2020年11月21日土曜日

小松由佳『人間の土地へ』を読みました。パワフルな一冊。



角幡さんの帯コメント、ピーター・バラカンさんもツイッターでプッシュとなれば読まないわけにはいかないということで、何も考えずポチったが、いやー なるほどパワフルな本でした。圧巻。ノン・フィクションってやっぱりいいよなぁ。

著者はK2を踏破した小松由佳さんという方。女性で世界で8人目。日本人女性としては最初の登頂だそうだ。この危険な登山から無事人間の土地へ戻り、混乱の中東シリア、その後は日本で試行錯誤する自分と家族のことを書いたもの。それにしても危険、危険、危険という連続で、ぐいぐいぐいぐい読ませる。

とにかく何も考えずポチり、本の舞台が中東と知り、うっっ、世界情勢については知識のない、特に中東情勢とか全然わかってない自分が読んで大丈夫かといっしゅんひるんだのだが、読み始めてみたら、ぐいぐいぐいぐい読み進むことができて、かつイスラム文化の知らないことがたくさん出てきて、なんというか「すごいなぁ」と思いながらも読書タイムを満期していた…  のだが。

が、が、本当に残念なのことに、これは私の勝手な反応なのだが、恋愛話が出たあたりで自分の読むテンションが「なーーんだ」と、がっくーんと下がってしまったのだ。このまま中東の硬派な何か、自分の生き方の参考になるような強い何かにつながっていくのかなと期待していただけに…  あー

厳しいことを言うが、いや、ほんと女の読者は女の著者に非常に厳しい。リアルな知り合いである女性のエッセイストやノンフィクション・ライターが口を揃えて言うことの一つに、自分のことを書くときには恋愛沙汰を書くと編集者(ひいては読者)の受けが良いという話だった。それをちょっと思い出してしまったのだった。が、そういう要素は読者の立場の私にとってはマイナスでしかない。単なる好みだけどね…

と、まぁ、このようにガクーンと途中でテンションは一瞬さがったものの、それでもこの本は最後まで私を捉えて離さなかったね。とにかく最後まで一気に読んでしまった。それはもう果てしなくパワフルな本だったと言える。うん、「パワフル」という言葉が一番しっくりくる。

「野崎さん、言っていることがわからないよ。女性ライターには、恋愛沙汰は書くなって言ってるわけ?」と聞かれると、いや、そういうわけではない。ただ私の理想とは違っていると言うことだけで、この本が素晴らしい本であることにはまったく間違いはない。それにこの話は彼女がシリア人男性であるラドワンさんと結婚し、彼が日本に移住し、彼らに子供がうまれたことも書いているわけだから、そういうことも書かないとお話として流れが成り立たない。場合によっては二冊に分けてほしかったかも??とは思うが、そんなことは外野の単なるわがままである。この本には彼女の生き様がしっかり刻まれている。なんというか、こっちの勝手な思い込みかもしれないが、きっと嘘は書けないタイプのまっすぐな方なんだろうな、と想像する。小松さん、著者近影で見ると柔らかいソフトな感じのするルックスなので、なにかとても意外である。今はそんなわけで子育てでお忙しいと思うが、また取材してほしいし、もっと中東のいろんなことを書いて私たちに教えてほしいと思った。とにかく素晴らしいライターさんだよ。

内容にちょっとだけ… ラドワンさんが日本のお寺でイスラム文化を紹介するエピソードでのお坊さんたちにのカレー話はちょっと呆れたな。これは「郷にいっては…」とレベルの話ではないだろう。豚肉、豚肉エキスがNGだと前もって伝えてあるのだから、これは私はお寺側の受入のレベルが低いと思うし、著者もラドワンさんも実際もっと正面から怒っていいのではないか…とも思った。どうなんだろう。

まぁ、それにしても彼女の生き様が書かれた、とにかくすごい本。おすすめです。

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