レシス・アルノー&ヤン・ルソー 『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』を読みました



読んだ。なんというか悪いやつのストーリーは面白いな。

企業のCEOなんて悪いところや人間として冷たいところがないと務まらないものだと思うし、そりゃー真っ白だなんて誰も思っちゃいない。日産 vs ゴーンの縮図だって悪い奴と悪い奴が喧嘩しているようにしか思えないんだが、違うかな。日本をベースにしているフランス人ジャーナリスト2名の共著。なかなか面白くスイスイ読めた。正直経済関係のこととかは読んでてもさっぱり理解できなかったのだけど、面白いのはやっぱり生い立ちやプライベートライフとか、そのへんだよね。

もっともあくまで二人による周辺調査の結果であって本人が明かしているわけではないから(ヴェルサイユの件など本人から話を聞いた郷原さんの本の方が信用できる気がする)この本だけでどうこう言えるわけではないけれど、まぁ、端的にいうと謎に満ちた妙な子供時代、最初のミシュランでのコストカッターとしての成功、日本社会がチヤホヤしてこういうモンスター作っちゃった感じなんだろうか? 

ゴーンはレバノン人の両親のもとブラジルで生まれ、ブラジルで育ち、中等教育はベイルート(レバノン)で受けた。そしてフランスで活躍した。衝撃の事実はお父さんの存在。いや、こんな風な書き方をすると偏見とか差別とか、その見方はバイアスがかかっているよと言われそうだけど、彼の実父は死刑判決を受けるほどかなり重いすごい犯罪を犯した人だった。ほとんど片親だけで育ったようだが、家は裕福ではあったらしい。その後ミシュランでの成功が彼をルノーへと導き、その後日産のCOOとなる。

それにしても、日産の西川さんのあだ名が「座布団」(もちろん上に座るのはゴーン・笑)だったことや、日本でのある意味ミーハーな人気(でも彼はいわゆるパーティやらイベントに顔を出すのは好きじゃなかったようだ)。外国人としてちやほやされる状況(いわゆる『カリスマ・マン』症候群)。GMに誘われたことなどあれこれ興味深い。実際GMの誘いにのっていれば年収もアップしたし、拘置所に贈られることもなかっただろう、とこの本は言う。

いずれにしても日本の経営者陣はサラリーが世界水準にまったく達していないというのはあっても、その地位にくっついてくるグレーで妙なメリット、いわゆる「役得」が山のようにある、ということをこの本はするどく指摘している。ゴーンが会社の予算で使ったプライベート・ジェットが向かう先では、ビジネス先ではない場所へ行く家族の姿が、娘のSNSなどで明らかにされている。まぁ、日本の場合、政治家とかも一緒なんだけど、なんか、サイテーって思うわ、ほんと。でもマジで社会的責任もある大企業における役員報酬の透明性というのは必要だよね。例えば就寝待遇、運転手付きの車、高級レストランやバーでの公私混同の交際費。ヨーロッパ諸国の税務局はこういった交際費を認めていない。

あとは、まぁ、最初の奥さんと上手くいかなくなり、奥さん変えたのも悪かったように思う。前に出てくることのない最初の奥さんと長く続けば、彼も勘違いすることはなかったのかも? 新しい奥さんは派手な人だ。いや、それも日本社会が前の奥さんと生活や人生の価値観を割いたのかもしれないし、なんとも言えない。

とはいえ、郷原本同様、この本でも日本の検察のゴーンの扱い方について批判的に書いている。例えば福島原発の安全対策をおこたった東京電力の幹部、エアバックの事故で死者をたくさん出したタカタ、粉飾決算を長年行ってきた東芝の幹部などに対しては異様に寛容だった検察が、ゴーンに対しては田中角栄、佐藤優、小沢一郎など日本の大物を狙いうちにしたときと同様のひどい扱い。

こっちの方が郷原さんの本よりポップで引っ張る内容なのは事実。もっとも日本人が読まなきゃいけない度は郷原さんの本の方が圧倒的に高いと思う。

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