者のことなど話が盛り上がったのだが、なんとなく、ヴェーセンの来日、この次はいつがいいかね、という話になっていった。

普段、このテの話はバンドのマネジャーでもあるウーロフにすることが多いのだが、ミッケはウーロフよりも語り口がソフトで優しいのだ。優しいミッケとの会話にうながされて、つい私も言ってしまった。「ヴェーセン、5回連続公演ってどう思う?」と。

そしたら「うーん、それは難しいのでは?」と言うかと思ったミッケは思いのほか乗り気で「それ、いいねぇ!」と目を輝かせた。「2019年だったらヴェーセン30周年だし、いいかも」「一晩ずつ曲のタイトルにしてみては?」と言ったのもミッケだった。ミッケのオッケーが得られた私は、そこからはすぐにウーロフに話し、ローゲルに話し,あっという間にこの企画が決まったのだった。

そして最終的に、ミッケは、この5夜のタイトルを決め,音楽監督まで引受けてくれたのだった。(というわけで、内容はミッケ任せにすることにした。どうなるかは、彼の手腕に期待しててください/笑)

実際、彼ら自身も分っているのだ。世界中でこの企画が出来るとしたら、実は日本でしかありえないのを。ヨーロッパもアメリカもヴェーセンのファンはいるが、一番熱心なのは日本のファンだということを。

そして東京に戻ってきた私には会場選びという重責がのしかかって来るわけなのだが、オペラシティのこの名門会場をこれだけ連続で押さえるのは、また大変な事なのであった… ま、その話はまた次回。

というわけで、どうか、日本のファンの皆さん、彼らの意気込みを感じて、是非ご来場ください。今夜よりチケット販売いたします。詳細はこちらへどうぞ。