分からないから怖い



誰も行かないところに行って、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書くことに人生を捧げるノンフィクション作家の高野秀行さん。

今回、ラジオに出演した高野さんの言葉が響いたので、自分用にメモ。あいかわらず納豆の取材に余念がない高野さんだが、夏には長いノンフィクションが出る予定だそうで。あぁ、楽しみ。

そして現在のコロナウィルス騒ぎについて話題をふられた時の高野さんの言葉がいい。自分の興味や好奇心の赴くまま旅してきた高野さんには、このウィルス騒ぎはどう映ったのだろう。すごく響いたので、自分用にメモ。

「僕なりの今までの経験から言うと、人間というのは、よくわからないものって、すごく怖いんですよね」

「コロナウィルスもどこまで危険なのかよく分からないじゃないですか。よくわからないってのが、すごく怖いと思うんですよ」

「僕がアフリカとか中東に行くとなると、皆さん二言目には “危なくないですか?” “大丈夫ですか?” って聞かれます。でも中東やアフリカでも危険でないところはたくさんあるわけだし、危険であっても注意すれば避けられる危険っていうのもたくさんあるわけですよ。でも一般の日本の人にとっては中東やアフリカってよくわからないんですよね。よくわからないから危険だ、怖いと思うわけなんですよ」

「これは日本だけじゃなくて中東のイラクやシリアの人たちもコロナ・ウィルスをすごく恐れていて…」

(イラクやシリア、そっちの方がよっぽど怖いと思うじゃないですか、と話をふられて)

「と、思うでしょ? だから、そこなんですよ。本当の危険度ではなくて…。つまりイラクやシリアの人たちにとって…僕がよく知っているのはイラクの人たちですが…イラクの人たちにとってイラクの危険というのは知っている危険なんですよ。テロとか拉致とか暗殺とか。知ってるものは意外に怖くないんですよ」

「でもコロナウィルスというとまったく知らないわけですよ。だから怖いんですよ」

「怖いってのはイコール危険ということではないんですよ。わからない、って事なんですよ」

あぁ、探検家という人たちは、そうやって世界の真理を発見するんだよなぁ。あぁ、もう響きまくり。高野さん、いいわぁ。やっぱりかっこいい。ご本人そういう自覚がないみたいだけど。

私の予想。このコロナ騒ぎはおそらくあと数週間続くが、そのうち大きくショッキングなニュースがなければマスコミが報道するのに飽きてくる。数字が取れなくなってくる。となると、一般の人たちも興味をどんどん失っていく。それは比例して、すごい勢いで下がってくる。震災の時もそうだったけど、感覚が麻痺してくるというのか、人間、そんなに長く緊張事態を続けていくことはできない。そうこうしているうちに普段から金儲けに余念のない人たちは、経済を元に戻そうと必死になり、その振り戻しがくる。そうして、まぁ、収束するわけなんだけど(が、それは決してウイルスの危険がさったというわけではないところが重要)、結局自分たちの努力や何かの結果こうなったという成功体験は一つも得られないまま、そして反省もないままずるずると次の案件へと人々の興味は移行していくのだった。だからまた次に同じような危機が出てきても、危機管理がまったくなされず、まったく学んでこない、自分で努力をしない、自分で決められない私たちはそのままだし、選挙ではあいかわらず保守が勝つであろう。そして半年後くらいにすべてを暴露した本でも出版されて、私なんぞはそれを夢中になって読んだりするわけだ。



高野秀行さんの本はこれらがおすすめ。


番組で紹介されていたのはこちらの本。こちらもいいですよ!



PS
都内で昨日記者会見があった監督より。まったくそのとおり。