東洋大学の公開講座に伺いました。結論から言うと、めっちゃ刺激的で充実した講座でした。いや〜 安藤和宏先生のキャスティング、大成功だっと思います。ありがとうございました。参加できてよかった。自分的に忘れたくないことをここにメモっておきます。発言者の意見など、私が受け取ったままに書いたので、もしかしたら発言者様ご本人が意図されていないような解釈だったり誤解があればすみません。文責はすべて私にあります。
安藤先生のイントロに引き続き(あぁ、もう馬鹿な私。遅刻して半分以上聞けず)、まずはオフィストゥーワン(元AKS)の加藤邦明さんのお話。
まずはこれでアイドルビジネスに関する頭の中がぐっと整理されました。ものすごくわかりやすかったです。まずアイドルビジネスとはなんなのか。今のアイドルは3つの柱によってなりたっている「コンセプト」「大人数」「箱型」。これにのっとっていくことで「事業化しやすい」アイドルのファンになる人。欧米や韓国に多い完成型のアイドルと違って、未完成アイドルを応援していくのは日本のスタイル。推しメン(応援してるメンバー)の成長を楽しみたい。達成感を一緒にあじわいたい。なるほど! ファン同士のコミュニケーショも大切。人気のバロメーターをCDにくっつける最大の理由は、オリコンやメディアに載るときにデータでわかりやすいから。ファンがもとめる物は「肖像商品」「接触系イベント」そして「認知(本人に覚えてもらうこと)」。
アイドルの市場というのは例えばアニメが598万、漫画640万から比べるとたった280万。ただしひとりが費やす金額が年間2万程度の漫画・アニメ市場にくらべ、アイドルのファンはひとりがついやす金額がなんと年間10万。(すごい…)現在は供給過多な状態でファンの取り合いになっている。インディーズのアイドルはコンサート事業、そしてMD(マーチャンダイジング)事業の2本だて。ライブもノルマなし、パーセンテージのライブハウス公演が多い。MDもチェキなど原価1枚60円程度で全くリスクがなく、いきなり参入しやすい。一方のメジャーの方は音楽事業、握手会(セキュリティ、会場など結構経費がかかる)、MV製作などもすごい金額。コンサート事業もチケット収入だけではかなりきつい。広告出演はあったとしても一時的なことが多い。
次の登壇は原一博さん。豪快な関西のおじさんという感じで、すごくお話もおもしろかった。タイアップのメリット・デメリット。私自身は放送局が音楽出版やなんちゃら製作委員会みたいなものを持つことに対してはネガティブな意見でいるのだけど、現場の苦労があるのだなぁと妙にしみじみ。ドラマのタイアップ中心に語られたのですが、ほんと良い作品を作るということでチームがまとまっていかないとダメだよなぁとつくづく。そして出版の取り分については「ルールはない」「ぼんやりとした業界慣習があるのみ」なので、「もめがち」だということ。タイアップのメリットはたくさんの人に聞いてもらえる。ファン以外にもリーチできる。デメリットは出版など権利を渡さないといけない。
プロデューサーがドラマのイメージとあわせて決めたものは世界観が統一されて良いタイアップになることが多い。しかし現状なかなかWin Winにならない。(ちょっと日向敏文さんの「ひだまりの詩」のエピソードを思い出した。あれは主題歌は別にあって、単なる挿入歌だったのに、こちら方がヒットしてしまったという結末だよね。要は視聴者に音楽の気持ちが通じるかってことなんだとは思うけど)結局のところ映画もそうだけど、ドラマも監督であり、プロデューサーだよ。テレビの現場も本当に苦労がありそうだ。
タイアップうんぬんはあるにせよ、アイドルの世界はその点、自前のファンでもう体勢はオッケーなので、攻めた楽曲で勝負することができる。必要以上にタイアップに依存していない。実際、2000年以降、必要以上にタイアップをありがたがる必要はないと思う、というご意見。これめっちゃ響いたわ。だって私がレコード会社にいたころ、一番重要視されたのは「タイアップ」だったから。今はもうそういう時代じゃないんだわ…
ちなみに、これは懐かしいメアリー・ブラックが採用されたJR東海のCM。なつかしーーーっっ。ちなみにこれもメアリー楽曲のサブ出版を持っていた某音楽出版社の梅ちゃん(お元気かしら)が決めてくれたのだった。こうやって権利を「振る」ことでタイアップというのは出来上がっていく。
続いて丸谷マナブさん。ソニー・ミュージックパブリッシング所属の作詞・作曲・編曲家、音楽プロデューサー。私ったらほんと音楽業界の常識知らなかったんだけど、オリコン年間セールス作曲部門で1位を取ったり、紅白で3作品も歌唱されたりと、ものすごい売れっ子さん。ご本人「慣れてなくて」とおっしゃっていたけど、これがめちゃくちゃ誠実で、すごく良いことをたくさん話されていた。楽曲コンペの現状。その良いところ(参加することによって、結果たくさん書くことになる。作曲の筋トレみたいなものとも言える、と。なるほど)、悪いところ(足をつっこむと常にコンペのチャンスがくるので気にしだすと重圧の下にいることになる)、など。コンペではAKBクラスで300から500曲くらい秋元さんのもとに届く。おそらく1,000曲くらいは事務所に届いているはず。結果作品たちはゴミ屑のようにあつかわれる。これをメンタル的にどうとるか。いちいち気にしない。感情押さえる手法が大切。生きてるといろいろある… この辺のくだり、ご本人は謙遜されてたけど、めっちゃ響いた。(っていうか、これ、今のコロナ禍も同じような感じだ。数字に一喜一憂してはいけない。とにかく自分のやるべきこと=手洗いマスクを徹底させる)
アプローチについて。合格というその1つの席をどう掴むかということについて:「半分は運」だという謙虚な丸谷さん。最初の曲がAKBに採用された当時は、他のアイドルにもとにかく全方位的に書き始めていた時期。秋元さんは新しいものを使う傾向にある。新しいセンスを常に探している。そこにたまたまタイミングがあった。
そのあと、外国人の作家と共作できるチャンスも貰えた。例えばMステの特集みたいなのを見ていて、自分の曲がミスチルやら何やらと一緒に流れたりすると、これがその楽曲の完成系なんだなと思う。作っているときにはまったくわからない。作っているときはぼんやりしている。(これ、素晴らしいよね。作っているときはまだぼんやり。でもTVで流れて届けられて初めて完成型!)
楽曲発注の際、お題がくることがある。フレンチポップス風に、とか… そういうとき、こういう映像みて勉強したりするんだそうです(笑) 丸谷さんの中にはフレンチポップスというカードはなく、だから音楽性よりもレトロ感、音が悪い(いい意味で)感じ。そこを発注先からの発注と受け取った。そういう自分には不得意なものと、自分の得意なもののクロスオーバーする部分を出していく。
また発注をもらったときは、その歌手の音域や声の質、雰囲気なども、ものすごく勉強するのだそうです。そして作り込んだLogicの画面を見せてくれたけど…120トラック(だったかな)とにかくすごい!! でもいったん提出したら、深追いしない。それが重要なんだって。でもこれすごすぎるよー。
ここで紹介されたLittle Glee Monster。初めてしったけど、これ悪くないじゃーん。っていうか、めっちゃいいじゃん! こういう子たちにケルト音楽やらせたら、おもしろいかも。そういや、AKBだかなんだかでフィンランドのトラッド歌ってた子いたよね… このビデオもすごく面白い。
あと丸谷さんの言ってたことでいいなぁ、と思ったのは「手応えと採用率とはまるで違う」ということ。他の登壇者の方もこれについては「作家はみんなそう言う」と同意されていた。あと、音楽業界で生きていくのに必要なこと。「好きであれば、頑張れる」これもよかったね。会場を埋めていた若い人たちには響いたのではないか。
最後はパネリストのみなさんによるディスカッション。印象にのこったことをメモ。
最近の音楽業界は大型フェス、そしてアイドルビジネスに支えられていた。アイドルビジネスは最近の音楽ビジネスにおける正解の一つだった。これが現状のコロナ禍でどちらもNGに。
With コロナのアイドルビジネス 劇場は少しずつ再開。キャパ250人の場所に40名(きつい…)。CD買ってくれたお客とは4m離れて対面。スマホのアプリで10秒接触など…
実際握手会がないとCDが出せず、リリースは圧倒的に減っている。配信ではアイドルは非常に弱い。根本的な解決策がない。
配信ライブについて。ライブ配信とか言うけれど、やっていることは放送(WOWOWや、NHKがやってきたこと)と一緒。結局コンサートの代わりにはなれない。チケット代は半分でも高く感じる、コンサート事業をささえてきたMDが売れない。また各家庭の状況も問題。よくてTV。iPhoneから聴いても、まったく迫力がつたわらない。
あとここで安藤先生がめっちゃ重要なことを言った。やる方も、どう魅力的にするべきかが大切。たとえば某ライブ配信ではテレビにつないで大画面で良い音で楽しもうとしたらセキュリティの関係でそれができなかった。ノートパソコンでみて、魅力が半減だった。そもそも配信ライブを今この苦しい状況下での「代打サービス」としてしか考えてないのが問題。この場の代わりとしか考えていない。やる方も相当気をつけないとダメだし、続いていかない。
またアーティストの立場から言えば、生ならミスっても許されるところをアーカイヴされると本当に辛い。(これ、めっちゃ気持ちわかるわー)通常のライブDVDとかは、相当なおしてしる。生ライブであれば、一回切りでミスも許される。でも配信では家庭の電波状況やリスクがあることから、現状ある程度のアーカイヴは必須なので、配信はアーティストにとっては非常に痛い。Withコロナと思いたいけど、配信向けの何かもっと違うものを考えないとダメだと思う。ただしアイドルビジネスにおいては、好きな子だけが映るカメラを買うとか、今後のポテンシャルはあるかもしれない。
あと男性アイドルは固定メンバーによるヒットが多い、女性アイドルは流動的だということについて会場から質問が出たのは興味深かった。これ深いわ。加藤先生が「男女の人生の歩き方の違いかもしれません」と上手に答えてらしたけど。
あと韓国のアイドルの人たちは英語がすごくうまい。日本人は歌も踊りも未完成で、英語が下手。(まぁでも日本市場だけでも十分に大きいということが邪魔しているのかも)
あと会場からの質問で「名前をどっちが持つか問題」について。安藤先生より回答。アーティストの潜在的能力があり、それを開花されせるのが事務所なのだから、何か良い解決方法をさぐるのが大事。誰が得をするのか、Win Winにするにはどうしたら良いのか。文化なんだから、という言葉が印象的でした。
それにしても充実した内容で、長時間の割に一瞬も気が抜けなかった。もっとメモりたいことがたくさんあったよ。講師の先生がた。ありがとうございました! 来年は違うテーマなんだろうけど、絶対に来年も行こうっと。