fRoots廃刊

もう発表になってかなりたつが、一応ブログに書いておく。

私がこの仕事を始めた頃からお世話になっていたfROOTS(Folk Roots誌)が廃刊とあいなった。
紙媒体のリリースはなくしても、ブランドはそのままキープ、ウェッブサイトもキープ、スポンサー探しは続けるというが、どうなんだろう。正直、廃刊は時間の問題だと思ってた。

彼らは山のような情報を持っているにも関わらず、上手にデジタルに移行するわけでもなく(サイトも最近まで本当に古いものだった…遅すぎるよね)、一方で新しいネット上のフォークメディアは、まったく新しい人たちによってクリエイトされるようになった。正直、廃刊は時間の問題だったように思う。ちょうど40周年記念を迎えたところだった。

大好きな音楽ジャーナリストのアンドリュー・クロンショウ先生はご自身でコラムをアーカイブしていて、これは本当に今でも便利で重宝しているのだが、私が今、知って活用しているのはそのくらいで、今後どうなっていくんだろうと思う。先生の場合、fbでフェスティバルのレポートなどを公開してくれていて、今年のカウスティネンやエストニアのフェスの写真が素晴らしい。だいたいは友達にならなくても公開されているので、ぜひみなさんもフォローすると良いと思うよ。



英国の場合、例えばBBCがフォークやワールドミュージックの世界から撤退とかあるのかな… 毎年あぶない、あぶないって噂は聞くしどうなんだろう。いずれにしてもメディアには、ちゃんとしたスポンサーが付かなければ、維持していくのは難しいだろうな…。関係者の苦労が想像できる。

昨日見ていたTVでへんなことばかりいうコメンテーターが出ていたけど、その人が「ベッキーの不倫でもダメージが大きかったのはイメージで売っているベッキーの方。男の方は自分の活動の場がゆらぐことはなかった」とか説明していてなるほどな、と思う。メディアとか、芸能とか、人気とか、まったく難しい。ベッキーは私ですら知っているタレントだけど、じゃあ私がベッキーになんらかの金銭を落としているわけではない。fROOTSでいえば実態(実際購入する読者)とイメージ(広告集め)とどのくらいの割合だったのかわからないが、その両方において今後増える要素は今のままでは1つもないわけで、そこが辛かったと思う。

そういえば紙媒体のジャーナリストとして素晴らしかった媒体がネット上にうまく移行し、成功することはあまり事例がない。ネット中心ならネット中心で新しい人材や新しいメディアがでてくるだけで、おどろくほど紙媒体で活躍していた人たちは、第3者に言われないと書かないことが身についてしまっている。時々SNSで「こういう企画やらせてくれないかな〜」とつぶやく。本当にやりたかったら企画書作って持ち込むべきだと思うのだが、それはしない。つぶやきで発せられた情報はつぶやきとして消化されていく。そういう傾向は世界中どこでも一緒だと思う。いずれにせよ得られるギャラは驚くほど少ないので、金額の問題ではないと思う。

fROOTSが「危ない」ということでクラウド・ファンデイングをした時、私もサポートして結構な金額を払ったが、結局のところそれは一次しのぎでしかなかった。それはわかっていた。彼らから将来何かにつながる展望や方針が示されていたわけではなかったから、廃刊は時間の問題だとなんとなく思っていた。

89年ごろだったかイアン・アンダーソン編集長に会いにロンドンの編集部を尋ねたら台所に通され、それがとても笑えた。それでも編集長には、東洋人の小娘の来客が嬉しかったようにも見えた。当時はフォークルーツのライブ・リスティングが情報のすべてだった。インターネットなんてなかったし、ライブ現地見学となるとこのリスティングを穴のあくまで精査して予定を組んだ。これが間違っているとわざわざヨーロッパまで出かけていくことが大変だっただけに命綱でもあった。というか、そもそもチケットも現地の誰かの協力がなければ購入することが難しかった。いろいろと懐かしい。

でも本当に自分はいい時代を体験できたと思う。この仕事、すべてはタイミングだ。タイミングを外した成功はない。フォークルーツ・fROOTSにはちゃんとした記事が多く、それはSONGLINESよりずっと充実していた。今やアーティストが自分で情報を発信できるようになったわけで、今後メディアの役割は考えていかないといけない。…っっていうか、そういう時代になって、もう20年くらいたつのではないか。未だにあまり変化のない状態に正直あきれてはいる。同時に「急激な変化だよなぁ」とも思う。

ちょっと前に日本の音楽ジャーナリストの方がTwitterで、現地のミュージシャンから日本のジャーナリストあて取材してくれ、と直接話が来るというつぶやきがあったが、それは当然の流れだ。本来、取材はレコ社なりプロモーターなりこちらに責任を持つ人がいて初めて組まれる。だいたい取材場所、時間、通訳さんの有無、載せる媒体などが必要なことはわかってないミュージシャンが多い。でも今後は「ミュージシャンが直接」という流れが主流になるだろうし、ドタバタしながらも、そちらの方向に流れは集約されていくのであろう。うかうかしていると、私たちスタッフは置いていかれてしまう。取材なんか身振り手振りで楽屋で立ち話でもいいじゃないか、みたいなことにもなる。そんなんで、読者にちゃんとミュージシャンの意図を伝えられるかと、私たちスタッフのプロ根性を振りかざしたところで虚しいだけだ。ボロボロになりながらも現状は変化していく。そもそも利益が少ない世界。徹底的にコストは削減。そして働かない、関係ない奴は食うべからず… 誰にも何もしないやつに払うお金の余裕なんかないのである。

改めて私たちスタッフは自分の存在意義をミュージシャンやお客さんに示していかないと生き残っていけない。そんなことを考えた。

ベランダの緑の世話が忙しい。朝顔がきれいなんだけど、緑のカーテンにムラがありすぎ… とほほ。毎朝の水やりがかなりの重労働でもあるけど、リハビリを兼ねて頑張っている。


PS
いろいろ書きましたが、fROOTSが時代を担ってきたことには間違いはなく、バックナンバーもここで購入できるようなので、ぜひみなさんも応援してください。