(だいぶ前の話ですが)第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール公開記者会見に行ってきました。


ショパン国際コンクールは皆さん、ご存知ですよね。世界最高のピアノの登竜門。なんとそのショパン・コンクールに今度「ピリオド楽器」のコンクールが出来たということで、昨年3月その発表記者会見に行ってきました。@トッパンホール。もう1年前だ…

ショパンのルーツであるポーランドの農村マズルカに注目しているウチとしては、めっちゃ追い風。こうやって、今、ショパンのルーツが注目されてきているぞ!!

 「ピリオド楽器」って分かります? 簡単に言ってしまえば古楽器。その曲が作られた当時の楽器のことをさすんですが、つまりショパンが生きて作曲していた時代、ピアノはこういうものだったんだよ、と。当時のピアノと今のピアノでは、だいぶ様子が違っていた。

しかし楽譜に込められた作曲家の意図をさぐるのがクラシックであるとするならば、こういう動きは正しいのかもしれません。

とにかく『ピアノの森』も読んだばかりという,ショパン初心者の私にとっては、ワクワクする話ばかり。どうやらまずは演奏を収録したDVDでの審査があり、そのあと80名で本番のコンクールへと突入するのだそうです。『ピアノの森』で読んだみたいに(笑)リサイタルが2本、そしてオーケストラとの共演でコンチェルト形式のものが1本。これはネット中継もあり、ポーランドのTV局やラジオ局でも放送されます。年齢制限があって18歳以上35歳以下(私も応募したかったけど、ダメじゃん!…とかふざけたこと書くと怒られそう)。

あと楽器はエラールまたはプレイエルの工房で制作されたピアノ、またはショパンの生存期間のウィーン式ピアノまたはそのコピーで演奏されなければならない、とあります。うひょ〜っっ!  曲目はでもバッハとかでもいいみたい。とにかく応募要項に詳しく書いてあるので、若くてピアノが上手な方は是非!!

この日はまず大使館の方の挨拶、国立ショパン研究所副所長そして2つのコンクールのチーフ・プロデューサー、そしてポーランド音楽出版社の編集長のお話があり、その後に80年第10回ショパンコンクールで優勝したピアニスト、ダン・タイ・ソンさんのお話と簡単な演奏がありました。

これが面白かった。ダン・タイ・ソンさんはハノイ出身。アジア人ではじめてショパン・コンクールで優勝した人なんだって。すごいね! ご自身はピリオド楽器での録音CDも出されたりしていらっしゃる。(一番下に紹介)

ダン・タイ・ソンさんによれば、2つの楽器はまるで違うんだって。ショパンの時代、ホールは小さかった。大きくてもせいぜい400人くらい(そう、このトッパンホールと同じくらい)。だから楽器も全然違ってた。今はやはり大きなコンサートホール用であり、音のヴァイブレーションが全然違う、とのこと。

ソンさんが弾くと、確かに2つのピリオド楽器と通常のピアノ。まったく音が違う! 今のピアノは音がデカいです。 そしてどこまでも遠くに音が飛んで行く感じ。一方のピリオド楽器は、音がソフトで優しくて、そして1つ1つの音の粒が聴こえてくる感じ。ソンさんは「今のピアノは歌う、当時のピアノは語る」って表現してた。なるほど。まるで詩人のような感じ。言葉を伝えるような感じ。とにかくこのピリオド楽器の音が、当時のオリジナルのサウンド。真実のショパンの響きとも言える、とのお話でした。それはもちろんポーランドにとっては、とても重要な音でもあります。

当時の楽器ですべてのクラシック音楽が演奏されるべきだろうか、という記者さんの質問に対しては、様々なショパンの解釈の1つとして提案してるにすぎない。ショパンの時代というのは、ピアノの制作技術が急激に成長していった時代だったのだから、と。

他の作曲家と比較してもショパンでこの企画をトライすることに積極的な意味があるのか、という話には、たとえば同じロマン派でもシューマンなんかはとても親密な空気を好んだ作曲家。一方でリストはシンフォニーのような音質で、現代のピアノのパワフルさには合っているのかも?というお話し。彼はパワフルなプレイヤーでもあったとのことで、オーケストラのようなテクスチャーというか、現代楽器の波のような大きな音にぴったり。一方の木製の枠のピアノは、直線的な音。どちらがいいかと言われれば、コンサートホールではやはり今の楽器の方がよい、との事。うーむ。

ピリオド楽器はサイズが小さく、音はかぼそく、音の響きも短いのだ、とソンさんは説明されていましたね。で、ダン・タイ・ソンさんはこんなCDボックスにも参加している。まさに「Real Chopin 本物のショパン」。すごいなぁ!




PS
そしてこのコンクールで2位だった川口さん。NHKのドキュメンタリーも面白かった。現在日本国内ツアー中(普段はオランダ在住だそうです)