土曜日がやってきました。なんか1週間があっという間に終わるのでびっくりです。
さてちょっと前から始まっているプランクトンさんのCDキャンペーン。100タイトル。どれを選んでいいのかまったく分からないという方、あと1枚どうやって選ぼうかと悩んでいる方、プランクトンさんの「おせっかい小姑」である野崎による推薦盤をご紹介していきます。
今日ご紹介するこの名盤も、また、まさに疲れた私たちの気持ちを「ここではないどこかに飛ばしてくれる」。すごい音楽です。というか、この音楽にはすごいストーリーが隠されて(別に隠してないけど)いるのです。約10年前。それに文字通り日本中が震えた!
スタッフ・ベンダ・ビリリ『屈強のコンゴ魂』
コンゴの首都キンシャサで、ポリオのため下半身が不自由の車椅子生活。加えて、ホームレスという過酷な状況下で、バンドを組み成功した奇跡のグループ、スタッフ・ベンダ・ビリリ。プランクトンさんの強烈なプロモーションの元、来日した時はNHKの7時のニュースには出るわ、新聞メディア大騒ぎだわ、とにかく話題になったのでした。公演は日比谷野音をはじめとして日本中のコンサートホールで行われ本当に盛り上がりました。
それにしても、このバンドを日本に持ってきてツアーする方は大変で、彼らが行く先々のバリアフリーの導線確認やら各地での交渉やら、プランクトンさんが本当に大忙しだったことを記憶している。確か渋谷のホテルに泊まっていたんだけど、食べ物もとかもたとえば生野菜とかアフリカの方は一切食べないのね。そりゃそうよね。生水とか飲んだら危ないものね。また彼らは、甘い食べ物という認識がないらしく、甘く煮てあるものとか論外で、もう記憶がさだかではないがK子さんが必死でホテルの近くのカフェと嫌がられながらも食事の交渉をしていたのを覚えている。なんでも塩味だけみたいなのがいいのよ、とK子さんが言っていた。
確かにいろんなものが食べられるというのは教育みたいなものがないと得られない喜びなのかもしれない。いろいろ過酷なアフリカの状況がそんなことからも想像された。っていうか、そもそも彼らホームレスなのにどうやってパスポート取ったんだろう。そんな話もいつかプランクトンさんに聞いてみたいと思いつつ、10年たっちゃった。いやいやまだ私や外部が知らないエピソードとかいっぱいありそうだよなぁ。
実はこの年の前年くらいから、彼らの名前はヨーロッパを席巻していた。彼らのサクセスストーリーを収録したドキュメンタリー映画はWOMEXやカンヌで話題となり、とはいえこういう音楽はプロモーションしないと、日本ではまったく意味をなさないので、そして、そういうのにきっちり向かい合えるのは日本においては本当にプランクトンさんだけしかいないので、とにかくみなさんが必死で頑張っていたのが思い出される。あぁいうプランクトンさんのご苦労は、本当に頭がさがる。好きなだけじゃやってられない。あの時。ホームレスでも身体に障害があっても世界を舞台にやれるんだ、ということを彼らとともに日本に伝えていく使命をスタッフや関わった誰もが感じていた。日比谷でやったライブは本当にすごかったよなー。ロジェだっけ、あの若い少年もめっちゃかっこよかった。あの子は今、どうしているんだろう。それからリーダーのリッキー(だったかな)隣にすわっていた、温厚そうな感じのおじさん。顔は覚えているのだけど、名前が思い出せない。
なにせ彼らの場合、それぞれの楽器も手作りで、空き缶に弦を一本はっただけのギターとか、一斗缶のドラムとかなんだから驚愕だ。踊りもすごい。えっ、車椅子の人たちなんでしょ、どうやって踊るの?って思われるかもしれないけど、いや、踊るのだ、見ればわかるけど。そしてそれが本当にすごいのだ。何せ音楽一本、パフォーマンス1本でここまでのし上がってきた彼らの人を楽しませようというパワーたるやすさまじい。
彼らはフランス語はわかるみたいだったが英語はいっさい通じず、私なんぞはただニコニコしている以外、何もできなかった。リーダーのリッキーは、プランクトンのK子社長に新しいキラキラの黒と銀色の格子柄の帽子を買ってもらって、終始ご機嫌な様子だった。彼の車椅子をプランクトンのN嬢にずっと押してサイン会にステージに、移動一つとってもとにかく大変そうだけど、楽しそうだった。関わるみんなにパワーを与え、みんなを笑顔にした素晴らしいバンドだった。
もう記憶がないが、私もなぜかこのツアーはちょっこり手伝っていて、彼らをホテルに出迎えに行くと彼らがいつもホテルのロビーでも自分の部屋でもなく、道路に面したところにある街路樹の下にいつもたまっていたのが印象に残っている。私は「そうか、ホームレスの人たちだから、狭い都会のホテルの部屋よりも、屋外の方がきっと居心地がいいんだ」なんて思ってたことを記憶している。
彼らはその後、SONGLINESの表紙になり、あちこちをツアーし、ヨーロッパの名門ホールをソールドアウトにしたりしていたが、やはりいろいろ問題があったらしく、またコンゴの人たちは寿命が短く… 確かリーダーの引退が理由だったっけ? とにかくあっという間にそのキャリアは終わりをつげた。というか来日時のリッキーの年齢は当時のコンゴでの男性の平均寿命をとうに大幅に上回っていたと記憶している。とにかくすべてが奇跡で、すべてが煌めきだった。あの時の熱狂のステージは本当に忘れられない。ありがとう、ベンダ・ビリリ!
松山晋也さんのライナーノーツより。
ここには、なんとも言えないリッチさと高揚感、そして希望がある。それは、どうしても伝えたい何か、歌いたい情熱、そしていくばくかの知恵と勇気を彼らが持っているからにほかならない。コンゴという極貧国の、更に路上暮らしの身体障害者たちという、二重三重のハンディはあっても、いや、ハンディがあるからこその奇妙なまでの強度。逆境こそは創造の母という一つの真理を見事に体現した作品だと思う。
これはできるだけ大音量で聴いていただきたい作品だ。演奏者、シンガー一人一人の息吹が直接鼓膜を震わすまでの大音量で。合言葉は、“ベンダ・ビリリ”。(松山晋也/ライナーより)
アフリカの音楽とか詳しくない私が聞いても、彼らの場合、無条件で楽しめる。だって音楽はジェイムス・ブラウンだから(笑)。とにかくとってもわかりやすい。このCDは、まだそんな彼らがヨーロッパツアーで大成功を収めるちょっと前の瞬間を捉えたもの。ちょっとサウンドが薄い感じがするが、それでも「これからやったるぜー」みたいなものすごい気迫が感じられ、聞いているこちらを、最高に元気にしてくれる。
ドキュメンタリー映画もすばらしかった。
これなんかジャズのビックバンドとやってんだけど、かっこいいでしょー!!
モジキエ、バナナー ヨーヨーヨー ヨーヨーヨー
めっちゃかっこいい!!!!!!
映画はDVDにもなってるよ。
というわけで、みなさん、プランクトンさんのCDフェア。迷ったらこの1枚がお勧めです。さて来週の土曜日は何を紹介しようかな〜〜 もう品切れになっているアイテムもあるので、みんな急げ!