先日、某公演の感想を友人と話していて思ったことがあったので、いったんまとめておく。
いわゆる「公演運び」というやつだ。そのバンドは曲はいいのだが、ライブ慣れしておらず、どうしても1曲終わるとデレデレとチューニングしたりなんだりで公演運びがよろしくない、という評価を受けた。
なるほど、と思う。ステージをオーディエンスに楽しんでもらうという前提がある以上、公演運びは上手くないといけない。楽器や歌がすぐれている、というだけではエンタテイメントとしては成立しない。もちろんすば抜けてすごければ、それはそれで価値があることだろうが、世の中のほとんどの音楽はその域まで達していない。
ステージの演出や照明によってステージは持ち上げられる。音響も生(なま)より20%くらい上手く見せることは可能だ。その時、重要なのは技術がすぐれていることではなく、「公演運び」が上手いということだ。
公演運びが上手い子やバンドは、これまたいくらでもいる。公演運びが上手いだけで生き残っている人たちも多い。というか、そういうバンドは多い。よ〜く聞けばたいしたことやってないのに、それなりのものに聞こえる。何より楽しめる。でもそっちの方が重要であって、ミュージシャンが満足しお客が満足しているのであれば、外野が何をいわんか…である。
何が重要なんだろう。例えばウチの連中でいえばヴェーセンなんかは音楽的に申し分ないし「公演運び」も独特のスタイルだとは思うし、ステージは素の彼らの魅力、ということになるだろう。ヴェーセンの公演運びが上手いと思ったことはないが、だいぶ前に彼らに「ペラペラしゃべってないで、頭3曲はMCなしで決めてみれば? かっこいいよ」と言ったら、(当時は)めったに私の言うことを聞かなかった彼らがそれをやってくれたことがあった。というか、今もそうしてくれていると思う。フォークの連中はとにかくしゃべりすぎる。
いわゆるビック・プロダクションものになれば、しゃべりはかなり限定されるし、あったとしても短いし、ちゃんと脚本家や演出家が客観的に手をいれたりする。フォークの連中でも人の公演にいかないやつは、そこが学べない。アムロちゃんを見ろ。ぺらぺらしゃべってないだろうが。あぁいうのはかっこいいし、いさぎよいと思う。うちの連中の中でもこの点がダメなのはフルックで、何度言ってもベラペラペラペラよくしゃべる。というか空気を読むの事態も不得意である。曲や演奏が抜群にいいということについては異論はないし最高だ。だからこのバンドをやっているのであるが、公演運びについては最近はもう諦めている。とにかくしゃべるたびに音楽のフローが壊されテンションが下がるので、あれは本当に考えたい。上手いアドバイスの仕方はないだろうか、いつも考える。アーティストとつきあうって難しい。音楽的なことで何かいうことは私に限ってはめったにないが「公演運び」については、本当にいろいろ言いたいことがあるんだけど…。
その点、最近の若いバンドはトラッドやフォークの連中でも「運び」が上手い。MCも上手だしテンポがいい。全体の公演の流れを客観的に自分たちで見ることができる。今はそうでもないけど昔は地方のホールに行くと公演に通訳をいれろと言われることがあるが、私は個人的にはそれは避けたいと考えている。そもそも外国の文化を体験してもらいたいし、英語もがんばって聞いてほしいし、プロの通訳さんが上手にやるならともかく、そうでもしないかぎり公演のフローというか、大事な公演の流れを壊しかねない…。例えば 局アナ的な通訳なんぞは最低中の最低でダサいと私は思うのだが、でもそういったものが要求される場は多い。また英語がわかるお客がミュージシャンのジョークに笑えば、英語が出来ず笑えなかったお客を取り残しかねない。重要なのは会場内の一体感であり、英語が通じる・通じないということではないのだ。
…と、まぁ、いろいろ考える。でも若いバンドはみんな要領がいいというか、演奏はたいしたことないのに公演運びが上手い。ルナサなんかも下手するとケヴィンが面白いことを言わないかぎり最低のステージ運びだったかもしれない。というか、間違いなくそうだろう。音楽は最高なんだけど。そういやルナサのとあるメンバーが「アメリカのお客は本当に音楽を理解しているか疑問だ。彼らはアイリッシュのルーツを体験しに来て、かつケヴィンのジョークに笑えればそれでいいと思っているんじゃないか」と悩みを告白していたことがあるが、実際どうなんだろう。その点、英語がフルに理解されていない、アイリッシュのルーツもない日本で彼らが評価されているというのは特筆に値する。これを当たり前のと思ったらバチがあたる。公演運びが下手な連中でも、チケットを買ってくれるお客さんは本当に理解があると思う。
私がミュージシャンの連中にアドバイスできるのは、そういった「公演運び」やせいぜいインタビューの受け答えの仕方などなので… まぁ、本当にスタッフができることは少ないよなぁ、といつも思う。
久しぶりにルナサのこの曲を。ルナサのCDはここで買えます。
PS
時々見ているテレビのワイドショーの女子アナが新人らしく間違えなく読むのにいつも必死で完全に番組の流れを止めてる。やっぱり読む技術より全体の流れを止めない能力の方がが重要なんだよな… すべての仕事においてそうかもしれない。