森下洋子『バレリーナの情熱』を読みました

 


先日の松山バレエ団の公演以来、興味を持ち、思い切って購入してみた。森下洋子さんの自伝。おそらく本人が語ったことをライターの方が書籍にした本。2012年に出たという本だが、同じタイトルの本が1994年に角川文庫から出ており、こっち買った方が安かったかな…と思う。ま、いいや。

体が弱いことを克服するために3歳から習い始めたバレエ。なんと森下さん、広島生まれなんだね。彼女のちょっと「祈り」みたいな生き方は、そんなところから生まれたのかもしれない。でも正直、この本や文章自体にはあまり心が動かなかった。高校生向けの「偉人シリーズ」みたいな本なのかも。どうもパンチに欠ける。赤裸々な胸のうちみたいなこともなく、あくまで想像できる範囲での彼女の姿が書かれている、と言っていいだろう。いや、それでも相当すごい人生だよなぁとは思うのだが。

でも彼女クラスならやっぱりすごい経験をしているに違いないので、ぜひ後進のためにも力をこめた赤裸々自伝などを書いてもらえたらなぁ、と思ったりする。ただおそらく今でも彼女の生き方は一分一秒でもバレエ以外のことに使いたくない、ということもあるのだろうとも想像する。今は残された時間を大切に、とにかく踊る、ということなのだろうか。

本の中で興味深かったのは、やはり世界のダンサーたちとの共演。やはりヌレエフとの踊りの話や、ベジャールとの仕事や、そのヌレエフが語るマーゴ・フォンティーンの伝説を知るたびにすごいなぁ、とあらためて思う。しかしこれだけ海外でも客演していて、海外からも誘いがあったのに「日本のバレエ」ということにこだわった彼女はすごいね。

本はさておき、彼女のドキュメンタリー(これですら20年前に作られたもの)をYou Tubeで見たが、それはなんかこの本よりもっとすごかった。彼女が撮影者に「(わたしを見ていて)つらいですか?」と聞くシーンがある。要は「自分は痛いか?」と聞いているわけだ。痛い…のかもしれない。70歳オーヴァーで、身体に無理をさせて、いわばボロボロになってまで踊る彼女はすごい。いや、踊りは今でもすごく美しいのだが。でもこんな高齢、どのバレリーナも突入したことのない未知の領域に彼女はたっている。でも、前にも書いたが、それを見たいというお客と踊りたいという彼女がいれば、それだけの話なのだ。それ以上でも以下でもない。そういえば、この本の中に、恋愛ざたとかで引退やステージをキャンセルしたりする同僚について「わたしはそこまでできない」「でも海外にはチケットが売れればいいというそういう考え方も強いようだ」みたいな記述があり、なるほどなぁ、とも思う。確かに外野の言うことに耳を貸す時間もない。とにかく彼女の人生、すべてがバレエなのだ。バレエは自分のちっぽけな存在(いや、全然そんなことはないのだが)より、すごいもんだと彼女は確実に信じている。だから疑いなく、いや疑いながらかもしれないが、踊り続けられる。

森下さんのベジャール『ライト』(パートナーはジョルジュ・ドン)


森下さんとヌレエフ『眠れる森の美女』


ヌレエフとフォンティーン


ヌレエフはこんな映画もあり

 

 これも見てないやー チェックしないと。
 


さてそんな毎日を過ごしておりますTHE MUSIC PLANTですが、本ばっかり読んでいるわけではありません。ちゃんと仕事もしていますよ。

TOKYO SCREENINGというイベントを2月25日(木)に企画しております。こんな状況下ですけれど、よかったら、是非みんなで集まって楽しみましょう!  詳細はこちら。 同じ会場でみんなで好きな音楽を聴く、あの感じが本当に恋しくって。感染症対策を徹底してお待ちしております。予約が入り始めています。確実に参加したいという方は事前にお申し込みください(当日具合悪かったらキャンセルもできます。そういうイベントにしました)