『千年の夢』斎藤なずなさんの漫画が素晴らしい

芥川の話…うーん、激しい。
以前漫画ネタをここに書いたら、結構好評だったので、また書いてみたいと思います。部屋を掃除してたら出てきた。文人たちの愛憎劇を描いた漫画『千年の夢』という漫画なんですけど、これがめちゃくちゃ良いんですよ。初めて読んだのはずいぶん前かな… なんでこの文庫本買ったのかしら。どうやら漫画自体はビックコミックの連載だったらしいけど…ビックコミックで読んで面白いと思って文庫買ったのか… もう記憶がない。

私は子供のころ本当に日本文学は読まない子でした。高校時代から英国かぶれで、ブロンテとかワイルドとかそういうのばっかり読んでた。だから夏目とか太宰とか全然読んでなかった。ちなみに『痴人の愛』なんて、この入院中に青空文庫で初めて読んだってなくらいで…(笑)あと夏目の『こころ』とかも。(どちらの作品もピンとこなかった、といことも書いておきましょう。とほほ…)本当に本読まない子だったんだよね… っていうか、当時から好きな本ばかりなんどもなんども読み返してしまい味わうように読む方で(おたく体質)、好きな本以外は本当に読まなかったんだろうと想像します(笑)。

なにはともあれこの漫画、今はkindleのunlimitedで読むことができます。斎藤なずなさんって40歳でデビューして介護やらお家のことで20歳のブランクがあり今70歳の漫画家さんなんだって。だからすごい作品数が少ない。でもこの文人シリーズは本当に素晴らしいです。

この作品は文人たちのドロドロ愛憎劇が描かれています。心中しちゃった人や、近親相姦まがいの人や、姉と妹と両方とできちゃった人や、不倫やら、依存症やら、横やら斜めやらの人間関係やら… もうぐっちゃぐっちゃ(笑)

でも彼らの作品ときたら、教科書に載るくらい世間に評価されてんだよね。新田次郎だったっけか… 今ではいわゆる文豪と呼ばれている人が、実際のところは作品が大河ドラマになるかとか動揺したり、賞レースうんぬんみたいな俗っぽいことに振り回されていたのを知ってどうも幻滅してしまう。その人がすごいかすごくないかは作品の完成度がすべてであって、100年後の私たちが読むくらいのすごい作品がかけているわけだから、堂々とした人生を歩んでいてほしかったと勝手に理想を描くけど、実際はめっちゃ俗っぽいわけです。ドラマ化されたかとか一過性の人気獲得の理由の1つでしかないと思うし、締め切りうんぬんとかあまりにつまらないことだと思うんだけど… でも生きている当人にとってはそういうことがとても大きなことだったのよねぇー あー、ちっちぇー連中(あっ、言っちゃった。by 黒のざき)

いわゆる教科書にのってる文豪みたいな人は、もっと大きく堂々と大先生然としていてほしいと思うのは勝手な読者の理想なのかしら。でもこれによって文豪たちが身近に感じられるのも事実。ここには弱い人間の赤裸々な姿がたくさん書かれている。書く才能をひょんなことから与えられてしまった人たちの悲劇が、このすごい才能を手にしてしまった人の悲しみが、読んでいるとグイグイ来る。神様って本当に平等で、こんなにすごい才能を与えられた人には悲劇しか待っていないんだわ…。そういうことなのかもしれない。そして、読者である自分はつくづく自分は凡人で良かった、とホッと胸をなでおろすのであった(笑)

岡本かの子(太郎のお母さん)の回。これも圧巻。
ちなみに斎藤さんは最近『夕暮れへ』という本も出した。過去の作品の再編らしいんだけど、文豪たちとは違って、こちらは普通の人の日常の話らしい。昨日ポチったので、読んだらまたここに感想を書いていきたい。

あと文豪シリーズは『恋愛烈伝』というタイトルでkindle unlimitedでも読めます。どうやら何度か再編されててタイトルは違う形で発表されているようです。出版社の都合もあって再販するよりも、再リリースの方がいいってことなんだろうけど、読者にとってはややこしいですよね…。




PS
文豪たちといえば、このページが面白い。