清田隆之『さよなら、俺たち』を読みました。男友達に絶対に読ませたい!



いっやーーー 面白かった。津田さんのポリタスTVで著者が登場し、津田さんとの会話が、あまりにもおもしろかったのでついついポチリ。いやー 今年はノンフィクションの当たり年。いい本がたくさんあって、今年のベスト10選ぶのに苦労しそうだ。

*ちなみにこの回の放送は他の放送と同様、You Tubeで最初に無料公開され、24時間後にVimeoに移動。今はアーカイヴで有料でしか見ることができません。ぜひみなさん、ポリタスTVのサブスクを!

なんで男って「俺たち」とか言うんだろ。ひとりひとりだと良きパパ、良き旦那さま、良きボーイフレンド、良き単なる友達であるのに、あのヴェーセンですら男3人集まると人格変わる。

なんで男はつるむと中学生みたいになるんだろう。この本はそう言う男性という生き物の生態を著者自身のダサくてイタい過去をさらしてまで書いた(私が言っているんじゃありません、帯コメントにそう書いてるあるんです)最高の一冊です。女性の皆さん、ぜひ男友達に買ってプレゼントしましょう! 

BeingよりもDoingばかりに走りがちな子供時代。何をした、何を得た、予備校の模試で何点とった、何人の女とつきあった、そんなことしか話題のない男の子。著者の当時の日記を読めば、感じたことを言語化するの能力をまるで持たない。そして、Doingばっかりを日記に書いている。これが、男性が気づかない間に女性にハラスメントをしてしまう根源なのではないか、と著者は言う。

笑ったのは、ベストセラー『モテ女子のすべて』に掲載の「さしすせそ」=「男の子は褒められるのが好き。会話に困ったら思い出せるように、まほうのコトバ『さしすせそ』を覚えておいてね♡」と来たもんだ。その「さしすせそ」とは…

 さ = さすが!

 し = 知らなかった!

 す = すごい!

 せ = センスいい!

 そ = そうなんだ!

…馬鹿にされてるんじゃないの?、と私なんぞは思うのだが、これ当たってる。確かにこう反応すると男は喜ぶ。男たち、女はこんなふうに男を馬鹿にしているのだよ、と(笑)。男の子は褒められるのが好きで、おだてられると気持ちよくなり、女子に何かを自慢したり教えたりしたい生き物である。そういうことなのだ。

でも、これ本当にそうだ。私が常日頃もっともうっとおしく思っているものの一つ。実は料理男子。料理する男性はなぜか黙って料理をすることができない。どうやって作った、このレシピをどうやって見つけた、コツは何か… その得意げな説明、独善的な解説、上から目線のアドバイス。まさにレベッカ・ソルニットの言う『Men Explain Things to Me』(邦題:『説教したがる男たち』)だ。

そして私が個人的にもっと嫌いなのは男なのに必要以上に見か目に時間をかける人たち。とある友人は会うたびにヘアスタイルが変わる。女の私がほぼ20年変えてないのに対し(それも問題だとは思うが)…。

でもとある友人が教えてくれた。男の人がかっこつけるのは馬鹿にしてはいけないんだよ、と。なるほど、こんな風に男を立てない私は、これだからモテない。自分でもわかっているけど、そんな態度をあらためられない。残念ながら私は音楽プロデューサー。好きなミュージシャンに認めてもらえれば、モテるなんて全然必要ないもーんねー(笑)(←これだからますますもてない)

そしてこの本にある田嶋陽子さんの再評価も勉強になった。私も彼女のことをよくわかっていなかった。TVのワイドショーで、いつも男に怒っているおばちゃんとしか私たちは認識していなかった。でも誰だっけ、いつも宿敵だった保守のおじさんが亡くなった時、すごくいいコメント寄せてたよね、彼女。あれはすごく素敵だった。

そして、オリンピックに向けてのコンビニにおけるエロ本「コンビニ本」におけるダブルスタンダード=実態を現さないまま利益を得つつ責任からは巧妙に逃れていくという(男性特有の)やり方には、当初から既視感があると著者は指摘する。これぞマジョリティ男子の常套手段。エロ本をコンビニの店頭から撤去することで、何か「大事なこと」に目をつむり幕引きしていないか、この「大事なこと」が解決されずモヤモヤがの残るということをしっかりと指摘した著者には大きな拍手を送りたい。本当にそうだ、本当に本当にそうだ。これ日本社会すべてに言えることじゃないか?

あと、三浦まりさんの「公的発言におけるジェンダー差別をゆるさない会」「ワースト発言ランキング」これもチェック必須だとのこと。政治家のひどいジェンダーに関する発言のなんと多いことか。そして、残念ながら、これが現自民党政権の本音なのだ、と。

では男性はどうしたら良いのか。よく考えてみよう、と。例えば「セックスしたい」という欲望の中には、どんな欲望があるのか。そこには身体的な快楽以上に「一体感を感じたい」「受け入れてもらいたい」「許されたい」「寂しい気持ちをどうにかしたい」と等々があるわけだが、それを「お茶をする」みたいなことによって解消してはどうか、という著者の説にはうなった。うん、いいよ、いいよ!!

いつだったか、高嶋ちさ子さんが言ってた。You Tubeとか、ソーシャルメディアとかで馬鹿やって炎上しているのは男ばっかだと。でも「それを育てたのは母親なのよね」とも彼女は言っていた。

いやー とにかく素晴らしい一冊でした。痛快!! 清田さん、ありがとう。津田さん、紹介してくれてありがとうございました。これ、男友達にプレゼントします(笑)

PS というわけでさっそく昨晩久しぶりに会った男友達にこの本をプレゼントした。本を渡しつつ内容をしゃべる私の話を彼は苦い笑いを浮かべながら聞いていたのだが、一言「(男って)本当に馬鹿だよなぁ、のっかっちゃえば楽なのになぁ」と言っていた。さすがである!! そうなのだ。女にもっといろいろ任せてしまえば、男はもっと楽ができる。それを日本の社会はわかっていない。

一方でノルウェーだ、フィンランド だとあれこれ北欧の連中を比較で持ち出すが、私はあれらが完璧な「男女平等社会」とは思ってはいない。例えば北欧では「何も社会的なことをしないハウスワイフ」という立場は絶対に許されない。どんなに裕福な人でもボランティアでもいいから社会活動をさせられる。それもどうかと思うよ。家の中の仕事に100%かけるのだって、その人がよければ良いと思うし。それに加えてどうも男たちは難しく大変な仕事を女に任せて、適当にさぼっているように見える。そんなこと言うのは私だけか?(笑)

また結婚10年以上たつ友人は旦那が「褒められたい」と思っているということをこの「コロナ禍」で気づいたそうだ。彼女の旦那F本さんは、好きなことを黙々とやるオタク体質の人だと思っていたのだが、F本さんですらその類なのか!? うーん、そうは見えなかったのであるが、やはり…(笑)

いずれにしても男女問わず、みんなこの本を読みましょう。先日の沖縄本同様、日本の根源的な問題はここにあるように思えてくるわけです。