佐々木俊尚さん『時間とテクノロジー』を読みました


なんというかビックな本だった。あっという間に読めるかと思ったら、時間がかかった。いや、文章はわかりやすいんだけど、それを自分の頭の中できちんと整理するのに、えらい時間がかかって、理解するまですごく時間がかかった。斜め読みが出来ない本だ。結果2週間くらいこの本を読んでいたんではないだろうか。

なんというか、壮大な本だ。でも佐々木さんの本って、全部そうだよね。大きく考える、大きく。あなたが常識と思っていることは、ここ数年、数十年、数百年、狭い世界の話にすぎないんですよ、と。人類の歴史からみたら、こんなに小さい。地球規模からいったら、こんなに小さい。我々が常識と思っていることは、ほんの短い時期の価値観で、実は時代はこんな風に変わっていってるんですよ、と。

人間の意識って、本当に限界がある。私って、自分でも呆れるほど、全体に対する想像が行き渡っていない。この本を読みながら佐々木さんに言われて、あぁ、そうかと思うことが何度も何度も。とにかくいろんな発見がある本だった。

私たちは本当に不安定な存在だ。確かなものなど何もない。でもじゃあこの本が絶望的かというとそんなことはなく、読後さわやか。ポジティブ。なので、超おすすめです。

それこそピダハン(アマゾンの奥地に住む民族)のものの考え方、そこに宣教にやってきた牧師との会話などを通じて、彼らの時間や過去や未来の捉え方の違いに唖然とする。私もあの本やドキュメンタリーを見て、びっくりしたものだけど…。いや、私も普段、言語が違うとこんなにものの価値が違うのかと外国人と仕事をするたびに思うわけだが、そういうスケールではない。もうなんか圧倒的に違うから、彼らのものの考え方がうまく想像できない。そういう話からどんどん展開していく。未来が背中からやってくる…感じ。わかります?(笑)

映画『極北のナヌーク』を見た時も感じた、まさに「生きるために生きる」という人たち。このフラファティのドキュメンタリーはYou Tubeでも見れるから、見てみて。(無声映画だし、古いからコピーライトもないっぽい) 彼らには過去も未来もない。今(現在)があるだけだ。


そして彼らの自己意識と現在に生きる我々が今もっている自己意識の違いとか、もうなんだか圧倒的だ。確かに自己意識は自分の身を時間と空間の中に置くためにも必要だ。でも数千年前までは人は自己意識を持っていなかったらしい。私がここいいる。今を生きている、という意識。頭の中に二つの心があり、それらが会話していただけだったと。えーーーっっ、そうなんだ。私はもう原始人も私たちと同じように複雑に考え、時間や空間を捉えていると思っていた。違うんだよね。(グリーンランドで何を学んでたんだ、自分!?)

ところがそれがどんどん進み「神の声」が生まれ、宗教が生まれていく…等々。まぁ、とにかく本来ならば、50冊くらい本を読んで深く思考を重ねないと、こういう思考にはならないのだけど、それがこの本一冊にぎゅっと詰まっている。ほんとこの本、長いんだけど、それだけに読む価値がものすごくある。

そして現実や自然ときたら、不安定な「べきの物語」の上にあり、常に臨界状態に進んでいき、ある時一気にことが進むということ。これを常に覚えておかねばいけない。常に安定と臨界、崩壊の間をふらふらとしているのが自然なのだ、と。これは自然だけじゃなく人間関係や社会の多くの面にも当てはまるのだ、と。映画や音楽のヒットもそう。こうだから、こうなったということはなく、とにかく偶然の産物の中でいきなり発生する、と。事前に予測なんかできやしないのだ、と。

あぁ、そうだ。言われてみれば、そうだよ、ホント。

そんな中でいかに自由を得て生きるか。もうこういう時代には、選択したり、判断したりする回数を減らしたいというのが実感ではないだろうか。確かに、もう考えたくもない面倒くさいことは機械にまかせたいもんな。

で、そういう中、時代はAIによって、もう理由すらわからない中で、人はあらゆる方向へ導かれていくということになるのではないか。人間には理由はわからないけど、結果はこうなのだ、だからこれが正しいのだ、と。そういう事例がここには紹介されている。

あぁ、もうこれだけで頭がいっぱい!!(笑)そしていったい「人間性」ってなんなんだろう、と。っつーか、あれ? 自由とかって、選択肢の多さとかって、私たちが欲しかったものだったはずだよね?と。 

佐々木さんは言う。「人生はつらい。ままならないことが多い。無理に選択しても、失敗に終わることはあります。いや、失敗に終わることのほうが多いかもしれません。そのときに、自由であるがゆえの自己責任を問われるよりは、神に責任を負ってもらうほうがどれだけ楽なことでしょうか」そして、そんな中、いったい人間はどうやって一体感を求めていくのだろうか。この世界につながる感覚とは…。それが、手触り? 摩擦? ええっ?

ふふふ、この本読まないと、この感じはわかりませんよ。この辺を佐々木さんはわかりやすく解説していく、 

そして今を共有している人たち、そしてさらには機械や仮想の世界とも相互に作用させていく、その行動によってのみ、生きているということになるのだという結論にこの本は進んでいくわけなんですよ。

そんな中で、果たしてあと10年、20年生きるかもしれない自分は、今、どうしたらいいのだろうとちょっと途方にくれてしまった。でも、そうね、これからも好きなことを追求していくしかないわよね…。

実はまだ自分の中でこの本は消化しきれていない。それほど自分の考え方を見つめ、時間や空間を大きく見つめ、判断するのは難しい。自分は自分という中に囚われている。私も地図の読めない女なのかなぁとは思う(笑)。とにかく本当にこの本は普段の生活の中でついつい近視眼になりがちな自分を正してくれる本なのだ。必読。



PS
おおっ、これは嬉しい。興味もった人は、ここからどうぞ。

PPS
Microsoftのサブスクについに申し込んだ… なんか負けた感。ごめんよ、スティーブ(笑)しかし1TBのクラウド付いてるのにサブスクしてる先から、自分のMacに保存しだす、己の硬さよ… 。まったくもう… Cloudコンピューティングからこっちまるで時代についていけてない…(笑)こんなんで、あと10年仕事できるんだろうか。とほほ…